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5 第82回 脳内会議
しおりを挟むせっかく思い出したので、前世の記憶を整理してみよう。
前世の私は、小さなイベント企画会社のアラサーOLだった。
毎日、顧客や業者と打ち合わせし、予算の数字とにらめっこし、いい加減な上司と戦い、後輩を励まし、ときどき叱り飛ばし、うちの会社の影の女王と呼ばれていた。
あ、前世も女王様だった……。あれ? 私って性格あんまり変わってない?
夜会でルイーゼ様ってそんなに美人じゃないって言われてたけど、今の私ってどんな顔だっけ?
気になるので、足をケンケンしながら壁に掛けてある大きな姿見の前に立ってみた。
ウェーブのかかった金髪に深い青の瞳、鏡に写った西洋系の顔立ちに、前世日本人の私は違和感を感じる。
ちょっときつそうな感じのする猫目、くっきりとした唇、気が強そうでワガママそうな顔立ち。
いわゆるの悪役令嬢って感じ。我ながら、顔って性格が出るんだわって感心する。
身体つきは、前世と違って出る所は出てくびれるところはくびれている、所謂ダイナマイトボディってヤツだ。けしからん!
絶世の美女ではないけれど、小悪魔系って感じ? 我ながら、なかなか良い線行ってると思う。
平凡な容姿だった前世の私に比べれば、大成功だ。(前世の私ごめん!笑)
ケンケンでベッドに戻り、脳内会議を開催した。
『議長のルイーゼさんお願いします』
『それでは、第82回 脳内会議を開催しまーす』
『ええ、いきなり82回?』
『はい、そこは気分です』
『こほん、そこはほっといて、今日の議題を発表します。
今の課題は、
一つ目は、私を突き落とした犯人捜し。
二つ目は、アラン様の状況把握。
三つ目は、ワガママ奥様としての不評っぷりから汚名返上すること。
ですが、
二つ目と、三つめはおいおいなんとかするとして、
一つ目は、ねんざで足が動かないことだし信頼できる誰かに協力を頼みたいのですが、ご意見ありますか?』
『使用人はどうですか?』
『信用できる使用人がいればお願したいんだけど、今まで悪辣な態度を取ってきたので、使用人には嫌われてるんじゃない?』
『ルイーゼ様、態度悪かったもんねえ』
『昨日なんて、扇投げつけてたし!』
『引くわねー』『引くよねえ』
『ううう…』
『そうよねえ、階段に突き落としたのは私を憎んだ使用人かもしれない』
『使用人、ばあや以外誰も信用できないわね』
『うんうん。階段から突き落とされた際、最後に見た青いモノって、あれは使用人が着る青いお仕着せかもねえ?』
『そういえば、あの日、アランも青い上着を着ていたわねえ』
『『……』』
『落ち込むわね。今、信用できる人は、父、ばあや、エディお兄様の3人かしら?』
『3人しかいないのねえ…… 日頃の行いよね』
『ううう』
『じゃあ、お父様はどうかしら?』
『お父様、私を溺愛してるからどんな協力でもしてくれるわよ』
『うんうん。お父様なら、激怒してすぐ犯人を突き止めそう!』
『あ、でも、怒りで激しい報復しちゃうかも?』
『やるわね! 娘命だもの。お父様なら、やりかねないわ』
『ねんざで死刑!なんてブルブルだわ』
『『お父様には、絶対内緒にしておきましょう!』』
『じゃあ、ばあやはどう?』
『ばあやは無理でしょう? もういいお年だし、今回の任務に向かないわ』
『さすがに、ばあやに無理はさせられないわね』
『それ以前にばあやに、捜査とか無理そう』
『では、エディお兄様はどうでしょうか?』
『エディお兄様は、信頼できる方だし、賢いのよ』
『ルイーゼって、ブラコンなの?』
『ふふ、ちょっとね?』
『しかもお兄様は、青いモノは身につけてなかったわ』
『それはポイント高いわね!』
『『では、明日、エディお兄様にお願いすることに決定で!!』』
『これにて、第82回 脳内会議を終了します』
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