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50 リビングメイル
しおりを挟む地面に寝袋で寝るので、背中と腰が痛いエリカです。
毎朝、ハルカとお互いにモーニングヒールを掛け合っております。
モーニングヒール、一行の皆様にも大変喜ばれております。
モーニングヒール、私とハルカで手分けしてかけてるんだけど、ハルカの担当になると嬉しそうなのが、私の担当になるとちょっと残念そうな顔になるのが、腹立たしい。
ナト村から登るにつれて、緑が少なくなって岩山になってゆく。
毎日山道を登り、やってくるモンスターを倒し、ご飯を作ってキャンプで寝るというハードな日々を送っております。
なかなか遺跡につきません。
モンスターがだんだんと強くなってきたので、思うように進めないのです。
肩の上の琥珀がううと、唸る。
( エリカ、この先にモンスターの気配 )
「この先にモンスターの気配があります」
全員が戦闘態勢を取る。
角を曲がるといきなり地面から黒い影が湧き出てきた。
リビングメイルだ。
リビングメイルとは、自らの意志で動き回る西洋鎧だ。亡霊の魂が憑依したモノとも言われている。
このリビングメイル、生前は凄腕の騎士だったようでむちゃむちゃ強い。
チャラ双子の繰り出す雷や炎を軽々と避ける。
騎士のフェルナンドが、リビングメイルを切りつけるが、盾を使って押し返す。強い。
フェルナンドと交戦中なので、味方に当たりそうで魔法が使えない。
カインが背後から近づきリビングメイルの背中叩こうと剣を振り上げるが、さすが達人、気配を察知して、カインを蹴り飛ばした。強い。
カインが山道をコロコロと転がる。
素人目にも、フェルナンドさんの方が押されてるのが分かる。
何か使える魔法がないかしら?
「この魔法はつかいたくなかった……」
中2病なセリフを吐いて、イチかバチかやってみる。
例の呪文を唱える。ドロドロとした黒い闇が人の形をつくる、死霊召喚だ。
「あら、こないだの小娘じゃない? なんの用かしら?」
やっぱ、オネエの霊だ……
「リビングメイルと戦って欲しいんです」
「あたし、女のお願いは聞かないの」
「……」
ワガママなオネエだ。
「アルベルト様お願いします」
アルベルト様に、『やれ!』という目で見る。
「……そこの素敵な方、ご助力をお願いしたい」
よし! アルベルト様、空気を読んだ。
「いやん、カッコイイ殿方の頼み断れないわ♡ 」
オネエの死霊が、リビングメイルの方に向きを変える。
「見えるわ。鎧の中のイケメンが。きゃあ、お兄さん、私と遊びましょう。」
どう見ても空っぽの鎧だが、オネエの死霊にはリビングメイルの中のイケメンが見えるらしい。
怯えるリビングメイル。
「もう、震えちゃってウブなのねっ♡ お姉さんがいろいろ教えてあ・げ・る♡」
オネエの死霊が怯えるリビングメイルを追いかける。
――そうして、二人は闇の中へと消えていった。合掌。
すまん。リビングメイル。
そして、「カイン、カタキは取ったよ。」
「やめろ! 俺が死んだみたいじゃないねーか」
下の道まで転がっていったカインが泥だらけになって登ってきた。
そして、私の頭にチョップしたのであった。
カタキ取ってやったのにぃ……
「ああいう死霊の使い方、そういう戦い方もあったのか……」
フェルナンドさんが、感心したように呟いた。
いやいや、参考にならない、よ?
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