杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

文字の大きさ
上 下
20 / 132
第1章 安住の地を求めて

第20話 より深くへと

しおりを挟む
 「僕たちは森の奥へと行こうと思うがお前はどうする?」

 「シャー…シャシャ!」

 少し考えたようだが一緒に来るようだ。

 

 今日はようやく更に森の奥へと進む事にする。本来はこの場所にここまで長居する予定は無かった。ただ、森に入って大蜘蛛と出会って、子供が産まれるまでは付き添おうと思ったらここまで長居してしまった。

 季節は夏へと移り変わり今は外で活動していると汗が噴き出す。人間社会で暮らしていた場所は夏は蒸し暑かったがこの森はサッパリとした暑さだ。きっと自然の中だからかな。

 今まで探索した最も遠い場所へと来た。ここから先は今まで訪れたことのない未知の領域となる。ここからは気を抜いたら待つのは死かもしれない。しかしそう感じると共に新しい物への期待も感じている。

 「今日はここで野宿にしようか。」

 「キュイ!」

 「シャ」

 今までは洞窟の中という比較的安全な場所で眠っていたから野ざらしの野営は気をつけないとな。


 翌日目を覚ます。そこまで深くは眠っていないが疲れが残っているほどでもなくて安心する。

 「キュキュイ」

 「おはようテン樹の上で周囲を警戒してくれてたのか?」

 「キュイ!」

 「ありがとうね。」

 
 森の奥へと進み始めてかなり経ってきた。1週間ほど経っただろうか。今日も特に目的はなく、ただ奥へと進んでいた。今日も森の奥へと進んでいたが森の様相が変化したのを肌で感じた。

 魔力が濃くなった…周囲を注視してみると魔力が目に見えて周りに漂っているのが分かる。どんな場所でも魔力は周囲にあるのだがこんなに目にハッキリと見えるのは初めてだ。

 「キュ?キュキュキュ!」

 テンがおもむろに火の玉を周囲に浮かべ始めた。どうした?と思ったが普段扱う火の玉より数が1つ多いのに気づく。

 そこで僕も身体強化を発動して普段よりスムーズに、より強化出来ているのを感じる。なるほど、ここまで魔力が濃いと魔法を扱いやすくなるのか。なんだか今までの感覚と違うから、自分の力で魔法を発動させているのに自分の力でないような不思議な感覚だ。早くこの感覚に慣れた方がいいな。


 魔力が濃い領域へと入ってから周囲にいる生物は魔物しか見ていない。ここでは魔力を扱えない動物は住めないのか、それとも魔物が好んで住んでいるのだろうか。

 今日はあの岩場で休もうか、そう思って近づくと急に岩場が動き出した。

 なっ、こいつ魔物か!

 動くまで魔力すら感じなかったとはなんて擬態能力だ。

 「キュキュ!」


 テンがすぐに飛び出し戦いだす。相手の全容はでっかい岩に、小さい岩が4つ足の様についている魔物だった。

 相手の魔力の流れを見るに、身体強化のような魔法を扱っているのだろう。ただ身体強化にしては動く速さは鈍足なため、きっと自身を硬化に特化させた魔法なのだろう。

 テンの攻撃方法は火の玉で相手を燃やすものだ。あの岩が相手なのはテンにとって相性が最悪といえる。

 相手も鈍足なためテンに攻撃が届く事はなくお互い拮抗した状態だ。

 「テン攻撃はもういい、この場を離れるぞ!」

 相手が鈍足なのを利用してこの場を離れる。やがて川場が見えてくる。周りには大きな岩山がある。洞窟にはなっていないが、魔法で穴を掘っていけばいい拠点になりそうだ。

 「ここら辺を拠点にしようと思うがいいかな?」

 「キュー…」

 「シャ!」

 テンは岩の魔物との戦闘以降元気を無くしてしまっている。いつもは元気な尻尾も今はしゅんとしてしまって見ていて痛々しい。
「テン、自分の攻撃が通じなかったからといって落ち込む必要はない。」

 「キュ?」

 「ああ、テンはいつも僕の力となってくれているよ。」

 「キュキュ!」

 よかった、少し元気を出してもらえたようだ。それにしても自分の攻撃が通用しないから落ち込むなんて意外と戦闘狂なのかな?出来るだけ危ない事はしてほしくないんだけどなあ。

 今日は夜になる前に僕たちが入れるスペースの穴を掘り終えないとな。そしたらテンをいっぱい可愛がってあげよう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...