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3 あとは、お若いお二人で?
しおりを挟む父とこれからの細かい打ち合わせがあるとかで、コーデリア様に、
「フィリップ、イレーヌさんに庭でも案内して差し上げたら?」と体良く追い払われた。
あとは、お若いお二人でってヤツかしら?
「イレーヌ嬢、お手を」と私の手を取るとフィリップ様が輝くような笑顔をみせた。
遊び人スキルが半端ない。全くチャラ男って大嫌い。
いとおしそうに手を握ると庭へと案内された。
なんだかこの人、本当に嬉しそうだ。
意外にもフィリップ様の手は、幼馴染みのあの子と違ってごつごつした剣を持つ人の手だった。
剣術に優れてると聞いたことがあったが、ちゃんと努力した人の手だわ。
「フィリップ様、ちゃんと鍛錬されてるんですね」
「ああ、よくわかりましたね」
「毎日、努力してる人の手ですもの。偉いですわ」
フィリップ様の耳がちょっと赤くなった。
褒められ慣れてない? そんなわけ無いよね?
伯爵家の庭は、青々とした広い芝生に綺麗に剪定された木々がシンメトリーに配置されている。
白い石を敷き詰めた小道が美しいアクセントになっており、真ん中には並々と水をたたえた噴水がある。
この庭園を維持するのに何人の庭師と予算が必要なんだろう?
「こっちに行くとバラ園があるんだ。春ほどではないが、秋薔薇が咲いてるはずだ」
しばらく歩くと、薔薇のアーチが目に入る。
アーチの先に、円形にいろんな種類の薔薇が植えてあり、奥まったところに白い柱につるバラを這わせたカゼボが設置されている。
案内されたバラ園は、秋薔薇がポツポツと咲いている。
春の薔薇の盛りにはさぞかし美しい光景が見られるのだろう。
フィリップ様に案内されてガゼボのベンチに座る。
白いベンチには同色の座り心地の良さそうなクッションが置かれている。
青く晴れた秋空をバックに、赤い薔薇が香り高く咲いている。
「きれい」と思わずつぶやくと、
「イレーヌ嬢、君の方が美しい。君がいると、花たちが霞んでしまうな」と大げさに褒められた。
フィリップ様、目がお悪いのだろうか、凡庸な私よりどう見ても薔薇の方が美しいです。
「今日は人生で一番嬉しい日だ。君と婚約できたからね」
と、フィリップ様が本当に嬉しそうに私を見ると、私の手を引き寄せ指先にそっとキスをした。
わあ、ぐらっとくる。
この人が遊び人だと知らない女の子だったら、イチコロだわ。
自分のことを、本当に愛していると勘違いしてしまうだろう。
――なんで私をクドイテルノ?
ああ、わかった。
私から愛想を尽かされたら、この人、廃嫡されるのだったわ。
「そんな甘い言葉いりませんのよ。わたくし婚約者ですから、口説く必要はありませんわ。所謂いわゆる、運命共同体ですから愛想を尽かしたりしませんから、ご安心ください」
フィリップ様は、目を丸くすると、
「そんなにすぐに上手くいかないか。でも運命共同体は嬉しいな」と頭をかいた。
それって、私を欺だまして丸め込みたいってコト?
「ええ、上手くいきませんわ。欺だまされませんわ」と私が口をとがらせると、
フィリップ様は、「それでこそ、イレーヌ嬢だ」と愉快そうに笑った。
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