乙女ゲームの主人公になったけど、やる気ゼロです。

こうじゃん

文字の大きさ
上 下
51 / 57

51 遺跡の門

しおりを挟む

艱難辛苦を乗り越えて、ついに、遺跡に着きましたエリカです。



山の中腹の小高い崖の上に白い遺跡がある。

重厚な石造りの秀麗な建物だ。



青い空に白い石がキラキラと光って美しい。

「すごい!」

ハルカが感嘆の声を上げる。



ギリシャの古い神殿を思わせる建物の前に大きな石を積み上げて造ったアーチ型の門。

遺跡の建物と門はつながっていて、門を開けないと遺跡に入れない造りになっている。

門の扉は、美しい彫刻が施されている。



門の前には広場があり、まるい台座の上に4つの彫像が安置されている。

台座の周りには元々何かあったのが、崩れた石材が草の中に転がっている。



「魔法で門を破壊出来なかったのか?」

アルベルト様が、マルチーノさんに質問する。

「ええ、双子が様々な魔法を試しましたが、すべて結界ではじかれました。騎士が切りつけてみましたが、傷一つつきませんでした。」



「ここです。ここに謎の文字が刻まれてるんです」学者が門を指さす。

門のタイルの1つに何やら文字が刻まれている。



『おしあじんをたあだおしくはおいちせよお』



ああ、日本語だ。

私が召喚しなければ、ハルカは来なかったのだ。

他の誰かが召喚したならば、呼ばれたのは日本語が読める私エリカだっただろう。

罪悪感が胸を締め付ける。

今更、何を言ってもしょうがない。なすべき事をして、ハルカを日本に帰すのだ。



「読めますか?」学者のユーゴが、ハルカに聞く。

「ええ」



『おしあじんをたあだおしくはおいちせよお』



「ハルカ、これ、ひらけゴマ的な呪文かな?」

「唱えると門が開くのかしら?」



ご丁寧に、文字の下にイモムシが掘ってある。



「呪文を間違えるとイモムシにするぞ!という警告かな?」

「えええ、イモムシは困る!」

「間違えないように、一文字ずつ唱えてみようね」



「おしあじんをたあだおしくはおいちせよお」

二人で声をそろえる。



何も起らなかった。門はぴくりともしない。



「呪文じゃなかったのか?」

残念そうにアルベルト様が呟く。

「どうすれば良いんだろう?」皆が頭を抱える。



「あ、もしかしたら、あれイモムシじゃなくて青虫かも?」

ハルカが何かひらめいたようだ。

「青虫だと何かあるの?」

「アオムシですよ。『あ』『お』を無視して読むんですよ」

「小学生のなぞなぞかよ!」

がっくり膝を突いた。



『あ』『お』を無視して読んでみる。

「しじんをただしくはいちせよ」

「「『四神を正しく配置せよ』だ!」」



「四神って何ですか?」とユーゴが尋ねる。

「ハルカの世界の神で、天の四方の方角を司る霊獣なんだ。東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武で、四神という。」



皆が一斉に、門の前の4つの彫像に目を向ける。

確かに4つの彫像は、竜、朱雀、白虎、玄武の像だった。

4つの像を、東西南北に正しく設置する。

最後の像を台座に設置すると、周りがカッと光った。



台座の周りにあった石材が1つまたひとつと宙に浮かび上がる。

石材は次々と合体して1つの巨体を造り上げた。



――石の巨人、ゴーレムだ!!







しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。 不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった! けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。 前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。 ……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?! ♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

処理中です...