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<7-1>苦戦した討伐

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 妙な魔物が増えた。記録になく、対策が取れない。今日の相手も剣で斬っただけでは死なず、蔦のような触手で分断された身体を繋ぎ合って復活してきた。

 こういう魔物は核を潰す必要があるが、それがどこにあるか分からない。このままでは、ただ消耗していくだけだ。

 魔物が現れるのは夕方から夜の間だけで、人間の暮らす町から一旦魔物を遠ざけられれば、朝は迎えられる。もし魔物が下りてきても、現場に一番近いのは軍部の野営基地で、民に被害は出ない。

「一旦退避! 基地へ戻って陣形を組み直す!」

 明日、昼間のうちに作戦を練り直し、夕方に出直そうと、そう部下に叫んだ時だった。

「っ!」

 触手に、足を取られた。咄嗟のことに声が出ず、そのまま森へと引き摺り込まれてしまう。
 剣を地面に立てようにも、その速さに敗れ、弾かれてしまった。腕を胸の前で組み、身を守る体制しか取れなかった。

 おそらく、森の相当深くまで連れてこられた。人間が立ち入らない、魔物の居住地区だろう。ひとりで来るのはもってのほかだ。

「っ、なんだ……?」

 広場のような少し開けた空間で、セトは触手に全身を絡め取られ、仰向けに固定された。頭や口にも触れられている。視界に入るのは風に揺れる木々と陽が落ちて真っ暗な空だけだ。

「んんっ!」

 防具の隙間から、触手がセトの身体に触れる。何かぬめぬめした液体を出しながら、薄着の上から身体を弄られている。

 まるで、ネストールの手が濡れて増えたようだ。間違いなく、勃ってしまう。
 粘液には何か毒でも入っているのだろうか。触れられた部分が熱を帯び、頭が回らなくなってくる。手足は動かないままだ。

「は、まさかな……」


 ◇


 ネストールは、普段の野営と同じように、セトの寝台を整えて待っていた。外が騒がしい。基地の広場で、武官が火を囲んで話しているところへ近づいた。

「隊長が戻れと言ったんだ。ここで待つべきだ」
「しかし……」
「隊長がいない今、俺たちだけで何ができる? あの人の統制がなければ動けないのは分かっているだろう」
「簡単に死ぬ人でもないですよ。ここに戻るまでに何かあったのは間違いないですが、探すにしても明るくなってからです」

 もう夜も深く、普段の討伐ならとっくに戻っている頃だった。武官が話していたことが本当なら、セトだけが現場に残ったのだろう。ネストールにできることは、朝にセトが戻るのを信じて眠るだけだった。


 ◇


 ネストールは居室に人の気配を感じ、目を開け身体を起こした。まだ陽は昇り始めたところで、薄暗い。

「悪い、起こしたな」
「セト様、ご無事で」
「……無事ではないかも。いや、今は特に何もないが、冴えているなら診てほしい」
「もちろんです、すぐに水を」
「ああ」

 セトが勢いよく脱いでいく。下穿きまで全て脱いだため、ネストールは目を見開いてしまった。
 ネストールに診てほしい部分なのだろうと気を入れ直し、灯りをかざすと、大事な局部には小さな黒い斑点がいくつもついているように見える。

「これは……、セト様、何をされたのです?」
「……言葉では説明しづらい。何かが這い回って、粘液でべたべたになって、針に刺されるような感覚と、吸われる感覚があった。毒が回る感じも、昂っていた時にはあったが、今は落ち着いてる。ネストールに触れられている時に感じる気分に近かった」

 そんな魔物がいるのかと、驚いている暇はない。とにかく、手当を急がなければ。

「っ……、ひとまず、解毒薬を」
「悪い」

 飲み水と薬の入った小瓶をセトに渡した。仁王立ちのまま、一気に飲み干すのを見届ける。相当苦いはずだが、さすが隊長、表情は変えなかった。

「慣れていて助かった。射精したら大人しくなって、その隙に核を潰せたからな」
「そうですか」

 寝台に上がらないのは、身体がべたついているからだ。ネストールは手早く手拭を水桶に浸し、絞った。

「違和感があればおっしゃってください」
「ああ」

 今回は珍しく、出血はあまりしていない。森の中の戦闘で、枝による擦り傷は出血のうちに入らない。局部を持ち上げ念入りに、裏側まで確認する。

「斑点があったのですが、消えましたね」
「解毒薬のおかげか」
「おそらく。もしくは拭き取ったことで落ちたのでしょう。針に刺されて吸われたとおっしゃいましたね」
「ん……、実際は分からない。頭は固定されて動けなかった。ただ、この前、ネストールが、その、舐めただろう? それに近くて、っく!」
「こんな風に、ですか?」

 魔物に射精させられたからか、身体を拭ってもセトは反応しなかった。手拭は乳首にも触れ、その際に陰茎が多少ぴくぴくと動いたものの、いつもの硬さには到底及ばない。

 セトは、立派な上官の血を持つ方だ。担当医官として、きちんと機能するのか、確かめる必要がある。そんなことが建前であることも、ネストールには自覚がある。

「ん、セト様?」

 セトの手が、ネストールの頭を掴んで、引き離した。

「せめて、座らせてくれないか」
「申し訳ありません、セト様。お疲れでしょう、眠られますか」
「いや、この状態では休めない。最後までしてくれ、ネストール」
「かしこまりました」

 寝台に腰掛けたセトの足の間に、気持ちが急いてしまったことを反省しながら、ネストールはしゃがんだ。
 セトはこの程度で怒るほど、短気ではない。年齢の割に落ち着いているし、上官としての冷静さも持っている。

 手と口を使って、再度丁寧にセトの局部を確認する。その間、セトの手は珍しくネストールの頭に添えられ、少し撫でるような動きすらある。段々と吐息が漏れ、セトが諦めるように寝台に背中を預けた。

「ネストール……」

 ネストールの頭にあった手を、セトは指を開いて伸ばしてくる。ネストールが指を絡めると、その大きな手で握り込まれた。

「う、あっ……」

 裏筋と睾丸を片手で大きく擦り、亀頭を舌で転がす。先走りの出が少なく、ネストールが唾液で汚していく。セトの手に力が入り、普段よりは鈍いが、感じられてはいるのは間違いない。

「……セト様」

 手を離す許可をもらうために、逸らされていた顔を見ようと声を掛けた。きっとセトにも、ネストールが何をするつもりなのか、伝わっている。

「ん……」

 両手で睾丸を軽く潰し、精子の移動を助けてやる。陰茎を包み上下に擦りながら、亀頭に唾液を垂らす。そして、片手で亀頭をすっぽり包んだ。

「ん、うっ……」

 ぎゅっと目を瞑り敷布を握るセトは、やはり普段よりずっと鈍い。強弱をつけながら、徐々に高めていく。
 この動きで攻め立てれば、普段なら我慢ならないとばかりに腰が浮き、押さえつけるように腹筋を揺らすのだ。

「あ、あっ、ネストール……!」

 褐色の腹部に、陰茎を向ける。

「無事に出ましたね。少し薄いですし勢いも足りませんが……、セト様?」

 さすがの隊長も、体力の限界だったらしい。穏やかな表情をしたセトは、すうすうと寝息を立てていた。


 ◇


 翌朝、セトを見た武官たちの安堵は想像以上だった。セトは何があってどうやって戻ったのかを話すことなく、上官にしかできない討伐だったと誤魔化した。

 ネストールはそばで聞き、正しく隊長らしい物言いだと思った。上官であれば、担当医官と性的発散ができる。その経験がなければ、セトは昨日の討伐を乗り切れなかったのだろう。

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