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<7-2>軍部の事実
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王都に戻り、上層部への報告を終えた。討伐方法について上手く説明できる気がしなかったセトは、ネストールに同行を頼み、そのまま調剤室へとやってきた。普段と同じように、ただし下穿きを自ら脱いで、寝台に上がった。
「もう一段、気持ちいいことをしましょうか。今回は頑張られたようですし」
「は……?」
「セト様ほどの腕を持ってしても、魔物に襲われてしまったのですね」
「それはそうなんだが……、おまっ、なにをっ?」
寝台にネストールが上がってくるのは普段通りだが、局部を露出しており、勃ち上がった陰茎がしっかりと目に入ってしまった。
「魔物が私よりも先に、この立派なセト様の陰茎を飲み込んだのが許せません」
「は? お前……っ」
「担当医官なら、皆やり方を習って訓練を受けています。こちらが本職ですよ」
ネストールがセトの陰茎を手で勃てつつセトの腰を跨ぎ、腰を下ろしてくる。孔に当たり、ぷつっと入っていく。
「っ、んん……っ!」
「……っ、若いって、いいですね……。大きくて、圧迫感がすごいですよ、セト様」
足をセトの脇腹に沿わせ、ゆっくりと腰を動かすネストールは、セトの上で喘いでいた。初めての人の中の具合に、セトはぎゅっと目を瞑っていたが、やがて汗ばむネストールを見た。
「っ……」
「はあ……、セト様?」
「俺が、動いてもいいか」
ネストールの細い腰を掴み、一気に下から突き上げた。我慢の限界とでも言おうか。
セトに触れるネストールの表情を、まともに見たことはなかった。あれだけネストールに経験値を貯められていたが、今回ばかりは見逃せなかった。
「っあ! あっ、ああっ!」
ネストールはさすが、慣れているようだった。セトの膝を後ろ手ながら支えにし、セトの腰の動きについてくる。
「ああっ、セト様っ!」
「っく……」
ネストールが射精するところを、セトもネストールの中へ放出しつつ、当然初めて見た。細くて白い身体がぶるっと震え、白濁がセトの身体に吐き出される。
「……やはり悦いですね。どくどくと波を打つの、中で感じられるのは殊更悦いです」
「あ、まだ動くのか……っ」
「セト様、ご冗談を。まだ射精できるでしょう?」
「っ……」
「えっ、あっ!」
セトはネストールに、手技においては敵わないが、ネストールを穿つのはセトだ。武官のセトに、医官のネストールは体力的に勝てない。だから、ネストールの腕を引きその身体を抱き寄せ、寝返りを打った。
セトの陰茎はネストールの孔に挿入されたままだ。セトがゆっくりと身体を起こすと、目の前にいるネストールは満足げに微笑んでいる。
「担当医官を組み敷くって、こういうことか」
「いかにも。セト様、ご自由に動いてください。私はその訓練を受けていますから」
「……と言われてもな。痛くはないのか?」
「平気です。むしろ気持ちいいですよ」
会話をする気がないのか、ネストールが両手を伸ばし、セトの乳首に触れてくる。目を細めると、にやにやと笑うネストールが見える。
「っ、お前な……」
「っ……!」
ネストールの太腿を掴み、奥まで突き刺した。
「今まで受けた手技を、返せばいいんだな?」
ネストールが息を呑んだのを、セトは見逃さなかった。
◇
「……上層部が皆、独身なのも分かる」
「どうしたのです、急に」
「女を抱ける気がしない。元々興味も薄かった。勃たないと思う」
「もしセト様にその必要がありましたら、担当医官としてお手伝いいたしますよ。媚薬の調合などもお任せください」
「当分来ない」
ネストールが諸々の片付けの後、紅茶を出してくれた。
現状、セトは前回の野営の治療者一覧に名を連ねている。医官棟から武官棟へ戻るのが朝になっても妙ではない。
「セト様は、ご存知ないのですね?」
「ん?」
「上層部の方々はご婚姻こそされてませんが、子は残していらっしゃいます。それは国王からの要請で、皆仕方なくと言った具合に」
「は……」
ネストールの言葉に困惑して、ただ口を開けただけになったセトは、あえてゆっくりした動作で紅茶に口をつけた。何味なのかはよく分からず、おそらく薬が入っているのだろうが、美味しいのはいつもと変わりなかった。
「軍部の上官になれる血を、絶やしてはならないのです。王族の方々もそうでしょう?」
「王族なら、分かるが……」
「軍部の施設で子どもを育てることに、違和感を持ったことはありませんか」
「っ……」
急に、ネストールが言おうとしていることが繋がった。受け止める間に、唇を舐める。
「……俺も、上層部の誰かの子なんだな」
「私もですよ」
「武官だけでなく、医官もか」
ネストールも軍部の施設で育ったと聞いた。つまり、そういう場所なのだ。
ゆっくりと頷いたネストールは、一口啜ってから話を続ける。
「医官も含め、いずれかの時期に女が宛てがわれます。相手は目隠しや手枷をされ、こちらが誰かは分からず抵抗もできない状態で待っていると聞いたことがあります」
「つまり……」
セトは思わず顔を顰めた。そんなことがあるのかと疑いたいが、腑に落ちる気もする。
「ええ、ご想像通りです。武官と担当医官で、ひとりの女を回すのです。そして産み落ちた子は施設へ。
男であれば武官か医官として、女であれば文官をしつつ次の世代を孕むための器として育てられます」
聞きたくなかったような、聞いてよかったような。どちらにせよ、事実に変わりはないのだろう。そうでなければ、ネストールがこんな話をセトにする意味がない。
「……よくできてるな」
「親を知らないというのは、軍部以外では珍しいそうですが、それが当たり前の世界にずっといますからね」
「それでいいんだろう。軍部の規律と統一が生まれる」
「そうですね。軍部出身ではなく上層部と血縁を持たずに入った他所の人間が、上官に出世することはありません。
それでも軍部に入れば、たとえ下働きでも生活は保障されます。子を軍部に入れたい親は、軍部の施設に子を捨て置くとも」
紅茶を口に含みつつ、真っ白になる頭から口に出す言葉を探す。ネストールの表情や口調は変わらず、淡々としたままだ。
「……部下がどんな出生かなんて、考えたこともない」
「隊長職はそれでも務まります。ただ、将軍職となると異なります。ある程度の把握が必要になりますよ。必然的に、野営派遣の時期と女と過ごす時期を計らなければなりませんから」
ネストールの言葉に、セトは片眉をあげた。目を合わせると、ネストールには意味深な笑みが浮かぶ。
「……ネストール、何故今、俺に話した?」
「セト様が将軍に任命される日が近いからです。大将のおひとりが頭を上げにくくなってきたと。年齢には誰しも勝てません。近々、地位がひとつ空くのです」
「っ……」
ネストールはセトに、自信満々に話してくる。
「俺は隊長になったばかりだぞ」
「近々と言いました。明日明後日の話ではありません。あり得なくはないですが」
「覚悟しろと?」
「間違いなく上層部に気に入られていますから。女が宛てがわれる日も近いはずです」
「俺が? 女を?」
「私も同じ夜、同じ閨に入りますから、いつも通りですよ」
◇
何の前振りもなく、軍部で一番の地位を持つ大将のひとりに呼び出された。野営依頼ではないのは、前振りがなかったことで分かる。野営の打ち合わせであれば、文官からセトの部下にあらかじめ資料が渡されるのだ。
しかも今回は担当医官の同席を求められ、ネストールも連れ、大将の執務室へ向かった。ネストールは何故か、薬瓶を数本鞄に入れ運んでいた。
「担当医官は、何故呼んだか分かっているな」
「はい、承知しております」
「この奥に、準備がある。終われば好きに戻って構わない。セトを頼んだ」
「かしこまりました」
セトには説明がないままだったが、ネストールが知っているなら大丈夫だと、大将を見送った。
「セト様、あの幕の奥に女がいます」
「っ……、そういうことか」
「ええ。女には明日の朝、迎えが来ますが、その際に中に出されているか確認があります。セト様と私で、できる限りたくさん注がなくてはなりません。女の準備はできているはずです」
セトはすっと目を細め、幕の切れ目から奥を窺った。この位置からでは何も見えない。幕を潜るにあたり、ネストールの手を握ったのは無意識だった。
<完>
「もう一段、気持ちいいことをしましょうか。今回は頑張られたようですし」
「は……?」
「セト様ほどの腕を持ってしても、魔物に襲われてしまったのですね」
「それはそうなんだが……、おまっ、なにをっ?」
寝台にネストールが上がってくるのは普段通りだが、局部を露出しており、勃ち上がった陰茎がしっかりと目に入ってしまった。
「魔物が私よりも先に、この立派なセト様の陰茎を飲み込んだのが許せません」
「は? お前……っ」
「担当医官なら、皆やり方を習って訓練を受けています。こちらが本職ですよ」
ネストールがセトの陰茎を手で勃てつつセトの腰を跨ぎ、腰を下ろしてくる。孔に当たり、ぷつっと入っていく。
「っ、んん……っ!」
「……っ、若いって、いいですね……。大きくて、圧迫感がすごいですよ、セト様」
足をセトの脇腹に沿わせ、ゆっくりと腰を動かすネストールは、セトの上で喘いでいた。初めての人の中の具合に、セトはぎゅっと目を瞑っていたが、やがて汗ばむネストールを見た。
「っ……」
「はあ……、セト様?」
「俺が、動いてもいいか」
ネストールの細い腰を掴み、一気に下から突き上げた。我慢の限界とでも言おうか。
セトに触れるネストールの表情を、まともに見たことはなかった。あれだけネストールに経験値を貯められていたが、今回ばかりは見逃せなかった。
「っあ! あっ、ああっ!」
ネストールはさすが、慣れているようだった。セトの膝を後ろ手ながら支えにし、セトの腰の動きについてくる。
「ああっ、セト様っ!」
「っく……」
ネストールが射精するところを、セトもネストールの中へ放出しつつ、当然初めて見た。細くて白い身体がぶるっと震え、白濁がセトの身体に吐き出される。
「……やはり悦いですね。どくどくと波を打つの、中で感じられるのは殊更悦いです」
「あ、まだ動くのか……っ」
「セト様、ご冗談を。まだ射精できるでしょう?」
「っ……」
「えっ、あっ!」
セトはネストールに、手技においては敵わないが、ネストールを穿つのはセトだ。武官のセトに、医官のネストールは体力的に勝てない。だから、ネストールの腕を引きその身体を抱き寄せ、寝返りを打った。
セトの陰茎はネストールの孔に挿入されたままだ。セトがゆっくりと身体を起こすと、目の前にいるネストールは満足げに微笑んでいる。
「担当医官を組み敷くって、こういうことか」
「いかにも。セト様、ご自由に動いてください。私はその訓練を受けていますから」
「……と言われてもな。痛くはないのか?」
「平気です。むしろ気持ちいいですよ」
会話をする気がないのか、ネストールが両手を伸ばし、セトの乳首に触れてくる。目を細めると、にやにやと笑うネストールが見える。
「っ、お前な……」
「っ……!」
ネストールの太腿を掴み、奥まで突き刺した。
「今まで受けた手技を、返せばいいんだな?」
ネストールが息を呑んだのを、セトは見逃さなかった。
◇
「……上層部が皆、独身なのも分かる」
「どうしたのです、急に」
「女を抱ける気がしない。元々興味も薄かった。勃たないと思う」
「もしセト様にその必要がありましたら、担当医官としてお手伝いいたしますよ。媚薬の調合などもお任せください」
「当分来ない」
ネストールが諸々の片付けの後、紅茶を出してくれた。
現状、セトは前回の野営の治療者一覧に名を連ねている。医官棟から武官棟へ戻るのが朝になっても妙ではない。
「セト様は、ご存知ないのですね?」
「ん?」
「上層部の方々はご婚姻こそされてませんが、子は残していらっしゃいます。それは国王からの要請で、皆仕方なくと言った具合に」
「は……」
ネストールの言葉に困惑して、ただ口を開けただけになったセトは、あえてゆっくりした動作で紅茶に口をつけた。何味なのかはよく分からず、おそらく薬が入っているのだろうが、美味しいのはいつもと変わりなかった。
「軍部の上官になれる血を、絶やしてはならないのです。王族の方々もそうでしょう?」
「王族なら、分かるが……」
「軍部の施設で子どもを育てることに、違和感を持ったことはありませんか」
「っ……」
急に、ネストールが言おうとしていることが繋がった。受け止める間に、唇を舐める。
「……俺も、上層部の誰かの子なんだな」
「私もですよ」
「武官だけでなく、医官もか」
ネストールも軍部の施設で育ったと聞いた。つまり、そういう場所なのだ。
ゆっくりと頷いたネストールは、一口啜ってから話を続ける。
「医官も含め、いずれかの時期に女が宛てがわれます。相手は目隠しや手枷をされ、こちらが誰かは分からず抵抗もできない状態で待っていると聞いたことがあります」
「つまり……」
セトは思わず顔を顰めた。そんなことがあるのかと疑いたいが、腑に落ちる気もする。
「ええ、ご想像通りです。武官と担当医官で、ひとりの女を回すのです。そして産み落ちた子は施設へ。
男であれば武官か医官として、女であれば文官をしつつ次の世代を孕むための器として育てられます」
聞きたくなかったような、聞いてよかったような。どちらにせよ、事実に変わりはないのだろう。そうでなければ、ネストールがこんな話をセトにする意味がない。
「……よくできてるな」
「親を知らないというのは、軍部以外では珍しいそうですが、それが当たり前の世界にずっといますからね」
「それでいいんだろう。軍部の規律と統一が生まれる」
「そうですね。軍部出身ではなく上層部と血縁を持たずに入った他所の人間が、上官に出世することはありません。
それでも軍部に入れば、たとえ下働きでも生活は保障されます。子を軍部に入れたい親は、軍部の施設に子を捨て置くとも」
紅茶を口に含みつつ、真っ白になる頭から口に出す言葉を探す。ネストールの表情や口調は変わらず、淡々としたままだ。
「……部下がどんな出生かなんて、考えたこともない」
「隊長職はそれでも務まります。ただ、将軍職となると異なります。ある程度の把握が必要になりますよ。必然的に、野営派遣の時期と女と過ごす時期を計らなければなりませんから」
ネストールの言葉に、セトは片眉をあげた。目を合わせると、ネストールには意味深な笑みが浮かぶ。
「……ネストール、何故今、俺に話した?」
「セト様が将軍に任命される日が近いからです。大将のおひとりが頭を上げにくくなってきたと。年齢には誰しも勝てません。近々、地位がひとつ空くのです」
「っ……」
ネストールはセトに、自信満々に話してくる。
「俺は隊長になったばかりだぞ」
「近々と言いました。明日明後日の話ではありません。あり得なくはないですが」
「覚悟しろと?」
「間違いなく上層部に気に入られていますから。女が宛てがわれる日も近いはずです」
「俺が? 女を?」
「私も同じ夜、同じ閨に入りますから、いつも通りですよ」
◇
何の前振りもなく、軍部で一番の地位を持つ大将のひとりに呼び出された。野営依頼ではないのは、前振りがなかったことで分かる。野営の打ち合わせであれば、文官からセトの部下にあらかじめ資料が渡されるのだ。
しかも今回は担当医官の同席を求められ、ネストールも連れ、大将の執務室へ向かった。ネストールは何故か、薬瓶を数本鞄に入れ運んでいた。
「担当医官は、何故呼んだか分かっているな」
「はい、承知しております」
「この奥に、準備がある。終われば好きに戻って構わない。セトを頼んだ」
「かしこまりました」
セトには説明がないままだったが、ネストールが知っているなら大丈夫だと、大将を見送った。
「セト様、あの幕の奥に女がいます」
「っ……、そういうことか」
「ええ。女には明日の朝、迎えが来ますが、その際に中に出されているか確認があります。セト様と私で、できる限りたくさん注がなくてはなりません。女の準備はできているはずです」
セトはすっと目を細め、幕の切れ目から奥を窺った。この位置からでは何も見えない。幕を潜るにあたり、ネストールの手を握ったのは無意識だった。
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