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第二篇
25.天月と宵、君影※
しおりを挟む水縹の間に留まった天月は、世話係の東風・南風に片付けをしてもらってから、宵を呼ぶように頼んだ。一番手の願いは、ここ蒼玉宮ならニンゲンでも叶えてもらいやすい。
「……宵さん」
「ん、どうした?」
新しく用意された敷物に腰を下ろした宵の片膝の上、腕の中にすっぽり収まりに行った。翠月と緑翠を意識してしまって、すでに勃ち上がっているのも自覚があるし、宵の脇腹に当たっているだろう。
気付いたと知らせるように片眉を上げた宵が、天月を裏返した。天月の背中全体に鍛えられた宵の腹が密着し、その体温から身体の昂りを感じる。首に口付けされぎゅっと抱きしめられ、それだけでも吐息が漏れてしまう。君影との練習では攻めをする天月だが、受けの方が好みだ。
「はあ、んっ…」
「俺が分かったのは声だけだが、緑翠さまと翠月、気持ちよさそうだったな」
「あっ…」
着物の合わせ目からごつごつとした大きな熱い手が入れられ、天月の乳首に触れてくる。
「ふう…、んうっ」
もう片方の大きな手のひらで、竿を着物の上から刺激されれば、天月は震え始めてしまう。
「あっ、うあ…、よい、さっ!」
「いいぞ、果てても」
(いつもより、早いっ…!)
「んんっぐっ、…はっ、ああっ!」
もう、宵とは何度も寝ている。感じるところは、知り尽くされている。もちろん、妖力の受け渡しがあるからなのは分かっているが、それ以外にも理由が欲しくなってしまった。自覚してからは余計に、達するのが早くなった気がする。
(宵さんは、僕が共寝に慣れたからだと思ってるし、伝えることはできないけど……、想うだけなら、許されるよね?)
汚れた着物を脱ぐために一度腕を解かれ、流れのままに脱がされる。途中から天月が自分で脱ぎ始めると、宵はあっという間に全裸になっていた。
「こっちを向いて、膝立ちしてごらん」
「…あ、んんっ」
香油をまとった指が入り、孔を広げていく。竿の付け根に内から触れられ、宵の肩に額を当てた天月は堕ちていく。
「あっ、…うう、ふっ、んん」
「中でも一度、果てるか?」
天月はいつも、宵からの刺激に震える身体を止められない。翠月と緑翠の床を見たせいで、今日は特に我慢できない。
「う…、なんかっ、きょうっ、へんっ!」
「そうだな」
「うっ、ああっ、よいさ、んんっ!」
竿をぎゅっと握られ吐精はしなかったが、身体の震えは大きく、しかも止まらない。中からの刺激で果てた感覚はあるものの、宵は休ませてくれない。
「天月、おいで」
天月は宵に背中を向け、床に手を付きながら、ゆっくり沈めていった。宵は座ったまま、天月の挿入に任せてくれる。御客でもなかなか見ない、大きくて太い竿が入ってくるのが、毎回たまらない。
「ん、はあっ…、ああっ」
「いい子だ、天月。全部入った」
その言葉を天月が認識したのとほぼ同時に、宵が動き出す。その刺激から与えられる快感に、天月は上半身を反って逃げようとするが、宵の手は天月の腰から離れず、離れることを許してはくれない。
(ほんとに、今日、変だ…!)
「んあっ、あっ、うっ、んあっ」
「は…、気持ちいいな、天月」
「ん、ん、あっ」
口を閉じようとしても、嬌声が漏れる。身体の力もとっくに抜け、肘を立てて支えることも難しくなっていた。
大柄な宵が、天月の腹と太腿を抱え込み、天月の手が床から離れる。天月は後ろに手をやり、縋るように宵の腕にしがみつくが、律動が弱まることはない。宵の腕は、天月が距離を取ろうとするのを許さない。天月は深さを制御できず、宵から与えられる快感に身に任せることしかできない。
(奥が…っ、深いっ!)
「あっ、よいっ、さっ」
「ん?」
「ふかっ、んん…、つよっ、あっ、んん」
「いいぞ、感じるんだろ?」
「なに、へんなのくるっ、んっ、ああっ!」
宵の腕の中で思い切り腰を反り、天月は畳や机を汚した。そっと寝かされた後、宵が跨ってくるのを受け入れる。抵抗する余裕もなく、ただ身体を突き抜ける快感が止まらない。
「あっ、んんっ」
「天月、平気か?」
「んっ」
宵が、天月の足を上げ孔内へと進みながら、頬に口を寄せてくる。天月は宵に笑みを返して、応える。妖力を受け取る行為を好んでいるのは、宵も分かっている。
「今日は、どっちがいい? 激しいのと、穏やかなの」
「宵さんとなら、どっちでも」
「嬉しいことを言うね」
「んあっ、よいさあっ!」
「止まれないぞ、煽った天月が悪い」
「あっ、はっ、はっ、よいさっ」
「こうすれば、もっといいか?」
宵が腰を振りながら、天月の竿を握り上下に動かしてくる。
「あっ、よいさっ! だめ、だめ、りょうほっ、あっああ!」
耐えることもできず、果てて身体が震える天月には、優しく微笑む欲情した宵が映ったが、すぐに目線は逸らされた。
「次で最後にしてやりたいが……、君影、いるんだろう?」
宵の目線を追うと、襖が少し開いて、君影が小さく丸まっているのが見える。
「……すみません」
「あれを見た後だ、火照っていてもおかしくない。天月、いいか?」
「…うん」
(本当は、嫌だけど)
天月の孔から、宵がいなくなる。君影に嫉妬するのは間違っていると、頭では分かっているのに。
これも、蒼玉宮の宮番・宵の仕事のひとつである。天月も上位芸者のひとりで、宮番が芸者の均衡を取る必要があるのも理解している。他の宮では行われていないが、ここは男色で、例外も多く芸者同士での発散が認められている。
「君影、脱いでみろ」
「あ、あの…」
「ひとりで、天月の声を聞いて馴染ませてたんだな。膝立ちしてこっちへ向けて」
「本当にすみません…、ひあっ!」
宵が背中側から君影を支え、さっきまで天月に触れていた太い指が、君影の孔と乳首に触れる。先走りで光る君影の竿も目に入り、天月は君影の股の間に顔を近付けた。舐めて果てさせて、君影を早く追い出したい。
「あっ、もう、ちかっ…、うっ」
そのまま口で受け止め、飲み込む。相変わらず苦いが、この行為自体は君影に限らず御客にもするから、慣れたものだ。
「すぐ果てちゃったね、君影」
「天月…、どこ触って…」
「袋、まだ重たいね」
「あっ、ちょっ、てん…、んあっ!」
袋に舌を這わせ、中に入った珠を転がしてやる。君影は天月と体格が似ているから、床見世も似ている。見世では、大柄な御客に奉仕することも多いはずで、触れられたとしても宵ほど優しくはない。だから、君影が発情期を迎えると、天月が相手をするのだ。御客とは違う攻め方で、君影を満足させられるから。
ひとしきり弄んだ天月は、また竿に戻り形を確認するように這わせた後、その先端を攻める。その隙に、宵が突き立て、中から攻める。
(宵さんのことだから、君影が果てるだけで終わるよね)
「君影…、気持ちいいか?」
「あっ、んっ、もっ、ん、んんっ!」
「……やっぱり、体力つけなきゃね、君影」
君影は、天月よりも早く快楽に堕ちてしまう。普段ならひとりからの攻めを受ける君影が、今晩は宵からも受けていた。すぐに意識を飛ばしてしまうのも、無理はないのかもしれない。宵が君影をゆっくりと寝かせ、天月に向き直った。
「天月、忘れてないな?」
「…うん」
天月は背中を敷物に預け、股を宵に向けて開いた。
(緑翠さまと翠月を見ても、宵さんは変わらない。僕は、こうやって守ってくれる宵さんが好きで堪らないのに…)
そんな不安を感じたのは一瞬で、すぐに考える間もないほど容赦なく突かれ、何度か果てた後に意識を失った。
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