上 下
99 / 103
後日譚:エピローグにかえて

18.夜会後の王宮内客室にて 前 ※

しおりを挟む
 夜会後、すっかり定番となった王宮内客室で、身を清めてナイトウェアを羽織っただけのルークが先にベッドに寝転んだ。夜会での様子から、今日のミアは攻めてくるだろう。ルークも貴族からの視線に気付いていないわけではないし、ミアがルークの袖を握りしめていたのも分かっていた。

 ルークの腰に乗り、上半身を倒して密着してくるミアは、普段より少しあたたかい。すでに、気分が高ぶっているのだろう。口づけはもちろん、舌を絡められ追い回されたあと、耳や首筋もいいように舐められる。ナイトウェアは腕を通しただけで、前を留めてはいない。どうせ、すぐに脱がされる。

「…んっ」

 特別、声を我慢しているわけではないが、男側があまり喘ぐのも恥ずかしい。もちろん結界は張っているし、ミアにしか聞かれないものではあるが、できるだけ出したくはない。感じているのがあまり伝わってほしくなくて、魔力放出も自制する。

 鎖骨から胸へとミアの舌が降りていき、頂きを攻めてくる。男でもそこが感じるのだと気付いたときには、もうミアは攻め方を知っていた。当然だろう、ミアはルークの真似をしているのだから。

 ミアの攻めに息が上がってくる。ミアの頭を撫でたり、胸の膨らみに手を伸ばして揉んでみたり。ミアはナイトドレスをしっかり着ていて、まだ布越しではあるが、ピンと主張した頂きを弾いたり摘まんだりもしてあげる。びくんと身体の反応を止められないようだが、それでもルークを攻めることも止めない。

「…ミア、そんなに攻めたい?」

 散々ルークの上半身を舐めていたミアは、ナイトウェアの中で大きくなったルーク自身に、布越しではあるが秘部を擦りつけている。指先で弄びながら、ミアの心情を探る。

「…みんな、ルークを見てた」
「うん、んっ!」
「まだ出さないでね」

 頂きを両方同時に弾かれた。注意が逸れているときにされるのがいいことも、とっくに知られている。自身はミアの秘部に擦られ続けていて、刺激は十分すぎる。ルークのナイトウェアはどちらのもので濡れているのか分からない。ミアの準備も整っているだろう。

「…ミア、僕もう近いよ?」
「うん」

 ミアがさらに降り、ルークの服を剥ぎ取ってしまう。締め付けがなくなった自身が解放され、ミアが先走りを馴染ませながらゆっくり手を這わせる。

「はあ……」

 ルークと目を合わせてくるミアは、心の底から楽しそうに微笑んでいて、押し返すことができない。ミアのペースで唇を奪われ、返している途中で離れていったその口元が、ルーク自身に触れ、啄んでいく。

「んっ…、あっ…」

 やがて啄むだけではなく、舌が形に沿って下から上へとなぞった。流れのままに先端を咥えられ、あたたかい舌が動く。添えられた手が強めに握られ、ルーク自身を刺激していく。少し前からずっと耐えているが、ミアは果てさせようとしているし、ルークも我慢の限界だった。

「…ミア」
「んん」
「…っん、は…」

 名前を呼ばれて少し構えたミアが、ルークを受け止める。交わり自体はひさびさではないし、そこまで量が出るとは思っていなかったが、ミアの口から溢れてしまうほどだったらしい。

 出してしまえば、魔力を隠せはしない。とっくに漏れ出ているミアの魔力と中和して、戻ってくるのが見える。

「あ、ミア…」

 タオルを差し出す前に、ミアは当然のようにそれを飲み込み、口から溢れた分も舌や手で絡め取って口へ運ぶ。それからまた、ルークの足の間に顔を近づけて、綺麗に舐めとってくれる。息を整えているのに、また立ち上がってくる。ミアは、それを狙ってやっているように見えるが。

「……ミア」

 少し低くて、掠れた声が出た。ミアの手を止めるには十分だったようだ。その隙に、ミアを引き寄せ身体を捻った。ミアを見下ろすと、満足そうに微笑んでくる。

「…ミア、なんでそんなに攻めたい?」

 屋敷でも、当然のように寝室を共にしている。たまに遊んでもらうことはあっても、基本はルークが攻める側だ。今日はミアがとにかく積極的に攻めたがった。良い意味でも悪い意味でも、この部屋の特別さが、ミアをここまで攻めに転じさせるのだろうか。

 今日の夜会ではずっと一緒にいたし、ずっとミアの手を預かっていた。特別寂しくさせたつもりもない。ルークには、思い当たる理由がない。

「また、何かされたの?」
「ううん、何も」
「それなら、どうして?」

 ミアを覆うように抱きしめ、額にキスをしながら髪を撫でる。口角を上げるミアにほっとするものの、完全には分からない。もう、すれ違いたくはない。

 口を奪うと話せない。頬にとどめ、このまま攻めてしまいたい気持ちを抑える。違和感を感じられたのは、進歩だ。解消しておかないと、後悔することになる。

「……あの場にいた女性がみんな、ルークを見てたから」
「うん?」
「ルークを見るのは私だけでいい」

 オッドアイを晒して貴族の前に出るのは初めてだったし、好奇の目を向けられるのはおかしくない。ルークはその場では気付かなかったが、ミアの少し怒ったような表情に、自分の顔が整っていて、それを任務でも多少活かしていたことを思い出す。

 結婚してからそれなりの時間が経って、新婚とは呼ばれなくなり、ルークの暴走を一緒に乗り越えもした。今までになかった休暇を楽しみながら、ミアに最大限の愛情を向けているつもりだし、ルークをミアから奪い取ろうなんて、どんな女性でも絶対にできないのだが。

「…嫉妬したんだ?」

 すでに興奮していて赤い頬が、さらに赤くなったように見えた。唇を重ねる。自分の濁液の苦さにも慣れた。下唇に少し吸いついてもみる。顔に痕をつけるわけにはいかないが、ミアが可愛くて仕方ない。腰の辺りをそっと撫でてやると、それだけでもミアの身体は跳ねて、解放されているルーク自身に当たる。

「ん…、あっ」

 鎖骨の辺りから首筋、耳元までを一気に舐め上げると、ミアは腰を浮かせて我慢できないと訴えてくる。思わず、笑みがこぼれる。

「…僕はミアの番で、夫だ。不安にさせないように、ミアをどれだけ愛しているか、示す必要がある」

 耳元で囁くと、ミアの身体が震える。これからルークが触れることを期待しているのが分かる。さっきまで散々弄ばれたのだ。理由も分かった今、愛しい妻を存分に愛さない理由もない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

戦神、この地に眠る

宵の月
恋愛
 家名ではなく自身を認めさせたい。旧家クラソン家の息女エイダは、そんな思いを抱き新聞記者として日々奮闘していた。伝説の英雄、戦神・セスの未だ見つからない墓所を探し出し、誰もが無視できない功績を打ち立てたい。  歴史への言及を拒み続ける戦神の副官、賢人・ジャスパーの直系子孫に宛て、粘り強く手紙を送り続けていた。熱意が伝わったのか、ついに面談に応じると返事が届く。  エイダは乗り物酔いに必死に耐えながら、一路、伝説が生まれた舞台の北部「ヘイヴン」へと向かった。  当主に出された奇妙な条件に従い、ヘイヴンに留まるうちに巻き込まれた、ヘイヴン家の孫・レナルドとの婚約騒動。レナルドと共に厳重に隠されていた歴史を紐解く時間が、エイダの心にレナルドとの確かな絆と変化をもたらしていく。  辿り着いた歴史の真実に、エイダは本当に求める自分の道を見つけた。  1900年代の架空の世界を舞台に、美しく残酷な歴史を辿る愛の物語。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...