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<番外1>※
しおりを挟む王都郊外の屋敷に移り住んでしばらくが経った。セオドアが隠密として動いているのは変わらず、主な仕事は違反の摘発だ。ノアと住むようになってからは特に、個人邸での性奴隷を解放することに重点を置いている。
セオドアの私邸なこともあり、寝室は様々な物品が用意されている。その多くが、ノアと楽しむための物だ。
一緒に湯浴みをした後は、ふたりともが裸のままベッドへと戻り、身体を重ねることがほとんどだ。セオドアが相当に疲れていない限り、ノアはセオドアと一緒に入った風呂で、すっかり準備を終えられている。
「保管期限の切れた押収品なんだが」
「小瓶と輪っか……?」
「飲むと欲が強くなって感度が上がるらしい。こっちは根元に嵌めて、出せなくするらしい」
「…………」
「拘束した奴隷に飲ませて、触れてほしくて出したくて、どうしようもない状態を作って犯すんだろう。本人の意思とは関係なく。これが見つかったことで、女性でだけでなく男性も性奴隷として扱われていた疑いが出た」
「……セオにはいつも触れられたいよ」
「ありがとう、ノア」
ノアは、セオドアに犯されたい。その気持ちがあるだけで、快感が増えるのはなんとなく分かっていた。いつもと同じベッドも、セオドアと身体を重ねる時は、毎夜雰囲気が違う。セオドアが飽きないようにといろいろ用意してくれた結果だ。
押収品を試そうとする時のセオドアは、なんとも言い表しにくい、好奇心と心配が混ざった顔をしている。奴隷側の尊厳を思って、ノアの気持ちを考えてくれる。王族の一員なのに、末端の生活をよく見てくれていると、ノアは侍女をやるようになってから日々実感していた。
「これ、痛くない?」
「大丈夫」
まだ勃っていない根元に、セオドアによって輪をつけられたノアが、目を伏せて自身を見つめている。これがあるとどういった感覚に陥るのか、セオドアにも分からない。
奴隷経験があって自由がなかったからなのか、ノアは試すことに抵抗がない。セオドアが言ったことでも、嫌なら拒否していいと、この屋敷に来てからも何度も伝えた。
「……ゆっくり飲んで。薬に違いはないから」
セオドアから小瓶を受け取って、ノアが味を確かめるように口に流し込んだ。美味しいとは思えないものの、ひたすら甘い味で、飲めなくはなかった。空になった瓶を受け取ったセオドアは、ノアを引き寄せて口づけた。
「甘いな……」
「ね、なんかあんまり知らない味」
「飲みやすくするために、蜂蜜を混ぜているんだろう。手首、縛っても?」
「うん」
ベッドの柱には、ノアを拘束するための手枷がついたままになっている。性奴隷とされる人が枷をつけられることが多いため、こういった実験をするためにつけたものだ。これがなくても、ノアはセオドアの実験から得られる快感に溺れていた。手を封じられると何もできない状態で、余計にセオドアからの快感を得ることしか考えられなくなる。
セオドアは、そんなノアがセオドアを求めて縋ってくるのが好きだ。ほぼ毎夜ノアを抱いて、互いのあたたかさを感じ、眠りにつく。幼い頃から隠密に就くための教育を受けたセオドアは、誰かと過ごすことを極端に避けており、王族でありながらもその権力にすら頼られる経験も少なかったのだ。ノアは、セオドアを精神的にも満たしてくれる。
小瓶の液体の効果が出るのを待つために、ノアを残して少しの間ベッドから離れた。タオルと湯桶を持って戻ると、息を上げつつ足を擦り合わせて快感を得ようとする、ノアがいた。
「セオ……」
「うん?」
「身体が、熱い……」
「うん」
セオドアが、ゆっくりとベッドに座り、ノアの唇を啄んだ。
「セオ……」
「薬、効いてきてるんだね」
「んっ……」
頬を撫でてやると、ノアはそれだけでも気持ちよさそうに目を閉じる。セオドアは敏感なノアに触れないよう、横に寝転んだ。
ノアは、普段からセオドアに触れられるのがとにかく好きだ。果てるかどうかを問わずとも、気持ちよさそうに身体を預ける。足は拘束されていないから、横を向けばセオドアの身体に自身を当てられる。我慢できず、セオドアの身体に腰を押し付け、揺らし始めてしまう。
「ノア」
「んん……」
触れてあげないと辛いだろうとセオドアは思うが、これは押収品で、奴隷側がどれほど無抵抗になってしまうのかを見る実験でもある。いきなり触れてやることはできない。保護した元奴隷の供述に近い形で、ノアを攻める。そのためには、まず脇腹に指を這わせる。
「んあっ……!」
それだけでも腰が浮いてしまうノアは、いつも以上に敏感で、薬の効果はてきめんなのだろう。
「セオ、セオ……っ」
「気持ちいい?」
「触って、セオ」
セオドアの指は、ノアの胸の突起周りをくるくると回るだけで、敏感なところには触れない。ノアはきゅっと力を込めて堪えようとするも、腹や尻の疼きは何も変わらない。
「セオっ……!」
「ん……」
ノアの口は、セオドアに塞がれる。それだけでも涙を流すほど、十分にノアは溶けているが、身体はより強い刺激を欲しがった。
セオドアは急くノアとは反対に、じっくり焦らした。突起には触れず、周囲には触れ意識させたまま、舌で涙を舐めとって耳や首筋にも這っていく。ノアの震えや声で、普段より悦いのは伝わってくる。
「ああっ、セオっ、セオ!」
「ん……」
「あっ、触ってほし……」
「もう少し、我慢して」
「あっ、んんんっ、だめ、挿れてよ、セオ……」
「うん、辛いね」
ノアも、セオドアが仕事として試しているのは知っている。それでも、耐えるのが厳しくなってくる。
「ノアのここ、さっきからパクパクしてる。出したいね」
セオドアの指が、急にノア自身に触れて、出口を押してくる。ただ、それだけなのに。握られてもいないのに。
「ああっ! セオ、セオっ、……っ!!」
ノアの腰が大きく浮き、身体の動きで果てたのがセオドアには分かった。根本につけた輪のせいで出せず、中途半端で苦しいのだろう。ノアの腰がまだ揺れている。
「出したい、出したい、セオっ」
「だめだよ……、もうちょっと」
「うんん……」
セオドアが、唸るノアの上半身を舐める。ノアの好きな、感度のいいところに生暖かい舌は来ない。その度にノアは身体を捻るが、何の抵抗にも快感にもならない。勃ち上がったノア自身にはセオドアの手が触れていて、ゆっくりとしごいてくれる。先端を中心に器用な指で攻められれば、もう一度果てる瞬間はすぐやってきた。
セオドアは、息を整えるノアの頭を撫でてやった。押収品を使った実験でなければ、とっくに突き立てているほどに、ノアは乱れていた。
「……ノア、よく頑張ったね」
セオドアが、根本につけた輪を外した。手枷も外す。刺激を求めてかなり動いていたし、跡が心配だったが、少し赤いだけで後には残らないだろう。足を持ち上げると、真っ赤になって待ち望んだノアの孔が見える。
「ここ、欲しがってる」
「んんっ、セオ……」
「うん、お待たせ。でもゆっくりする。痛くないようにね」
セオドアが先端を沈め、少しずつ奥へと進む。指で慣らす行為を省略したものの、普段から使われているそこは、すっかり待ち望んで、セオドアを受け入れる。
「ノア……、すごく熱くて柔らかい。ごめん、感じ過ぎてるね」
ノアは首を横に大きく振った。それが、セオドアの仕事の役に立つなら、ノアは嬉しいのだ。奥にセオドア自身が当たって、ノアの身体の震えがとまらない。早く、もっと強い刺激が欲しい。腰が勝手に揺れてしまう。
「ノア、まだだよ。馴染ませないと」
「んん……」
唇を寄せただけで落ち着くものではないのも、分かっている。抽送を始めると、ノアはセオドアを締め付けて離さない。
「ノア……」
「ああっ、セオ、気持ちいい……!」
「うん、僕も」
「セオ、セオ!!」
「っ……」
ノアが、果ててしまう。あれだけ我慢させたのだから、早くて当然だ。そして、ほぼ同時に、セオドアも放出した。快感を求め暴れるようなノアを見続け、セオドア自身も耐えていたのだ。
「あ……、セオ」
「ん、待って、ノア」
ノアが強請り、その手はセオドア自身を握って動かしてくる。果ててすぐ、感覚が一番敏感な時に、強い刺激がセオドアの頭を突き抜けてくる。当然、再度勃ち上がってくる。
「ノア、待って、ノアっ!」
「挿れて、セオ……」
ノアの手が離れ、背を見せ尻を突き出してくる。恥ずかしがらずに出せるほど、薬の効果が強いのだ。
煽られたセオドアは、ノアの希望通り再度自身を沈めた。ノアとは気持ちが通じ合っているとは言え、ここまでの快感を引き出すものであるなら、奴隷に抵抗する手段はないだろう。残った少しの理性で考えながら腰を振り、セオドアが再度果てた時、ノアは気を失っていた。
◇
「おはよう、ノア」
「ん……」
「身体はどう? 痛いところは?」
「ううん、平気」
「しんどかったよね、ごめんね」
「いい。オレにしかできない仕事だし」
「そう思ってくれるのは嬉しいけど、断ったって構わないんだ」
「分かってるよ、大丈夫」
ノアがセオドアの口を奪った。元奴隷だったことは事実だが、少なくともこの私室では対等で、ノアは心地良く日常を過ごしている。それはずっと変わっていなかった。
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