とあるオッドアイ魔術師と魔の紋章を持つ少女の、定められた運命

垣崎 奏

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後日譚:エピローグにかえて

18.夜会後の王宮内客室にて 前 ※

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 夜会後、すっかり定番となった王宮内客室で、身を清めてナイトウェアを羽織っただけのルークが先にベッドに寝転んだ。夜会での様子から、今日のミアは攻めてくるだろう。ルークも貴族からの視線に気付いていないわけではないし、ミアがルークの袖を握りしめていたのも分かっていた。

 ルークの腰に乗り、上半身を倒して密着してくるミアは、普段より少しあたたかい。すでに、気分が高ぶっているのだろう。口づけはもちろん、舌を絡められ追い回されたあと、耳や首筋もいいように舐められる。ナイトウェアは腕を通しただけで、前を留めてはいない。どうせ、すぐに脱がされる。

「…んっ」

 特別、声を我慢しているわけではないが、男側があまり喘ぐのも恥ずかしい。もちろん結界は張っているし、ミアにしか聞かれないものではあるが、できるだけ出したくはない。感じているのがあまり伝わってほしくなくて、魔力放出も自制する。

 鎖骨から胸へとミアの舌が降りていき、頂きを攻めてくる。男でもそこが感じるのだと気付いたときには、もうミアは攻め方を知っていた。当然だろう、ミアはルークの真似をしているのだから。

 ミアの攻めに息が上がってくる。ミアの頭を撫でたり、胸の膨らみに手を伸ばして揉んでみたり。ミアはナイトドレスをしっかり着ていて、まだ布越しではあるが、ピンと主張した頂きを弾いたり摘まんだりもしてあげる。びくんと身体の反応を止められないようだが、それでもルークを攻めることも止めない。

「…ミア、そんなに攻めたい?」

 散々ルークの上半身を舐めていたミアは、ナイトウェアの中で大きくなったルーク自身に、布越しではあるが秘部を擦りつけている。指先で弄びながら、ミアの心情を探る。

「…みんな、ルークを見てた」
「うん、んっ!」
「まだ出さないでね」

 頂きを両方同時に弾かれた。注意が逸れているときにされるのがいいことも、とっくに知られている。自身はミアの秘部に擦られ続けていて、刺激は十分すぎる。ルークのナイトウェアはどちらのもので濡れているのか分からない。ミアの準備も整っているだろう。

「…ミア、僕もう近いよ?」
「うん」

 ミアがさらに降り、ルークの服を剥ぎ取ってしまう。締め付けがなくなった自身が解放され、ミアが先走りを馴染ませながらゆっくり手を這わせる。

「はあ……」

 ルークと目を合わせてくるミアは、心の底から楽しそうに微笑んでいて、押し返すことができない。ミアのペースで唇を奪われ、返している途中で離れていったその口元が、ルーク自身に触れ、啄んでいく。

「んっ…、あっ…」

 やがて啄むだけではなく、舌が形に沿って下から上へとなぞった。流れのままに先端を咥えられ、あたたかい舌が動く。添えられた手が強めに握られ、ルーク自身を刺激していく。少し前からずっと耐えているが、ミアは果てさせようとしているし、ルークも我慢の限界だった。

「…ミア」
「んん」
「…っん、は…」

 名前を呼ばれて少し構えたミアが、ルークを受け止める。交わり自体はひさびさではないし、そこまで量が出るとは思っていなかったが、ミアの口から溢れてしまうほどだったらしい。

 出してしまえば、魔力を隠せはしない。とっくに漏れ出ているミアの魔力と中和して、戻ってくるのが見える。

「あ、ミア…」

 タオルを差し出す前に、ミアは当然のようにそれを飲み込み、口から溢れた分も舌や手で絡め取って口へ運ぶ。それからまた、ルークの足の間に顔を近づけて、綺麗に舐めとってくれる。息を整えているのに、また立ち上がってくる。ミアは、それを狙ってやっているように見えるが。

「……ミア」

 少し低くて、掠れた声が出た。ミアの手を止めるには十分だったようだ。その隙に、ミアを引き寄せ身体を捻った。ミアを見下ろすと、満足そうに微笑んでくる。

「…ミア、なんでそんなに攻めたい?」

 屋敷でも、当然のように寝室を共にしている。たまに遊んでもらうことはあっても、基本はルークが攻める側だ。今日はミアがとにかく積極的に攻めたがった。良い意味でも悪い意味でも、この部屋の特別さが、ミアをここまで攻めに転じさせるのだろうか。

 今日の夜会ではずっと一緒にいたし、ずっとミアの手を預かっていた。特別寂しくさせたつもりもない。ルークには、思い当たる理由がない。

「また、何かされたの?」
「ううん、何も」
「それなら、どうして?」

 ミアを覆うように抱きしめ、額にキスをしながら髪を撫でる。口角を上げるミアにほっとするものの、完全には分からない。もう、すれ違いたくはない。

 口を奪うと話せない。頬にとどめ、このまま攻めてしまいたい気持ちを抑える。違和感を感じられたのは、進歩だ。解消しておかないと、後悔することになる。

「……あの場にいた女性がみんな、ルークを見てたから」
「うん?」
「ルークを見るのは私だけでいい」

 オッドアイを晒して貴族の前に出るのは初めてだったし、好奇の目を向けられるのはおかしくない。ルークはその場では気付かなかったが、ミアの少し怒ったような表情に、自分の顔が整っていて、それを任務でも多少活かしていたことを思い出す。

 結婚してからそれなりの時間が経って、新婚とは呼ばれなくなり、ルークの暴走を一緒に乗り越えもした。今までになかった休暇を楽しみながら、ミアに最大限の愛情を向けているつもりだし、ルークをミアから奪い取ろうなんて、どんな女性でも絶対にできないのだが。

「…嫉妬したんだ?」

 すでに興奮していて赤い頬が、さらに赤くなったように見えた。唇を重ねる。自分の濁液の苦さにも慣れた。下唇に少し吸いついてもみる。顔に痕をつけるわけにはいかないが、ミアが可愛くて仕方ない。腰の辺りをそっと撫でてやると、それだけでもミアの身体は跳ねて、解放されているルーク自身に当たる。

「ん…、あっ」

 鎖骨の辺りから首筋、耳元までを一気に舐め上げると、ミアは腰を浮かせて我慢できないと訴えてくる。思わず、笑みがこぼれる。

「…僕はミアの番で、夫だ。不安にさせないように、ミアをどれだけ愛しているか、示す必要がある」

 耳元で囁くと、ミアの身体が震える。これからルークが触れることを期待しているのが分かる。さっきまで散々弄ばれたのだ。理由も分かった今、愛しい妻を存分に愛さない理由もない。
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