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28 エピローグ
しおりを挟むかねてから考えていた婚活パーティを開催することにした。
貴族の婚活パーティなので、だいたい同じ階級の男女に声を掛けてみる。
同じ貴族でも男爵家が公爵家と縁づく事はまず無い。せっかく知り合って恋に落ちたのに、引き裂かれるというのはかわいそうなので、知り合って恋に落ちても大丈夫な者同士を集めた。
お茶会で集めた情報や家で調べていた情報を元に、趣味などが合いそうな人を見繕う。
前世ではイベント会社のOLだったので、婚活パーティも企画した事がある。
婚活パーティのオーソドックスな流れは①(前半)自己紹介タイム → ②(後半)フリータイム → ③カップリング・タイムといった感じだ。
でもそれじゃ面白くないので、途中でゲームをやったり、どこかに出かけるツアーに組み込んだり、ゲームやスポーツなど趣味の集まりで募集したり、クルージングやバーベキューなどのエンタメを取り入れたりする。
大きく言うと、婚活ツアー、趣味コン、大型エンタメ、合コン型パーティーなどに分けられるのだ。
今回は、初めてなので地味にクイズを加えてスタンプラリー方式の謎コンにしてみたが、大旨好評であった。
侯爵家の中を謎を解きながら、回るのだ。
ちなみに第一問は「夜になると美しき公爵夫人が写ると言われる鏡はどこ?」だ。
次は、ピクニックを兼ねても良いし、競馬観戦パーティや読書好きを集めた趣味コンも面白そう。
最後は参加者で花火をみて終了である。
終了の花火が上がる。
ぽん、ぽんと、花火が夜空に煌きらめいて、
ひとつふたつと、漆黒の闇の中に消えて行く。
いろいろやるだけやったなあと、思う。よく頑張った私。
「ぶじ終わったね」
アランが微笑む。
「ええ、好評だったみたいで良かったわ。そろそろ結論が出ましたかしら?」
いたずらっぽく聞いてみる。
「ああ、決心したよ。君が望むならお腹の子の父親になるよ。夫婦を続けよう」
「なぜ、私が妊娠してると思ってらっしゃるの?」
「知らないと思ってたんだね」
アランが苦笑する。
「君が階段から落ちたとき、駆けつけた僕に『お腹の赤ちゃんは大丈夫?』って君が言ったんだよ。ショックだったよ。君は何も知らないお嬢様だと思ってたからね。妊娠したから適当な父親が欲しくて僕と結婚したんだね?」
おお、あの夜襲をかけたときの汚らわしい発言はこれか!
アランの目をじっと見つめる。しょうが無い白状するぜ。
「あれは、勘違いでしたの。わたくし、キスをしたら妊娠すると思ってましたの。
それから貴方と結婚したのは、貴方を好きで貴方を幸せにしたかったからですわ」
アランがはっとした顔をして、そして顔がみるみる赤くなった。
「ごめん。僕はずっと君のことをまるっきり誤解していたのか!」
「夫婦を続けたいと言って下さって嬉しかったわ。でも私のことを愛してる訳じゃないですよね?」
「ああ。でも君のことを好ましいと思い始めている。時を経てば育つものもあると思う」
「うふふ。無理ですわ。離婚しましょう」
「え?」
アランがポカンとした顔をしている。
ふふふ、自分に惚れてるから離婚はないと思ってたな。ちょっと清々する。
「恋は信用してない相手でも出来ますけど、生涯の伴侶は心から信頼できる相手じゃないと無理だと気がつきました。貴方は私のことをちっとも信頼して下さいませんでしたね。イレーヌさん誘拐の時も、妊娠の件も……」
「すまない。でも簡単に離婚なんて……」
アランが眉を寄せる。
港整備のこととか考えてるのかしら?
「大丈夫です。お父様に了承頂いてます。ご安心下さい、港整備の資金支援の件は継続しますわ。もちろん港が開港したら利益の何割かを頂く事になりますが、割合はお父様と詰めて下さいませ」
――そして本当に愛する方をみつけて、幸せになって下さいね
**
お兄様が私を階段から突き落とした犯人だと思ったとき、世界が壊れるような想いがした。
あれ? 私間違えていたかも。
私の一番大事な人はアランじゃなかったかもしれない。
アランがイレーヌさんと会って恋を諦めたとき、とても胸が痛かったけど、
世界が壊れるような想いはしなかった。
恋に恋していたのだろうか?
留学へ戻るとお兄様が挨拶に来た。
「アランを逃がしてやることにしましたわ」
離婚することを報告すると、お兄様は心底嬉しそうに、
「ルーの赤ちゃんなら僕の子供だよ。結婚しようね」
と、のたまった。
いやいや、違う。君の子ではない。それに妊娠すらしてない。
そうだった。お兄様に妊娠が勘違いだったと言ってなかったっけ……。
キスで妊娠すると思ってた件を白状するのは、メンタルが削れる。
しょうがないので、真っ赤になりながらしろどもどろに説明すると、お兄様も真っ赤になっていきなり私を抱きしめた。
「本当に好きなんだ。子供の頃からずっと。ルー僕と結婚して」
どうやら、ワトソン君は本気で私が好きみたいだ。
ま、いいかな?
どうせ子供の時からこの人には、世話になっているのだ。
手をつないでるのに魚を覗き込んで一緒に湖に落ち、夜中の待ち合わせをすっぽかしてちいさかったお兄様を泣かせ、優しいこの人をいっぱいいっぱい引っ張り回してきたのだ。
これから先、一生ずっと私が引っ張り回してもどうと言うこともあるまい。
きっと、お兄様は「ルーはしょうがないなあ」といいつつ、髪をかき上げるだろう。
うん。しょうが無いのだよ。ワトソン君。
ずっと私に付き合い給え。
お返しに私もできる限り君を幸せにできるように頑張るよ。
信頼してない相手とでも恋は出来るけど、お互いに信頼してない相手を人生の相棒には出来ないのだ。
**
あれから私はワガママ奥様改め、権力で美男子と結婚したのにあっという間に飽きて捨てたワガママ悪女と言われている。
ルイーゼ様イメージアップ大作戦を行うはずだったのに、悪名だけが高くなる結果となった。
なぜか、思いっきり叱られると思っていた伯母様も、離婚大歓迎だった。
伯母様、どれだけアランが嫌いだったんだろう。
伯母様は社交のイロハをスパルタ指導しつつ、悪女の方が相手が勝手にビビってくれるからやりやすいわよと、おっしゃって下さる。
もうこれでいいかなと開き直っている。
ただ、悪名のおかげでお兄様以外ちっとも男がよってこない。
今日も私は、転生してワガママ悪女頑張っています。
~ end ~
=== あとがき =================
長い間、読んで頂きありがとうございます。
この物語は、アラン救済のワガママ奥様とのラブコメを書く予定でした。
アランを幸せにする予定でした……。
なぜ、こうなった?
書いてるうちにどうしてもアランと主人公がイチャコラせず、
作者もアランとくっつけようと頑張ったのですが、刀折れ矢尽き、このような結果になりましたw
アランファンがいらっしゃいましたら、深くお詫び申し上げます。
物語を書くのって難しいなあとしみじみ痛感しております。
最後まで読んで頂きありがとうございました。ブクマ、感想、とても励みになりました。
読んでくださった皆様に、最大限の感謝を捧げます。
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