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第六話 選択肢3エンディング②
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こちらの話は、第三話で3番の選択肢を選んだ際のエンディングになります。
選択肢3エンディング①からの続きなので、先にそちらをお読みになってから②をご覧ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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佐和から一緒に帰ろうと誘われて、俺達は帰路についた。
最初に泣いたのは佐和だったけど、その後もべそべそしてたのはオレの方で、佐和よりも目が腫れるという意味わからん状態になってしまった。
佐和にひとしきり笑われてから顔を洗いに行ったおかげで少しは落ち着いたけど、まだ目が腫れぼったい。
今の季節が冬ならよかったのに。冬場ならこの時間帯でも周りが暗くなり始めるから。
街灯すらつかない明るさの中、二人並んで歩道を歩く。いつもと変わらない帰り道。一度は叶わないかもと思った望みが叶えられて、オレはだいぶ元気を取り戻していた。
ただ、数十分前に号泣した恥ずかしさがまだ残ってて、話しかけたい気持ちはあるけど話しかけられない。
それは佐和も同じなのか、うつむきがちに歩きながら黙り込んでいた。
傍から見たら、オレ達はちょっと変にみえるかもしれない。並んで歩いてるのに何も話さないで、お互いコンクリートと見つめあって。
「……そんなに俺と離れたくなかったんだ」
ぽつりと独り言のように佐和が呟く。視線は相変わらず数メートル先のコンクリートを見てるけど、オレの返事を待ってるみたいだ。
「泣いたのは自分でもびっくりだけどな。オレにとって、それだけ佐和の存在って大事なんだと思う」
「そっか」
短い返事を残して佐和は口を閉ざす。オレ達の横を車が通りすぎて、弱風が肌を撫でる。
会話はそこで途切れたかと思ったら、「あのさ」と佐和は続けた。
「……ほんとの気持ちを伝えたら、もう一緒にいられないかもって思ってたから、それを知った上で一緒にいたいって言ってくれて、嬉しかった。ありがと」
オレに顔を向けて、恥ずかしそうにもじもじしながら自分の気持ちを伝えてくれる。
そんな姿をみてたら、もう泣かせたくないし、幸せにしてあげたいって気持ちが込み上げてくる。
他の男友達に対してそんな感情を持つかと聞かれたら、持たないだろう。自分のせいで泣かせた罪悪感とか申し訳なさみたいなのはあるだろうけど、「幸せにしてあげたい」っていうのはちょっと違う気がする。
告白されたり付き合うことを考えても同じだ。やっぱり、佐和だからこそ受け入れられる。
「オレも佐和と同じで、一緒にいられなくなるのが嫌だったからさ、自分の気持ちに正直になれなくて……」
自分で言いかけておかしいことに気づく。今の言い方はまるで、自分の気持ちがわかってるのに認めないようにしてたみたいじゃないか。
やっぱり、オレは恋愛感情があるのか?
動揺してる思考達をいったん落ち着かせて、順を追って考えてみる。
オレは佐和が大事で大好きだ。多分、他の友達と比較しても抜きん出るくらい。でも、それは友達としてであって、恋愛対象じゃ……いや、正直に言えばそう思い込もうとしてた部分もあるかもしれない。
恋愛対象として好きなんじゃないかってよぎるたびに否定して、自分のほんとうの気持ちは意図的に考えないようにしてた。答え次第では今までの関係値が脆く壊れてしまいそうな危ういことだからこそ、答えを出すのが怖くて目を背けてたっていうのもあるし、佐和は同性からの告白を気持ち悪いって言ってたから、答えを出したとしても絶対に受け入れてもらえないと思ってたから。
でも、実際はオレのことが好きって言ってくれてる訳で……。
あれ、それじゃあもうウソをつかなくていいのか。
その瞬間、オレの中でぐちゃぐちゃに絡まって鉛のように重くなっていた感情が綺麗にほどけて、驚くほど軽くなる。
そっか、オレはずっと前から佐和が好きだったんだ。
「なに? 気になるんだけど」
やや緊張した面持ちで佐和が続きを急かす。もしかしたら、なんとなく察してるのかもしれない。
「オレ、ずっと前から佐和のこと好きだったって、今気づいた」
「……」
オレがそう言った途端、隣にいたはずの佐和がいなくなる。あれっと思って振り返ると、顔を真っ赤にした佐和がうつむきがちに固まっていた。
可愛い。自分の気持ちを素直に受け入れたおかげか、これまでの数倍そう感じる。
思いっきり抱きしめて、可愛いって言いたい衝動に駆られるけど、なんとか理性で押さえつけた。
オレたちの間だけ時が止まったような世界がしばらく続く。時が動きだしたきっかけは、佐和の小さな「ばっかじゃないの」と言う言葉。
「だよな、オレもそう思う。佐和に嫌われたくなくて、必死に自分の気持ちにウソをつくあまり、佐和を傷つけて……ほんとにごめんな」
「……」
佐和は片手で顔を覆いながら黙り込む。無視してるって言うよりは、必死に何かを考えてるような雰囲気。
「ごめん。急にあんなこと言って驚いたか?」
「……そりゃ、驚くに決まってるじゃん。こっちは8年間の片想いを終わらせるつもりだったのに、それでも一緒にいたいって言ってくれて、あまつさえ昔から好きだったって言われて。嬉しくない訳ないじゃん」
相当パニックになってるみたいで、今まで聞いたこともないくらい佐和の感情がはっきり伝わってくる。
めちゃくちゃ嬉しくて満面の笑みをうかべるオレを見て、佐和は自分が口にしたことに気づいたみたいだ。
「ち、ちがう! 今のナシだから! 聞かなかったことにしてっ!」
喜びを溢れさせるオレとは対照的に、佐和は早口で否定したかと思ったら、いきなり早歩きで先に行ってしまう。
「あ、おいてくなよ! 」
慌ててその後を追いかけるけど、それに追い付かれまいと佐和も逃げる。まるで追いかけっこみたいな構図。
佐和に恋をしたあの頃もこんなふうに遊んで、手を繋いだり抱きしめあったりしてたっけ。
今では、照れが生まれて中々そんなことできないかもしれないけど、いつかあの頃みたいに大好きだってつたえあえるといいな。
こちらの話は、第三話で3番の選択肢を選んだ際のエンディングになります。
選択肢3エンディング①からの続きなので、先にそちらをお読みになってから②をご覧ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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佐和から一緒に帰ろうと誘われて、俺達は帰路についた。
最初に泣いたのは佐和だったけど、その後もべそべそしてたのはオレの方で、佐和よりも目が腫れるという意味わからん状態になってしまった。
佐和にひとしきり笑われてから顔を洗いに行ったおかげで少しは落ち着いたけど、まだ目が腫れぼったい。
今の季節が冬ならよかったのに。冬場ならこの時間帯でも周りが暗くなり始めるから。
街灯すらつかない明るさの中、二人並んで歩道を歩く。いつもと変わらない帰り道。一度は叶わないかもと思った望みが叶えられて、オレはだいぶ元気を取り戻していた。
ただ、数十分前に号泣した恥ずかしさがまだ残ってて、話しかけたい気持ちはあるけど話しかけられない。
それは佐和も同じなのか、うつむきがちに歩きながら黙り込んでいた。
傍から見たら、オレ達はちょっと変にみえるかもしれない。並んで歩いてるのに何も話さないで、お互いコンクリートと見つめあって。
「……そんなに俺と離れたくなかったんだ」
ぽつりと独り言のように佐和が呟く。視線は相変わらず数メートル先のコンクリートを見てるけど、オレの返事を待ってるみたいだ。
「泣いたのは自分でもびっくりだけどな。オレにとって、それだけ佐和の存在って大事なんだと思う」
「そっか」
短い返事を残して佐和は口を閉ざす。オレ達の横を車が通りすぎて、弱風が肌を撫でる。
会話はそこで途切れたかと思ったら、「あのさ」と佐和は続けた。
「……ほんとの気持ちを伝えたら、もう一緒にいられないかもって思ってたから、それを知った上で一緒にいたいって言ってくれて、嬉しかった。ありがと」
オレに顔を向けて、恥ずかしそうにもじもじしながら自分の気持ちを伝えてくれる。
そんな姿をみてたら、もう泣かせたくないし、幸せにしてあげたいって気持ちが込み上げてくる。
他の男友達に対してそんな感情を持つかと聞かれたら、持たないだろう。自分のせいで泣かせた罪悪感とか申し訳なさみたいなのはあるだろうけど、「幸せにしてあげたい」っていうのはちょっと違う気がする。
告白されたり付き合うことを考えても同じだ。やっぱり、佐和だからこそ受け入れられる。
「オレも佐和と同じで、一緒にいられなくなるのが嫌だったからさ、自分の気持ちに正直になれなくて……」
自分で言いかけておかしいことに気づく。今の言い方はまるで、自分の気持ちがわかってるのに認めないようにしてたみたいじゃないか。
やっぱり、オレは恋愛感情があるのか?
動揺してる思考達をいったん落ち着かせて、順を追って考えてみる。
オレは佐和が大事で大好きだ。多分、他の友達と比較しても抜きん出るくらい。でも、それは友達としてであって、恋愛対象じゃ……いや、正直に言えばそう思い込もうとしてた部分もあるかもしれない。
恋愛対象として好きなんじゃないかってよぎるたびに否定して、自分のほんとうの気持ちは意図的に考えないようにしてた。答え次第では今までの関係値が脆く壊れてしまいそうな危ういことだからこそ、答えを出すのが怖くて目を背けてたっていうのもあるし、佐和は同性からの告白を気持ち悪いって言ってたから、答えを出したとしても絶対に受け入れてもらえないと思ってたから。
でも、実際はオレのことが好きって言ってくれてる訳で……。
あれ、それじゃあもうウソをつかなくていいのか。
その瞬間、オレの中でぐちゃぐちゃに絡まって鉛のように重くなっていた感情が綺麗にほどけて、驚くほど軽くなる。
そっか、オレはずっと前から佐和が好きだったんだ。
「なに? 気になるんだけど」
やや緊張した面持ちで佐和が続きを急かす。もしかしたら、なんとなく察してるのかもしれない。
「オレ、ずっと前から佐和のこと好きだったって、今気づいた」
「……」
オレがそう言った途端、隣にいたはずの佐和がいなくなる。あれっと思って振り返ると、顔を真っ赤にした佐和がうつむきがちに固まっていた。
可愛い。自分の気持ちを素直に受け入れたおかげか、これまでの数倍そう感じる。
思いっきり抱きしめて、可愛いって言いたい衝動に駆られるけど、なんとか理性で押さえつけた。
オレたちの間だけ時が止まったような世界がしばらく続く。時が動きだしたきっかけは、佐和の小さな「ばっかじゃないの」と言う言葉。
「だよな、オレもそう思う。佐和に嫌われたくなくて、必死に自分の気持ちにウソをつくあまり、佐和を傷つけて……ほんとにごめんな」
「……」
佐和は片手で顔を覆いながら黙り込む。無視してるって言うよりは、必死に何かを考えてるような雰囲気。
「ごめん。急にあんなこと言って驚いたか?」
「……そりゃ、驚くに決まってるじゃん。こっちは8年間の片想いを終わらせるつもりだったのに、それでも一緒にいたいって言ってくれて、あまつさえ昔から好きだったって言われて。嬉しくない訳ないじゃん」
相当パニックになってるみたいで、今まで聞いたこともないくらい佐和の感情がはっきり伝わってくる。
めちゃくちゃ嬉しくて満面の笑みをうかべるオレを見て、佐和は自分が口にしたことに気づいたみたいだ。
「ち、ちがう! 今のナシだから! 聞かなかったことにしてっ!」
喜びを溢れさせるオレとは対照的に、佐和は早口で否定したかと思ったら、いきなり早歩きで先に行ってしまう。
「あ、おいてくなよ! 」
慌ててその後を追いかけるけど、それに追い付かれまいと佐和も逃げる。まるで追いかけっこみたいな構図。
佐和に恋をしたあの頃もこんなふうに遊んで、手を繋いだり抱きしめあったりしてたっけ。
今では、照れが生まれて中々そんなことできないかもしれないけど、いつかあの頃みたいに大好きだってつたえあえるといいな。
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