お金目当てに、遊び人と婚約してしまいました。

こうじゃん

文字の大きさ
上 下
3 / 14

3 あとは、お若いお二人で?

しおりを挟む


父とこれからの細かい打ち合わせがあるとかで、コーデリア様に、

「フィリップ、イレーヌさんに庭でも案内して差し上げたら?」と体良く追い払われた。

あとは、お若いお二人でってヤツかしら?



「イレーヌ嬢、お手を」と私の手を取るとフィリップ様が輝くような笑顔をみせた。

遊び人スキルが半端ない。全くチャラ男って大嫌い。



いとおしそうに手を握ると庭へと案内された。

なんだかこの人、本当に嬉しそうだ。

意外にもフィリップ様の手は、幼馴染みのあの子と違ってごつごつした剣を持つ人の手だった。

剣術に優れてると聞いたことがあったが、ちゃんと努力した人の手だわ。



「フィリップ様、ちゃんと鍛錬されてるんですね」

「ああ、よくわかりましたね」

「毎日、努力してる人の手ですもの。偉いですわ」



フィリップ様の耳がちょっと赤くなった。

褒められ慣れてない? そんなわけ無いよね?



伯爵家の庭は、青々とした広い芝生に綺麗に剪定された木々がシンメトリーに配置されている。

白い石を敷き詰めた小道が美しいアクセントになっており、真ん中には並々と水をたたえた噴水がある。

この庭園を維持するのに何人の庭師と予算が必要なんだろう?
 

「こっちに行くとバラ園があるんだ。春ほどではないが、秋薔薇が咲いてるはずだ」

しばらく歩くと、薔薇のアーチが目に入る。

アーチの先に、円形にいろんな種類の薔薇が植えてあり、奥まったところに白い柱につるバラを這わせたカゼボが設置されている。

案内されたバラ園は、秋薔薇がポツポツと咲いている。

春の薔薇の盛りにはさぞかし美しい光景が見られるのだろう。



フィリップ様に案内されてガゼボのベンチに座る。

白いベンチには同色の座り心地の良さそうなクッションが置かれている。





青く晴れた秋空をバックに、赤い薔薇が香り高く咲いている。



「きれい」と思わずつぶやくと、

「イレーヌ嬢、君の方が美しい。君がいると、花たちが霞んでしまうな」と大げさに褒められた。

フィリップ様、目がお悪いのだろうか、凡庸な私よりどう見ても薔薇の方が美しいです。



「今日は人生で一番嬉しい日だ。君と婚約できたからね」

と、フィリップ様が本当に嬉しそうに私を見ると、私の手を引き寄せ指先にそっとキスをした。



わあ、ぐらっとくる。

この人が遊び人だと知らない女の子だったら、イチコロだわ。

自分のことを、本当に愛していると勘違いしてしまうだろう。



――なんで私をクドイテルノ?



ああ、わかった。



私から愛想を尽かされたら、この人、廃嫡されるのだったわ。



「そんな甘い言葉いりませんのよ。わたくし婚約者ですから、口説く必要はありませんわ。所謂いわゆる、運命共同体ですから愛想を尽かしたりしませんから、ご安心ください」



フィリップ様は、目を丸くすると、
「そんなにすぐに上手くいかないか。でも運命共同体は嬉しいな」と頭をかいた。



それって、私を欺だまして丸め込みたいってコト?



「ええ、上手くいきませんわ。欺だまされませんわ」と私が口をとがらせると、

フィリップ様は、「それでこそ、イレーヌ嬢だ」と愉快そうに笑った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにて先行更新中

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...