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作戦会議前の顔合わせといきましょう

天使による毒舌女の憂鬱

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ここで一旦、霜咲まどかという女について説明をしようと思う。
苗字は霜咲と書いてしもざき、名前は平仮名でまどか。
日本人の父親とフランス人の母親を持ついたって普通ではない美少女である。
一言では言い表しにくい、容姿端麗頭脳明晰に加え並外れた行動力を持ついわゆる完璧人間に複雑な性格を付け足したような、とにかく言葉で説明できない女だ。
父親は海外に進出しているIT会社の社長で、いわゆるお嬢様だ。
そのせいで家を変えることはしょっちゅうで、幼稚園から小学2年まで一緒にいたが、3年の夏休み前、海外に越して行った。後に聞いた話だと、これは結構長い方だったらしい。
離れてからも、電話、最近では無料通信アプリを利用して連絡を取り合っていた。
…が、転校の件については全く聞いていない。
例えビジュアルがフランス人形のような愛らしく美しいものであったとしても、許されることではない。しかるべき報いを!
…と、思っていたのだが。

「まどかってあれだよね、実は天然だったり?」
転校2日目。瞬時に溶け込みやがった…ではなくクラスに溶け込んだまどかが昼休み、いつものようにきやがった…ではなく遊びに来た亜美と私を交え、どうでもいい会話をしていた時である。
会話の流れで何気なく亜美がそう言った瞬間、周囲でじゃれあっていた男子2人組がものすごい勢いでこちらを振り向いた。
こいつは…まどかの隣の今井とよくつるんでる山本か。
「霜咲は成績優秀だから、冗談辞めろ」
「いくら梶さんでも違法だわ」
ちなみに梶というのは亜美の苗字である。
てかなんだよその法律。
いい機会だと丁度積もり積もった文句を心に抱えていた私が加勢し、便乗を試みた。
ここで不満をぶちまけると同時に恥ずかしいエピソードを暴露することで、彼女に辱めを受けさせる魂胆である。
「それは化けの皮だから。こいつ大馬鹿者だから。騙されんな」
「は?お前嘘吹いてんじゃねえよ殺すぞ」
「お前死刑な」
死刑て。
殺害予告と死刑宣告を同時刻にされる経験なんてそうそうない。
てかなんだよその亜美との扱いの差は。
と、いうことで結論として男がいる場でまどかを裁くことはできない。
少しでも彼女をけなそうとあればまどか以上の失敗エピソードを校内放送で流しそうな恐ろしさがあるのだ、こいつらは。
この恨み、どう晴らすべきか。
まどかが来てから私の悩みは増えるばかりである。

ちなみにその日は通常授業だった。
特に何かあったかと言われれば、数週間後に迫る生徒会選挙の選挙管理委員を決めたことくらいだ。滞りもなく議員の女子に決まった。
特に書くこともなかったので、そんな死ぬほどどうでもいいことを報告しておく。
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