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<2>担当医官の調剤室

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 野営基地から王都に戻り、上層部への報告を終えた後、その足でネストールの調剤室へ向かった。
 武官棟にあるセトの居室で仮眠を取るか迷ったが、セトの部隊が次に駆り出されるのは少し先だと聞いた。その分、身体を整える余裕もある。

 上官の中でも隊長職には執務室がなく、将軍職の執務室で主に指示を受ける。個人の居室の寝台に担当医官を呼ぶことは許されておらず、隊長職の武官は医官棟へ出向かなければならない。
 調剤室は武官棟にある医務室とは異なり、医官棟にある。今までに、セトが立ち入ったことはなかった。

 部屋の番号を確認し、ネストールの調剤室に入ると、薬の匂いだろうか、何やら心地いい甘い香りが漂っている。光を通す薄い垂れ幕が引かれ、室内はほどよく明るい。

「ようこそおいでくださいました、セト様。こちらへどうぞ」

 ネストールに促され、傷を見せるために服を脱ぎ、下穿きのみ身に着けた状態で、寝台に身体を横たえる。段々と、腕や足から力が抜けていく。動かそうと思っても、動かない。

「っ、お前、何をした……!」
「お気付きにはなっていたでしょう、香油を焚いておきました。力が抜けて身体が楽になります」
「なっ……」

 ネストールが、セトの腕と足を寝台の外へ出し、柱に縛っていく。セトは隊長職に昇格できるほどの武官だが、全く力を入れられず、ネストールの成すがままだ。身体が言うことを聞かない。

「誰に何をしているのか、分かっているのか……?」
「セト様にはこの治療が合うと思いました。勘が当たってよかったです。失礼します」
「っ!」

 ネストールの手が、脇腹をなぞる。薬が効いていて身体は動かないが、くすぐったさに腰が浮くところだった。

「気持ちいいでしょう? 戦闘の後は、きちんと手当を受けないといけませんよ、セト様。まだ血が激っているはずです。私がお世話しますから、そのまま寝ていてください」
「貴様……っ」
「安心なさってください。上官の方々は皆、お気に入りの医官を囲っていますから。セト様にもその時が来たのです」
「っ……!」

 はっとして、微笑んでいるネストールに目を向けた。
 思い出してみれば、官位が上がるほど、野営での隊長と担当医官の組み合わせは固定だった。セトが昇格するまで所属していた部隊でも、隊長と担当医官はずっと変わっていなかった。

「年齢や戦闘経験で、その特別な敏感さが目覚め、対が分かると言われています。男であれば野営にも連れて行けますし、医官なので、身体の状況把握については専門ですからね。
 上層部は、隊長と医官の対を作るために、それぞれ見極めを行っています」

 混乱するセトには、言い返す言葉が何も思いつかなかった。


 ◇


 十八で隊長になったセトの身体は、二十六のネストールにとって魅力しかなかった。

 褐色で若々しく均整の取れた筋肉は、色白で細身のネストールにはなく、しかもまだ発達途上だ。セトが早くに隊長職へ就いた分、担当医官のネストールはその成長を手助けすることができる。

 性的にもまだまだ未熟で、女遊びもしたことがないのだろう。そんな暇があれば、この年で隊長職にはなれない。

 平の武官から隊長職に昇格するためには、年齢が十八を超えている必要がある。身体が魔物討伐の野営に耐えられることと、感情の制御が十分にできること、その両方を満たすのが十八だとされている。
 実際に任命されるのは早くても二十以降で、セトがその体躯に目を付けられ、出世街道を真っ直ぐ歩いてきたことは想像がついた。

「やはりご立派ですね、今日は昼間ですし、よく見えます」
「っ……」

 ネストールがそっと布越しに指を這わせると、すでに熱を持ったセトの陰茎がさらに質量を増した。

 こうなることは分かっていた。替えの下穿きの用意は当然ある。香油によって無抵抗のセトの下穿きを取り去ると、血管を浮き立たせ大きく反った陰茎が、ぴくぴくと動いた。触れてほしくてたまらないようだ。

「やはり、亀頭を擦られるのが一番悦いです?」
「っ、ん……」

 野営時は陽も暮れていて、手から伝わる感覚に頼る部分も大きかったが、今日は午後、明るい光が差している。これから与えられる快感を思い出しその羞恥も蘇っているのか、頬を染めながらも下唇を噛み、目には涙を溜めるセトの表情がよく見える。

 とっくに先走りを流して陰毛を濡らし、てらてらと光っている亀頭を撫でる。

「うっ……」

 まだ、そっと触れただけだが、セトは声を漏らした。

 ネストールの予想通り真っ赤に充血し、刺激されるのを望んで更に濡れてくる。陰茎の根本を支えつつ、もう片方では亀頭を全て露わにし、手のひらで撫でるようにゆっくりと擦り始めた。

 香油も効いていて、セトは全く身動きをしない。動かしにくいはずだが、口元と目元だけが変化する。

「う、んんっ……、あっ」

 亀頭が好みと分かれば、ネストールがまず試すのは、手首の捻りを使って、指で挟んだ雁首の辺りをぐるぐると刺激する動きだ。
 手のひらが当たり広がる先走りで更に滑りがよくなって、その分、セトが得る快感も強くなる。

「あっ……、ん、うあっ」

 撫で回した後、亀頭をそっと包み指で上下に擦れば、ちゅこちゅこと音が立つ。陰茎には香油も唾液も垂らしていないが、それほどに濡れているのだ。

 セトの反応は若さゆえに素直で、攻めがいがある。羞恥心はあるのだろうが、嬌声は我慢し切れていない。

「あっ……、んん、う、んうっ……」
「出したければ出していいのですよ、セト様。それが私の仕事ですから」

 ネストールが声を掛けると、セトは顔を逸らそうと力を入れたまま、思い出したかのように奥歯を噛み顔を歪ませる。
 すっかり息も上がり、胸筋が上下する。皺の寄った額や綺麗に割れた腹筋の筋に、汗が浮かぶ。形がはっきり分かる太腿も震え始める。

 手拭を絞るように陰茎を両手で優しく包み、馴染ませるために軽く捻った後、形に沿って上下させる。徐々にその速度を上げていく。

 若い身体を適切に刺激できれば、すぐに上り詰めてしまう。セトは、興奮や刺激をいなす方法をまだ知らないのだろう。経験が浅ければ浅いほど、素直だ。

 ましてネストールは、若い隊長の快感を育て逃がすように、医官としての訓練を受けてきた。当然、傷や怪我の手当は一通りこなすが、麻酔薬や媚薬に関して、ネストールより効果的な薬を調合する者はいない。

「っく……」

 セトの射精は長い方だろう。ネストールにそこまで経験があるわけではないが、体躯に比例して見た目で分かるほど、陰茎や陰嚢も大きい。やはり上官になれるだけあって、繁殖能力も高いのだろう。

 射精を一度終え、これで終わりだと、息を整えながら気を抜いているセトの、睾丸に触れる。

「っ!」
「まだ重さが残っていますね。続けて触れます」
「待てっ!」
「待ちませんよ、どこかで暴発するくらいなら、ここで出してください」

 片手で陰茎を、もう片方で睾丸から会陰のあたりを包み、ゆっくりと余韻を感じられるように滑らせると、吐息が漏れたと思えば唸り声も聞こえる。羞恥心に喘いでいるのだろうが、今はもう快楽に堕ちかけている。

 セトが、ネストールから離れられないと自覚するのは、いつになるだろうか。案外、早く訪れるかもしれない。上層部は、セトが十八になり隊長に任命できる日を、待ち望んでいたのだから。

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