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第一章
prologue
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「おい、いつになったらその邪魔くさいフード取んだよ。ここ部屋ん中だぞ?」
ある部屋の一室で、長身の青年が顔を顰めながらフードを被った人物に声をかける。
声をかけた青年は黒髪で切れ長の碧眼をもち、鼻筋の通った整った顔をしている。
一方で、フードを被った人物はほとんど顔が見えず、かろうじて口元だけが晒されている。一見では男か女かもわからないだろう。
「別にいいだろ。誰にも迷惑はかけてないんだし。」
フードを被った人物が青年に言葉を返す。
声を出したことでやっとその人物が男であることがわかる。背の高さからして少年であろうその人物のフードの天辺は青年の肩ほどの高さである。そのため、上から見下げる形となるその青年の背は尚更フードの少年の顔を見えづらくしている。
「確かに迷惑はかけてないかもしれんが…部屋の中までそれを被ってられるとお前の周りだけ暗く見えんだよ」
少年の着ている服は黒いハイネックの長袖シャツに足首まである黒のズボン、更にフード付きの黒のローブと全身黒で埋め尽くされている。
すると、青年が徐に少年に近づき、フードに手を伸ばした。しかし、次に起きることを察知した少年が両手でフードを押さえ、一歩後ろへ下がる。
そこからはフードを巡って追いかけっこが始まった。
少年の方が速く、体力もあるようで青年に捕まることはなかったが…
少年は知っていた。青年の諦めの悪さを。
「わかったから!後で!後で取るから!今はストーーップ!!!」
そうして、しばらく2人の攻防が続いたのち、少年が折れた。
ここで逃げ切っても青年は諦めずにまた追いかけてくるだろう、と思い至ったからだ。それを聞いて青年はピタリとその場に止まり、その隙に少年は青年からできるだけ距離を取る。
「はぁはぁ、よぉし、言質とった、はぁはぁ、からな…!」
青年が肩で息をしながら勝ち誇ったように言った。対照的に、少年は息こそ切らしていないが、精神的に疲れたとでもいうようにぐったりとしていた。
しばらくして、膝に手を置いて俯き、足元を眺めながら息を整えていた青年がふと部屋の壁にかけられていた時計の針を見て焦りだす。
「やっべ、俺今から仕事あるんだった!ちょっと行ってくる!」
青年がバタバタと慌ただしく部屋を出ていく。
青年が去ったあと、少年が後ろの壁にもたれかかりながらズルズルとしゃがみ込む。
「あぁ、もう…めんどくさいから取りたくなかったのに…はぁ…」
部屋に1人残された少年の嘆く声は誰にも届くことはなかった。
ある部屋の一室で、長身の青年が顔を顰めながらフードを被った人物に声をかける。
声をかけた青年は黒髪で切れ長の碧眼をもち、鼻筋の通った整った顔をしている。
一方で、フードを被った人物はほとんど顔が見えず、かろうじて口元だけが晒されている。一見では男か女かもわからないだろう。
「別にいいだろ。誰にも迷惑はかけてないんだし。」
フードを被った人物が青年に言葉を返す。
声を出したことでやっとその人物が男であることがわかる。背の高さからして少年であろうその人物のフードの天辺は青年の肩ほどの高さである。そのため、上から見下げる形となるその青年の背は尚更フードの少年の顔を見えづらくしている。
「確かに迷惑はかけてないかもしれんが…部屋の中までそれを被ってられるとお前の周りだけ暗く見えんだよ」
少年の着ている服は黒いハイネックの長袖シャツに足首まである黒のズボン、更にフード付きの黒のローブと全身黒で埋め尽くされている。
すると、青年が徐に少年に近づき、フードに手を伸ばした。しかし、次に起きることを察知した少年が両手でフードを押さえ、一歩後ろへ下がる。
そこからはフードを巡って追いかけっこが始まった。
少年の方が速く、体力もあるようで青年に捕まることはなかったが…
少年は知っていた。青年の諦めの悪さを。
「わかったから!後で!後で取るから!今はストーーップ!!!」
そうして、しばらく2人の攻防が続いたのち、少年が折れた。
ここで逃げ切っても青年は諦めずにまた追いかけてくるだろう、と思い至ったからだ。それを聞いて青年はピタリとその場に止まり、その隙に少年は青年からできるだけ距離を取る。
「はぁはぁ、よぉし、言質とった、はぁはぁ、からな…!」
青年が肩で息をしながら勝ち誇ったように言った。対照的に、少年は息こそ切らしていないが、精神的に疲れたとでもいうようにぐったりとしていた。
しばらくして、膝に手を置いて俯き、足元を眺めながら息を整えていた青年がふと部屋の壁にかけられていた時計の針を見て焦りだす。
「やっべ、俺今から仕事あるんだった!ちょっと行ってくる!」
青年がバタバタと慌ただしく部屋を出ていく。
青年が去ったあと、少年が後ろの壁にもたれかかりながらズルズルとしゃがみ込む。
「あぁ、もう…めんどくさいから取りたくなかったのに…はぁ…」
部屋に1人残された少年の嘆く声は誰にも届くことはなかった。
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