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51 遺跡の門
しおりを挟む艱難辛苦を乗り越えて、ついに、遺跡に着きましたエリカです。
山の中腹の小高い崖の上に白い遺跡がある。
重厚な石造りの秀麗な建物だ。
青い空に白い石がキラキラと光って美しい。
「すごい!」
ハルカが感嘆の声を上げる。
ギリシャの古い神殿を思わせる建物の前に大きな石を積み上げて造ったアーチ型の門。
遺跡の建物と門はつながっていて、門を開けないと遺跡に入れない造りになっている。
門の扉は、美しい彫刻が施されている。
門の前には広場があり、まるい台座の上に4つの彫像が安置されている。
台座の周りには元々何かあったのが、崩れた石材が草の中に転がっている。
「魔法で門を破壊出来なかったのか?」
アルベルト様が、マルチーノさんに質問する。
「ええ、双子が様々な魔法を試しましたが、すべて結界ではじかれました。騎士が切りつけてみましたが、傷一つつきませんでした。」
「ここです。ここに謎の文字が刻まれてるんです」学者が門を指さす。
門のタイルの1つに何やら文字が刻まれている。
『おしあじんをたあだおしくはおいちせよお』
ああ、日本語だ。
私が召喚しなければ、ハルカは来なかったのだ。
他の誰かが召喚したならば、呼ばれたのは日本語が読める私エリカだっただろう。
罪悪感が胸を締め付ける。
今更、何を言ってもしょうがない。なすべき事をして、ハルカを日本に帰すのだ。
「読めますか?」学者のユーゴが、ハルカに聞く。
「ええ」
『おしあじんをたあだおしくはおいちせよお』
「ハルカ、これ、ひらけゴマ的な呪文かな?」
「唱えると門が開くのかしら?」
ご丁寧に、文字の下にイモムシが掘ってある。
「呪文を間違えるとイモムシにするぞ!という警告かな?」
「えええ、イモムシは困る!」
「間違えないように、一文字ずつ唱えてみようね」
「おしあじんをたあだおしくはおいちせよお」
二人で声をそろえる。
何も起らなかった。門はぴくりともしない。
「呪文じゃなかったのか?」
残念そうにアルベルト様が呟く。
「どうすれば良いんだろう?」皆が頭を抱える。
「あ、もしかしたら、あれイモムシじゃなくて青虫かも?」
ハルカが何かひらめいたようだ。
「青虫だと何かあるの?」
「アオムシですよ。『あ』『お』を無視して読むんですよ」
「小学生のなぞなぞかよ!」
がっくり膝を突いた。
『あ』『お』を無視して読んでみる。
「しじんをただしくはいちせよ」
「「『四神を正しく配置せよ』だ!」」
「四神って何ですか?」とユーゴが尋ねる。
「ハルカの世界の神で、天の四方の方角を司る霊獣なんだ。東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武で、四神という。」
皆が一斉に、門の前の4つの彫像に目を向ける。
確かに4つの彫像は、竜、朱雀、白虎、玄武の像だった。
4つの像を、東西南北に正しく設置する。
最後の像を台座に設置すると、周りがカッと光った。
台座の周りにあった石材が1つまたひとつと宙に浮かび上がる。
石材は次々と合体して1つの巨体を造り上げた。
――石の巨人、ゴーレムだ!!
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