そして僕等は絡み合う

藤見暁良

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宮脇 詞の場合

夢か魔法か?

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 そこからは、自分でないような勢いだった。
 高橋さんが求めているのは、ウチの王道じゃない! 『宮脇詞のスタイル』だ――――。
 私は夢中に、なって高橋さんをコーディネートした。
「へぇ~! このブランドが高ちゃんに似合うようになるんだ!」
「オイラは、何でも着こなしますよぉ~!」
 傍で待機していたヘアースタイリストさんが感心していると、高橋さんは冗談ポク答える。
「ははは! じゃあ、髪合わせるねぇ~!」
 そして、コーディネートに合わせてスタジオが動き出した。


「あ~悦っちゃん! 次は彼女宜しく~!」
「畏まり~!」
 悦ちゃんと呼ばれたスタイリストさん高橋さんに軽快に返事をすると、私の腕を掴んだ。
「な、なんすかっ!」
 意味深に笑う、悦っちゃん女史――――。
「まあまあ、貴女もいい素材よ~! 磨けば光るわ!」
 磨く!? 何をだ!!
 そして――――私はユニセックスサイズを着せられ、メイクアップまでさせられた。


「もうちょっと肉があったらセクシーだけど、中性ポク見えていいかもね!」
 髪の毛もキレイにセットされて、何が起きるか本当に解らなかった。
 そんな私を横目に、高橋さんは――――
「眼鏡かけちゃおっかなぁ~!」
 ――――と、呑気だ。
「高橋さん! 何が起きるんですか!」
「おぉっ! 宮脇ちゃんいい感じぃ~!」
 その態度に、腹が立ちそうになる。
 おい! 高橋っ!!
「自分のところのブランドを自分の身体で表現出来るなんて、本望でしょ!」
 そんなこと言って、不敵に笑った。
 訳、解らない!
 そして数分後――――ようやく現実を把握した。要は――私自身が、モデルになるんだ。


「あ~ら素敵! 彼女ハンサムね!」
「ほんまや~! カッコええやん!」
「カメラテストして貰って!」
 根岸さんの側にいるスタッフが声を張る。その後ろで保科さんが、微笑んでいた。 
 スクリーンの前に立たされて、呆然としてしまう。
「じゃあ、高ちゃん後は宜しく~!」
「はいよ~!」
 高橋さんが、私の側に寄ってきて囁いた――――。
「俺に、委ねろ……」
「ゆだっ!」
 委ねろって~!? なにをだぁぁぁ――――!!

「撮影入りま~す!」
 スタッフが叫ぶと、目の前が眩しく光った。――――フラッシュだ。
「宮脇ちゃん、先ずは正面向いて……」
 あぁっ! 訳解らないけど、高橋さんの言う通りにするしかない気がする。
「次は、少し斜めに視線を上げて……」
 緊張でカチカチのまま、身体や視線を動かしていく。 
「俺の方見て……肩越し見詰めて……。そう次は喉元……」
 多分、私の様子を見ながら、的確に指示してるのか解る。
「次……目を見て……」
 私は自然と高橋さんと目を合わすと――――そこには見たことない真剣な眼差しがあった。

 ――――ドクンッ。
 鼓動と共に熱いものが、胸を走る。

「宮脇ちゃん……下の名前は?」
「つ、つかさ……」
 素直に答えてしまった。でも――――。
「つかさ……ね。名前までカッコいいね! 俺なんてミキなのに」
 屈託なく笑う高橋さんに釣られて笑う。
「確かに! 逆みたいだね!」
「つかさ……今の笑顔、可愛いじゃん!」
 なっ! ――――こんな時に、受け止める余裕ない!


 固まりそうになる私に高橋さんは、隙を与えないように次々とポージングの支持を出してくる。
「はい! 肩に腕を掛けて……」
「あっ、はい!」
 でもそんな間もなく、指示通りに動かされていく。
 その後も高橋さんの言われるままに、あ~んなポーズや、こ~んなポーズをとらされた。


「は~い! オッケー!」
 ――――撮影終了!
 あっという間に感じたけど、気付けば結構な時間が経っていた。


 身体が宙に浮いているみたいな感覚に包まれて、茫然自失で立ち尽くしてると、高橋さんの手が私の肩にポンと軽く乗る。
「宮脇ちゃん! お疲れちゃん!」
「は……はい。お疲れ様でした……」
「不思議でしょう~。気持ちよかった?」
 何かフワフワする――――。
 魔法が解かれたら、こんな感覚なのかな――――。
「はい……夢の世界みたい」
 そんな私に高橋さんは――――
「そう……夢を見て、夢を魅せるんたよ……この世界は」
 妖しいくらい、優しく微笑んだ――――。

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