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<1-2>担当医官の仕事

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「っ……」

 人差し指でつうっと、裏筋をなぞられる。くすぐったいとも異なる知らない感覚に、眉間に皺が寄り身体が強張る。膝が当たってしまっても、年上の医官は咎めてこなかった。

「セト様、他人に触れられるのは初めてです?」
「……ああ」
「そうですか」

 ネストールの親指が、再度ゆっくりと裏筋を這う。意識すればするほど、陰茎がぴくぴくと動いてしまう。
 相手も男で、セトがどんな状況にあるのが、容易に分かるだろう。口元を手で覆い、声が出ないよう息を止めるが、限界もある。

「っ……」

 息を吸った隙に、ネストールの指が亀頭の先にある口に触れた。先走りが出ているのだろう、摩擦感がなく、ネストールの指は滑っている。

「違和感はありませんか」
「う、ああ、平気だ……」

 目に涙が溜まってくる。隊長として受け入れるべき、担当医官の厚意による奉仕だとしても、その羞恥に耐えられるかは別だ。

「野営ではあまり時間を掛けられませんから、少し強めますよ」
「うっ、あっ?」

 両手を陰茎全体に添わされるだけでなく、大きく上下に動かされる。拳を握り目をぎゅっと閉じて快感から逃げようとするも、ぐちゅぐちゅと耳に入る卑猥な音を防ぐ手段はない。腰が浮くのを抑えようと、腹筋に力を入れるが上手くいかない。

「出そうです?」
「っ、は……」

 セトはネストールの問いに答えず、口元を手で塞ぎぐっと顔を逸らした。陰茎への刺激は速さを増し、さすが医官と言うべきか、恐ろしいほどにセトの身体に響いた。

「いいんですよ、我慢はなさらないでください」
「う、あっ…、っく……」

 いくら耐えても、ネストールはセトが射精を迎えるまで動きを止めなかっただろう。担当医官としての責務を十二分に意識し、セトに触れたのが伝わってきた。

 数回の放出のたび、身体がぶるっと震える。その間も、ネストールの手はセトの陰茎を覆ったまま、ゆっくりとなぞっていた。

 自慰をしたのも思い出すことが難しいほどに前で、相当溜まっていたはずだ。どんな顔をすればいいのか分からず、ネストールを見ることはできなかった。

「ああ、やはりお若いだけありますね。だいぶ飛びました」
「……悪い」
「いえ、これでよいのです。ご自身でもあまりされてませんね?」
「……ああ」
「いきなりで戸惑ったでしょうが、これからは私がお手伝いできます、セト様」

 ネストールはそう言いながら、新しい手拭でセトの身体を軽く拭った。その仕草は仕事そのもので、不自然さは見受けられなかった。

 セトが身体を起こし新しい下穿きを身に着ける間、ネストールは、飲み水として用意された水差しから汲んだ水に、小瓶から何かを垂らしている。

「魔物を倒してからまだ数時間、身体は興奮状態にあるはずです。気を落ち着ける薬を入れました。寝つきやすくなります」
「ああ、悪い」
「いいえ、私の仕事ですので」

 一度身体を起こし、手渡された杯をゆっくりと口に含んだ。味に特別な変化はなく、一気に飲み干した。
 初めて人前で射精をした事実を飲み込めないまま、杯を返す。戦闘の疲れもあったのか、ネストールに背を向けるとすぐ眠りに落ちた。


 ◇


 翌朝、ネストールに起こされたセトは、何事もなかったように話すネストールにまたも困惑した。上官の担当医官であれば、昨夜のことなど普通だと割り切ってしまう方が楽なのだろうか。

「こちらに本日の衣服をご用意しております。傷に障るようでしたらおっしゃってください」
「ああ」

 素直に受け取り、畳まれて積まれた順に上から身に着けた。

「粥を召し上がってください。身体の内部からも治癒力を高めることができるよう、薬を足しております」
「分かった」

 器と匙が用意され、温かいうちにさっと食べてしまう。

「陽が上がりきる前には、王都に向けてここを出る予定です」
「ああ、何から何まで悪いな」
「いえ、これが私の仕事ですから、遠慮なく何でもお申し付けください」

 担当医官は野営時、上官のあらゆる世話をする。それは、手当だけでなく食事や出発準備なども含まれる。前回の野営まで平の武官だったセトが慣れるには、まだ時間が必要だった。

「それから、セト様。王都に戻ってから、私の調剤室に来ていただけますか。できれば午後に」
「医務室じゃないのか」

 担当医官になれるほど出世した医官には、個人に調剤室が与えられると聞く。平の医官は医務室を使い、傷を負いやすい平の武官の手当をする。当然セトも、医務室には馴染みがあった。

「傷の状態確認、薬の塗り直し、包帯の巻き直しを行います。医官の勘ですが、昨晩と同じ事が起きると思います」
「う……」

 ネストールの強く熱を帯びた青い瞳に、セトは上官だが逆らえなかった。経験豊富な医官の言うことは聞いておいた方がいい。

 本能を司る性的快感を握られ、セトに選択肢はなかった。

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