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13 救世主side
しおりを挟む俺は空いた時間は森にいる。
俺の生まれた立ち位置のせいで、いろいろ周りの対応が面倒なのだ。
一人は気が楽だ。
お気に入りの木の上で本を読んでいたら、何やら人の声がする。
「琥珀、寮どっちかわかる?」
(わかんない。)
「そうだよねえ。バッタ追って、ねこまっしぐら!だったもんね。」
この前の助けた新入生の女の子だ。また道に迷っているようだ。
「右から来たと思うから、右へ戻ろうか? いや、カインが方向に関しては自分を信じるな!と、言うから、左に行くべきか……」
彼女は自分を信じなかったようだ、左の方に歩き出す。
だいぶ日が傾いてきた。
――日が沈むと危険だから、しょうが無い助けてやるか。
そのとき、彼女の目の前にヌルッとした何かが、落ちてきた。
スライムだ。
スライムは、モンスターの中で最弱だ。新入生でも簡単に倒せるだろう。
スライムに体当たりされている。
逃げることにしたようだ。
右に逃げようとするが、スライムがぽよんと跳ねて回り込む。
左へ逃げる。
スライムがぽよんと左へ跳ぶ。
右へ逃げる。スライムが先回りする。
とろい!とろい!とろすぎる!
諦めて、攻撃するようだ。
ひょろひょろファイヤーボールが、スライムに飛ぶ。
スライム、ぷるっと、身を震わせただけで、『で?』ってドヤ顔してる。
「くっ! 魔法の効かないタイプか!」
いやいやいや、君の魔法がちょろ過ぎるだけだ。
スライムに魔法は効果抜群だからね。
魔法は諦めたようだ。
地面に落ちている枯れ枝を拾って、
スライムを打つ。
ぼよよん。揺れるだけで、なんの効果もなさそうだ……
「魔法も、物理も効かないなんて。森の主かも……」
いやいや、ごく普通のスライムだって。
ああ、もう腹筋が痛くなってきた。こんなに笑ったのは久しぶりだ。
――しょうがないな。加勢しよう。
ぽんと剣でスライムを叩くと、「きゅ?」と音がして、スライムが消滅する。
スライムが消えたあとに、爪の先ほどの魔石がコロンと転がった。
なんか、ものすごく賞賛された目で見られる。
最弱のスライム倒しただけだからね。
「さすが、救世主さま! わたくし、魔法科1年エリカと申します。
入学式の時も今回も助けていただいき、恐悦至極に存じます。」
「救世主? なんだそれは? 俺の名前はアルベルトだ。お前、また迷ったのか? しょうがない。寮まで送ってやろう。」
寮まで送ってやった。
帰り際に、一応、注意しとく。「あれ、普通のスライムだからね。」
彼女の耳が真っ赤になった。
スライムの爪の先ほどの魔石をもらって良いかと聞くので、いいぞというと、
米つきバッタのように、ペコペコ頭を下げて感謝された。
面白いヤツと、知り合いになった。
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