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後日譚:エピローグにかえて

22.ふたりの旅行 後 ※

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「ねえ、ルーク」
「うん?」
「今日は、一緒に入ってくれる?」

 主寝室へ入り、風呂の準備をしようとひとまずジャケットをハンガーに掛けたところで、そう言われた。あざとすぎるが、悔しいほど可愛い。今までずっと、一緒に入ることは避けてきた。どうしても、我慢できる気がしなかったのだ。

「…その頼み方、ずるいの分かってるよね」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど…」
「今更だよ。終わってからまともに動けることなんてないもん」
「煽らないで」

 ミアの腰を引き寄せ、ぐっと身体を押し付ける。すでに硬さを持ち始めているのが伝わったのか、ミアの頬や耳、首筋が一気に赤く染まる。

「……もう、そんなに?」
「ミアが驚くなら、顔には出てなかったんだね」

 声が低くなっただろうが、ミアには関係がないだろう。ミアはルークの首に腕を回すと、そのまま唇をつけてきた。ちゅっと音を立てて、離れる。

「ずっと、我慢してるの?」
「馬車の中はふたりきりだったし、割と手が出そうだった。カフェでもそう。暴走してからは、いつもこんな感じ」
「あのね…」

 ミアのワンピースの裾をまくり上げ、脱がせてしまう。触れるだけでもすべすべと心地いい背中や肩を撫でて、その肌に口を付けつつ、ミアの言葉を待った。

「今日ずっと、手をぎゅってしてくれてたから…、なんとなくそんな気はしてたの。ルークって、私が人前に出るの好きじゃないし」
「分かってたんだ?」

 ミアを力いっぱい抱き締めると、シャツにミアの手が入ってきて、背中に触れられた。急な感覚に思わず身体を反ってしまったが、ミアは気に留めず、ルークの衣服を脱がし始める。

「口にするのは嫌がるだろうなって思ってたんだけど、辛くはない?」
「辛…、いわけではないかな。自制するべき場所は分かってるつもり」
「だから、夜はいつもああなるんだ?」
「…『いつも』だと、認めたくはない」

 ミアの下着を取って、ルークの下着もミアに取られて、互いに何も身に着けていない。いつもなら、転移魔術でベッドの上に下りる場面だ。

「ひゃっ」
「たぶん、魔術を使ったら怒られるんだよ」

 軽い身体をそっと持ち上げ、浴室へと運んだ。オルディスから、魔術を禁止されたわけではないが、セントレ王国のウィンダム公爵家として、他国での振る舞いには気を付けるよう、しつこく言われたのが頭に残っている。名目上は新婚旅行で、できる限り小言は避けたい。

 浴室の蛇口には魔術道具が設置され、捻れば湯が出る仕組みになっていた。普段、魔術で湯を沸かすため、実際に魔術道具を使うのは初めてだ。浴槽に湯が張られていくのを見て、隣で感心していたミアの唇を奪った。触れるだけの軽いものではなく、歯列をなぞり舌を追い回して口内を荒らしていく。

「ミア…」
「んっ」

 もうとっくに、挿入できるほど滾っているのも伝わっているだろうが、一旦身体を離す。ミアの足元から順に湯を掛け、頭にもゆっくりと掛けた。石鹸を手に取り泡立て、髪を洗い邪魔にならないようまとめ、さらに手を進めていく。

 白い肌に白い泡を滑らせる。普段と異なるその刺激に、ミアが身体を捩ってくるのを抱き締める。

「ねえ、ルーク…」
「うん、分かるよ。洗い終わるまでは頑張って」
「んん…」

 ルークの腕の中で滑るミアの身体は、無意識だろうがルーク自身に直接当たってくる。ぎゅっと抱えていても、滑ってしまう。胸の頂きや足の間もなんとか洗って、足先まで泡で覆う。ミアもとっくに感じていて、泡が流れていくほどに蜜が溢れている。

「んっ?」

 急にミアが抱きついてきたかと思えば、背中を撫でられる。

「ああ、ミア、僕座るよ?」
「うん」

 石鹸と背中をミアに預けた。目を閉じると頭から湯を掛けられ、髪から順に洗われていく。首筋や背中に這うミアの手に、身体を震わせずに耐えることは不可能だった。

「ん、ミア……、っ!」

 後ろから抱きつかれたと思えば、その手は胸をなぞり、突起に触れた。ルークの身体には、ミアを洗っていたときの泡が残っていて、ミアの助けになってしまう。

「っ、あっ……」

 ミアの指が数度突起を掠めたあと、だんだんと下へ伸びていく。ミアのしたいことが分からないほど、ルークは鈍くない。

「わっ…」
「だめだって、ミア」

 興奮しきったルーク自身に、ミアの指が触れた。洗うことを目的にしているのもあって、少し撫でられる。当然、それだけでも声が漏れそうになる。ルークが下唇を噛んでいる間、ミアの手は形を確認するように握って、すぐ離れた。目を細め呼吸を整えつつミアを見ると、座ったままのルークの膝に乗ってきた。

「挿れていい?」
「痛くないならね」
「番に、痛さなんてないよ」
「まあ…」

 下半身についた泡を軽く流すと、ミアが蜜口にルークの先端を当て、焦れていたのだろう、勢いよく腰を下ろしてきた。

「あ、あああっ!」
「だめ、ミア。声は抑えて」
「ん、あ、むりっ、んん」

 例えば王宮内客室であれば、いつも結界を張っていた。魔術が使えないと、こんなにも不便なのか。

「頑張って。聞かれたくないんだよ」
「わかっ、てる…っ!」

(くっ、……っ!)

 ミアの腰から背中を支え、もう片方の親指でぴんと主張する突起を擦る。泡でよく滑り、いつもよりも力を加えこりこりと押し込む。ルークはミアの動きに合わせるだけで、特に自ら律動してはいないが、ミアはそれでも気持ちよさそうに顔を仰け反る。

「あっ、んん、ルークっ」
「いきそう?」
「ん、んんっ」
「口、押さえてて」

 ミアが両手で口を覆ったのを見てから、ミアの背中側から肩に回した手に力を込め、下から突き上げた。案の定ミアからは嬌声が漏れるが、普段よりは小さい。耐えているぶん、蜜壷が締まっている気もする。

「んっ、ああっ!」
「っ…、ミア…」

 震える手の甲に口を寄せると、ミアが抱きついて返してくれる。まだまだ足りないことも、硬さが緩まない自身を飲み込んだままのミアには、感じ取れているはずだ。

「ミア、立って」
「うん?」

 一度引き抜き、壁に掛かった鏡の前にミアを寄せ、手をつかせた。臀部を突き出させたあと、割れ目に擦り付けながら、その小さな顎を手で覆った。

「息、苦しくない?」
「ん」
「挿れるね」

 ミアの腰を撫でながら、最奥を狙ってゆっくりと押し入った。ミアは震えながら嬌声を我慢するのに精一杯で、ルークのなすがままだ。

「んっ、んんっ」
「はあ…、ミア、気持ちいいね」
「んっ、んっ!」

 頷き返すミアが十二分に感じているのも、漏れ出した魔力で分かる。魔術を使わないことに気を向けすぎていて、交わりで漂った魔力は他人にも感知できるのではないかと思い当たったが、もう遅い。今更、引き返せない。

 ぐちゅっと割れ目が音を立てるのを聞きながら、ミアの反応を楽しむ。上半身を倒しミアと密着して、胸を揉んでみる。突起を摘めば、蜜壷がよく締まる。激しく打ちつけて、奥を苛めてもいいが、それではミアの嬌声が響き渡ってしまう。たまにはゆっくり高め合うことがあってもいいだろう。


 ☆


「ほんと、ごめんね。声、我慢するもの疲れるよね」

 ルークなりに、落ち着いた交わりを意識したつもりだった。結果的に、ミアの快感は長引いて、いつもどおり腰が抜け立てなくなってしまった。

「ううん、いいの。この役目は私にしかできないから」
「ミア…、だめだよ、止められなくなる」
「うん、分かってる」

 魔力暴走を起こしてから、セントレ王国に帰ってきてからは緊張が解け安心していることもあるのか、困ったことに欲が制御しにくい。ルークにとって幸いなのは、交わりの最中にどれだけ魔力を放出しようと、番のミアが中和できる。微笑むミアの表情を見られるのも、満足感が増す。つい、甘えてしまう。

「…もう一回だけ、いい?」
「うん。あ、でもベッドがいい」

 ミアをタオルで包み水気を取ったあと、ゆっくりと持ち上げた。ベッドに下ろすとすぐ、全裸のミアを組み敷いた。


 ☆


「気持ちよかった?」
「うん…」
「いっぱい歩いて食べて、星空も見て、いっぱいいって、眠たいね」
「ん……」

 この幸せを続けるためにルークにできるのは、その力を効果的に使うことだけだ。

「おやすみ、ミア。また明日」
「うん、おやすみなさい」

 頬に触れながら額にキスを落とし離れると、ミアは穏やかに寝息を立てていた。 
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