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3 いろんな意味で目が覚めました。
しおりを挟むごろごろと階段から転げ落ちる。
――あれ? これって前にもあった気がする…… これって、デジャブ?
発車のベル、駆け込む乗客。
『待って、これに乗らないと遅刻しちゃう!』 ホームへの階段を一足飛びに駆け上がる。
あともう少しで駅のホームというところで、一緒に駆け上がってきた人の肩が当たった。
身体のバランスが崩れる。
あ、階段を踏みしめるはずの足がスコンと宙を切る。
ごろごろと階段から転げ落ちる。後頭部にごつんと衝撃が走った。
――そうだ、私、アラサーのOLで会社に行く途中、駅の階段から転げ落ちて死んだんだわ。
目が覚めた。
美しい星座の描かれた天井が目に入る。ああ、私の部屋だわ。
ベッドの天蓋の上には幸せな結婚を願って接吻キスをする二羽の小鳥の彫刻が彫られている。
心配そうにお父様とエディお兄様、ばあやが顔を覗き込んでいる。
「よかった。目が覚めたな」
ほっとした顔をしたお父様がそっと私の頭をなぜる。
ちょっと髪の毛が後退した頭部、ふっくらとしたお腹、
きっとお父様は若いころはハンサムだったのだろう。今は見る影もないけれど……。
「一晩目が覚めなかったんですよお嬢様、気がつかれて本当に良かったです」
ばあやとお父様が目をうるうるしている。
「本当に僕のお姫様はそそっかしいんだから」
エディお兄様は、私がうっかり足を踏み外したと思ってるみたい。
アランを目で探す。
それに気づいたのかお父様が困ったような顔をした。
「アランは、お前のことをとても心配してたけど、どうしても外せないお仕事があったんだよ」
アランはいない。
やっぱり…… そういう事なのだろうか?
「足のねんざですね。骨は折れてません。頭を打たれたようですから、具合が悪くなったり吐き気がしたら、すぐにお呼び下さい」と、お医者様が告げる。
確かに身体のあちこち、特に左足首と側頭部が痛い。
良かった。2回連続で前世と同じ死因で死ぬとこだったわ。
前世の記憶が頭に甦る。
いやあ、転生してるじゃん。しかも侯爵令嬢で中世ヨーロッパぽい。
今はやりの異世界転生ってやつ?
情報が駆け巡って、頭が混乱する。
いろいろ気持ちを整理したい。
「お父様、エディお兄様ご心配かけました。しばらく眠りたいの。一人にしていただけますか?」
「もちろんだよ、ルイーゼ。調子が悪くなったら、呼び鈴を鳴らすのだよ。寂しくなったらいつでも呼んでいいからね」
お父様ったら、私をいくつだと思ってるんだろう?
「元気になったら、ゆっくりお茶でもしようね」
エディお兄様がニッコリと微笑む。
「お嬢様、あとでご様子を見に参りますね」
ばあやは心配そうな顔をしてそっとドアを閉めた。
よっし! お父様達が出て行き、一人になった。
転生したらコレよね。とりあえず、ステータスオープンと唱えてみる。ファイヤーと唱えてみる。
――何も起らなかった。
ふへへ、そうだよね、ちゃんとルイーゼの記憶があるけど、この世界、魔法はない。
ルイーゼの記憶をたぐってみる。
名家の一人娘として蝶よ花よと育てられてきた私はルイーゼ様だった……(恥)
自分が一番偉い。平民? メイド? 何ソレ? 私たち貴族に仕える為にいるのよねって本気で思ってた。
前世は身分なんて無くて『人間は皆平等』って思ってたけど、今世では身分で自分が偉いと本気で思ってたわ。教育ってこわい。
小さい頃に母を亡くしたせいもあってか、周りからチヤホヤされて甘やかされて、自分で言うのもなんだけど、実に嫌な人間だった。メイドはいびり倒し、ワガママ言い放題、贅沢大好きで、権力を笠に着て好き放題やっていたわ。
夫も格好いいからと、相手の意向も聞かず権力でゲットしちゃったわ……
思い返すと、今までの自分すっごい最低。無いわーの行い三昧。
うわぁぁ! 私になにやっちゃってんの!? ホント、ごめんなさあ~い!! と足をバタバタしてベッドで悶えた。
ズキッと足に衝撃が走る。
うううっ、足ねんざしてたんだったわ(泣)
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