13 / 14
13 エピローグ
しおりを挟む今日は、講義の日だ。伯爵家に行くとフィリップ様が待っていた。
大事な話があるので、コーデリア様の講義が済んだら必ず執務室に来るようにと言われる。
講義が終わりフィリップ様の執務室に行く。フィリップ様は、いつになく真剣な顔だ。
真剣な顔をするとチャラ男でもイケメンはさらにイケメンだ。いったい何かあったのかしら?
「アランの家を欺した男を捕まえた。持ち逃げした金の半分くらいは取り戻せそうだ。
それに少し足せば婚約破棄の違約金ぐらいにはなるだろう。
俺との婚約は破棄して、アランの所に戻っていいぞ」
――フィリップ様、アランの家を欺した男を探してくれたんだ。
「そうしたら、フィリップ様は廃嫡になるのではないですか?」
「なんだかんだ言ってうちの親は甘い。たぶん大丈夫だろう。もし廃嫡になったとしても死ぬ訳では無い、せいぜい領地で蟄居させられるだけだ。気にしなくていい」
「なぜ、そう言って下さるのですか? 私と結婚したくないからですか?」
「いや、俺は幸せそうに微笑む君が気に入っていたんだ。
俺と婚約してから君は悲しそうな顔や困った顔ばかりだ。
それに、俺のせいで君を危険に晒さらした。君がダリア嬢に刺されたとき心臓が止まるかと思った。
いろいろ考えたが、俺は君が幸せならそれでいいと思う」
いやああ、なんて良い人なのフィリップ様。
「チャラ男なんて言ってごめんなさい。見損なって、もとい、誤解してましたわ。
私の幸せを考えて下さってありがとうございます。
でもね、お金が戻ったらアランとよりを戻す、そんな軽い覚悟でアランと婚約を破棄して貴方と婚約した訳じゃないんですの」
「チャラ男と呼ばれてたのか……」
フィリップ様が何やらつぶやいている。
「私ね、何があってもずっと貴方の側にいますわ。もう婚約破棄はこりごりですの」
とにっこり微笑んで上目使いでフィリップ様を見つめる。
コーデリア様仕込みのアレだ。
フィリップ様は大きく目を見開く。アレ? なんか間違った?
普通顔がやっちゃいけないヤツだった?
「君には敵わないな。俺はいつも君に敵わないんだ」
言葉を言い終わると、彼は力いっぱい私を抱きしめてきた。
「ずっと側にいてくれるのか。君だけが俺を守るため頑張るんじゃ無くて、俺も君を守るために精いっぱい頑張る。だからお互いに手を取り合い、助け合い、支え合って、やっていこう」
そういうとフィリップ様は本当に、ほんとうに嬉しそうに笑った。
**
フィリップ様の予想通り、アランの家から詐欺師が捕まったので違約金を返したいという申し出がうちに来た。
失ったお金は半分も返らなかったのだ。
違約金を返してしまっては、アランの家は大変苦しいことになるだろう。
それに私はもう元に戻る気はないのだ。元に戻れないのだ。
そんな覚悟でした婚約破棄ではないのだ。
父から、アランの家の申し出に丁寧に断りを入れてもらった。
――私は、いつか、あのこにしたことを謝りたい。
あのこの気持ちも聞かずに勝手にやってしまったこと。
勝手に守りたいと思ったこと。
フィリップ様によると、男は女の人に守られるより、守りたいらしい。
あのこは、守られたいなんて思っていなかったのかも……
――そして、私のことなど忘れて欲しい
11
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにて先行更新中

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい
砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。
風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。
イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。
一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。
強欲悪役令嬢ストーリー(笑)
二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる