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5.番の魔術講師
6.封印魔術
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ジョンとミアに触れ、王の間からジョンの書斎へ転移するとすぐ、壁一面に広がる書物を見上げた。エスト王国に行く前に、できる限りの策を講じる必要がある。
「…ルーク?」
機嫌を伺うように、心配そうに声を掛けてきたミアを、ジョンの前でも構わず抱き寄せた。額にキスを落とす。これからを考えれば、許されるだろう。
「…封印魔術って、知ってる?」
「え?」
(やっぱりか…)
ルークがその魔術について知ったのは、研究書物を読んだからで、一般的な魔術書には書かれていない。ミアの知識は、魔術に触れた時間的にもルークに及ばず、知らないのも仕方ない。視界に入ったジョンも、目を見開いているように見える。
「番との回復を真似て、魔術師を暴走から回復させようとするなら、僕たちに何度も交わらせようとするはずだよ。そんな、心の繋がりがない交わりなんて無意味だし、感情が揺れると魔力の制御がしにくくなって、僕たちが壊されてしまうかもしれない。生まれ持って体内に存在する魔力は、基本的に他の魔力と混ざり合えないから、体液から身体に入って暴走を起こして繰り返すと、そのたびに破壊されていく。だから、僕たちまで暴走する前に、魔力を外部に封印する。魔術道具に入れる量よりももっと大量に魔力を使うんだ」
「封印…」
「確か、抜いた血液に魔力を込めて、他人に封印してもらうんだよ。魔力が著しく低下しても、自分の血を口に含めば回復するはずなんだけど…、その方法と戻し方を確認したいんだよね」
魔力を使いながら、本棚の背表紙を攫っていく。ここまで話してもジョンが書物を出してくれないということは、ジョンですら封印魔術がどの書物に記載があるのか分からないのだろう。
「もし暴走させられて魔力が破壊されても、外部に封印された自分の魔力は消えなかったと思うんだよ。協定には一年の期限がある。暴走したとしても僕たちが生きてセントレ王国に戻って来れたら、師匠に封印を解いてもらって、自分の魔力を大量に流し込んで他の魔力を中和して抑え込めばいい。魔力が僕たちの身体に戻っても、それを操れるだけのメンタルが残っていなければ、厳しいかな。僕たちは魔力が多すぎるからね。ミアと僕、ふたりともが戻れば、交わって中和もできるけど、その保障もないし」
魔術協定の一年は、ミア以外の暴走した魔術師と交わることになる。その覚悟を、ミアにも求めなければならない。机の前に立ったままのミアとジョンに目をやる。ミアよりも、ジョンのほうがずっと悲痛そうだ。
「…私は、ルークの言うとおりにする。ルークのそばに居たいだけだから」
「ありがとう、ミア」
(ミアとなら、大丈夫だ…)
よく分からない自信ではあるが、チャールズから命を捨てろと言われたし、それがミアと一緒なら怖くない。そもそも、ミアの魔の紋章を解放する任務にも魔力暴走の危険はあって、命は掛かっていた。ルークには、普通の魔術師では手に負えない任務しか来ない。
(怖いのは、どちらかひとりが残ること…、ミアがいなくなる、それとも僕がいなくなってミアがひとりになる…、ああ、だから子どもを…? いや、今はもう、ふたりで生き残ることを考えるしかない)
チャールズが、このままやられっぱなしで過ごすとは思えない。この一年で行う、何か重要な外交が見えているのだろう。頭に過ぎったチャールズは、別の言葉をルークに思い出させた。
『これで、その瞳が本当に特別なことは分かってもらえただろうか』
『これからも国のために、よろしく頼む』
もしチャールズが国王ではなく、ただの幼馴染だったら、なんと声を掛けてくれただろうか。考えても仕方ないが、考えたくはなる。
エスト王国に行って番以外と交わることの他、何をしなければならないのかは分からない。協定の期限は一年、その後、エスト王国主催の国際会議が開かれる予定だ。本当に、チャールズには、どこまで見えているのだろう。
☆
「ミア」
初めて使ったあの日から、一緒に寝ているベッドの上で、いつもと同じように寄り添っていた。顔が見たくて声を掛けると、振り向いてくれる。
「魔力封印の前に、したいことがあって」
「うん?」
身体を起こして、ミアの揃えた太腿の上に座り、下腹部にそっと触れる。
「ミアを、支配してもいい?」
めったに使わない医療魔術を、またミアに使うことになる。基本的な人体に関する知識は持っているが、こういう使い方をするとは想定していなかった。
今からやろうとしていることは、倫理的には禁忌とされる魔術で、そのぶん魔力消費も大きい。それでも、ルーク以外との子を妊娠してほしくない。薬よりも確実に、早く効果が出る方法は、やはり魔術だ。
「もし僕が壊れて元に戻らなければ、誰にも解けない、消えない魔術だよ。僕が戻らなければ、一生妊娠できなくなる」
「それがいい。ルーク以外とは嫌」
即答で聞こえたその言葉に、ルークはゆっくりと息を吐いた。ミアならそう言ってくれると思っていても、不安がなくなるわけではない。
「…ありがとう、ミア」
当てていた手から、ミアに魔術をかける。ミアの月経もある程度規則的に来るようになっていたのを、当然ルークは把握していたからこそ、この手段を取っておきたかった。排卵を、止めてしまうのだ。
「あったかい」
「よかった」
ミアに魔術を掛け終えたルークは、自身を隠すように手で覆った。ミアに掛けたのだ、ルーク自身にも魔術を掛けるべきだろう。
「ルーク?」
「もし誰かの中で果てたら、僕の子どもができるよね」
「そうね」
「ミアに掛けたなら、僕にも掛けないとね」
書物でしか見たことがないが、ルークほどの魔術師であれば、魔術が掛からないことはない。
「出ないのはおかしいからね、無効にしておいた。この魔術を解除できる日が、ちゃんと来てほしいね」
「うん」
ルークもミアも忌み嫌われ、家族とは疎遠だ。ルークにはミアしか、ミアにはルークしか、親しい者はいない。ルークの身体はミアのものだし、ミアの身体もルークのものだ。ふたりともが、肉体的にも精神的にも生きて帰ってこないと、意味がない。
生殖機能を制限した証の印は、それぞれの臍の横につけた。黒子にしか見えず、服を脱がされても気付かれないだろう。
☆
数日後、条約調印の日が決定し、いよいよルークとミアがエスト王国へ送られる日が迫っていた。三人のオッドアイ魔術師が、ジョンの書斎に集まっていた。ジョンの結界の内側に、ルークとミアも結界を張り、三重に守られた空間を用意した。
「これから、この小瓶にふたりの血液を入れる。その後、ここに魔力を込めてもらう」
「二本ずつですか」
「私とチャールズで一本ずつ管理する。魔力が分散して、封印のための消費が厳しいかもしれないが、国が攻撃されないとも限らないからな」
「分かりました」
チャールズが、立ち会いたいと言っていたらしい。魔術道具を製作するときもそうだが、物一点に集中しても、魔力は漏れてその場に漂ってしまう。魔術師ではない一般人であるチャールズは、膨大な魔力に耐えきれず、気を失ってしまう。国王が倒れるなど、それこそ大事だ。
まずはルークが手本となるように、指先を切り小瓶に流した。蓋をしてから、自分の血液に向かって魔力を込める。ミアも、魔術道具への魔力注入は行ってきたが、自分の血液へ注入するとなると、緊張したのだろう。頷いてあげると、口をぎゅっと引き締め、小瓶を握りしめた。
「ふたりとも、耳の後ろを」
仕上げにジョンが、耳の後ろ、髪の生え際の辺りに印を打った。封印の印だ。もしこの印が消えてしまったら、その封印は解ける。今回であれば、この小瓶が割れてしまったり、ジョンが亡くなったりすると、印が消える。
この小瓶をチャールズも持つと聞かされた時点で、予知ではルークとミアの生死までは見えていないと言われているのと同義だ。
(怖い任務はミアの解放以来…、ただ、あのときはひとりだった。今回は違う)
「…ルーク?」
機嫌を伺うように、心配そうに声を掛けてきたミアを、ジョンの前でも構わず抱き寄せた。額にキスを落とす。これからを考えれば、許されるだろう。
「…封印魔術って、知ってる?」
「え?」
(やっぱりか…)
ルークがその魔術について知ったのは、研究書物を読んだからで、一般的な魔術書には書かれていない。ミアの知識は、魔術に触れた時間的にもルークに及ばず、知らないのも仕方ない。視界に入ったジョンも、目を見開いているように見える。
「番との回復を真似て、魔術師を暴走から回復させようとするなら、僕たちに何度も交わらせようとするはずだよ。そんな、心の繋がりがない交わりなんて無意味だし、感情が揺れると魔力の制御がしにくくなって、僕たちが壊されてしまうかもしれない。生まれ持って体内に存在する魔力は、基本的に他の魔力と混ざり合えないから、体液から身体に入って暴走を起こして繰り返すと、そのたびに破壊されていく。だから、僕たちまで暴走する前に、魔力を外部に封印する。魔術道具に入れる量よりももっと大量に魔力を使うんだ」
「封印…」
「確か、抜いた血液に魔力を込めて、他人に封印してもらうんだよ。魔力が著しく低下しても、自分の血を口に含めば回復するはずなんだけど…、その方法と戻し方を確認したいんだよね」
魔力を使いながら、本棚の背表紙を攫っていく。ここまで話してもジョンが書物を出してくれないということは、ジョンですら封印魔術がどの書物に記載があるのか分からないのだろう。
「もし暴走させられて魔力が破壊されても、外部に封印された自分の魔力は消えなかったと思うんだよ。協定には一年の期限がある。暴走したとしても僕たちが生きてセントレ王国に戻って来れたら、師匠に封印を解いてもらって、自分の魔力を大量に流し込んで他の魔力を中和して抑え込めばいい。魔力が僕たちの身体に戻っても、それを操れるだけのメンタルが残っていなければ、厳しいかな。僕たちは魔力が多すぎるからね。ミアと僕、ふたりともが戻れば、交わって中和もできるけど、その保障もないし」
魔術協定の一年は、ミア以外の暴走した魔術師と交わることになる。その覚悟を、ミアにも求めなければならない。机の前に立ったままのミアとジョンに目をやる。ミアよりも、ジョンのほうがずっと悲痛そうだ。
「…私は、ルークの言うとおりにする。ルークのそばに居たいだけだから」
「ありがとう、ミア」
(ミアとなら、大丈夫だ…)
よく分からない自信ではあるが、チャールズから命を捨てろと言われたし、それがミアと一緒なら怖くない。そもそも、ミアの魔の紋章を解放する任務にも魔力暴走の危険はあって、命は掛かっていた。ルークには、普通の魔術師では手に負えない任務しか来ない。
(怖いのは、どちらかひとりが残ること…、ミアがいなくなる、それとも僕がいなくなってミアがひとりになる…、ああ、だから子どもを…? いや、今はもう、ふたりで生き残ることを考えるしかない)
チャールズが、このままやられっぱなしで過ごすとは思えない。この一年で行う、何か重要な外交が見えているのだろう。頭に過ぎったチャールズは、別の言葉をルークに思い出させた。
『これで、その瞳が本当に特別なことは分かってもらえただろうか』
『これからも国のために、よろしく頼む』
もしチャールズが国王ではなく、ただの幼馴染だったら、なんと声を掛けてくれただろうか。考えても仕方ないが、考えたくはなる。
エスト王国に行って番以外と交わることの他、何をしなければならないのかは分からない。協定の期限は一年、その後、エスト王国主催の国際会議が開かれる予定だ。本当に、チャールズには、どこまで見えているのだろう。
☆
「ミア」
初めて使ったあの日から、一緒に寝ているベッドの上で、いつもと同じように寄り添っていた。顔が見たくて声を掛けると、振り向いてくれる。
「魔力封印の前に、したいことがあって」
「うん?」
身体を起こして、ミアの揃えた太腿の上に座り、下腹部にそっと触れる。
「ミアを、支配してもいい?」
めったに使わない医療魔術を、またミアに使うことになる。基本的な人体に関する知識は持っているが、こういう使い方をするとは想定していなかった。
今からやろうとしていることは、倫理的には禁忌とされる魔術で、そのぶん魔力消費も大きい。それでも、ルーク以外との子を妊娠してほしくない。薬よりも確実に、早く効果が出る方法は、やはり魔術だ。
「もし僕が壊れて元に戻らなければ、誰にも解けない、消えない魔術だよ。僕が戻らなければ、一生妊娠できなくなる」
「それがいい。ルーク以外とは嫌」
即答で聞こえたその言葉に、ルークはゆっくりと息を吐いた。ミアならそう言ってくれると思っていても、不安がなくなるわけではない。
「…ありがとう、ミア」
当てていた手から、ミアに魔術をかける。ミアの月経もある程度規則的に来るようになっていたのを、当然ルークは把握していたからこそ、この手段を取っておきたかった。排卵を、止めてしまうのだ。
「あったかい」
「よかった」
ミアに魔術を掛け終えたルークは、自身を隠すように手で覆った。ミアに掛けたのだ、ルーク自身にも魔術を掛けるべきだろう。
「ルーク?」
「もし誰かの中で果てたら、僕の子どもができるよね」
「そうね」
「ミアに掛けたなら、僕にも掛けないとね」
書物でしか見たことがないが、ルークほどの魔術師であれば、魔術が掛からないことはない。
「出ないのはおかしいからね、無効にしておいた。この魔術を解除できる日が、ちゃんと来てほしいね」
「うん」
ルークもミアも忌み嫌われ、家族とは疎遠だ。ルークにはミアしか、ミアにはルークしか、親しい者はいない。ルークの身体はミアのものだし、ミアの身体もルークのものだ。ふたりともが、肉体的にも精神的にも生きて帰ってこないと、意味がない。
生殖機能を制限した証の印は、それぞれの臍の横につけた。黒子にしか見えず、服を脱がされても気付かれないだろう。
☆
数日後、条約調印の日が決定し、いよいよルークとミアがエスト王国へ送られる日が迫っていた。三人のオッドアイ魔術師が、ジョンの書斎に集まっていた。ジョンの結界の内側に、ルークとミアも結界を張り、三重に守られた空間を用意した。
「これから、この小瓶にふたりの血液を入れる。その後、ここに魔力を込めてもらう」
「二本ずつですか」
「私とチャールズで一本ずつ管理する。魔力が分散して、封印のための消費が厳しいかもしれないが、国が攻撃されないとも限らないからな」
「分かりました」
チャールズが、立ち会いたいと言っていたらしい。魔術道具を製作するときもそうだが、物一点に集中しても、魔力は漏れてその場に漂ってしまう。魔術師ではない一般人であるチャールズは、膨大な魔力に耐えきれず、気を失ってしまう。国王が倒れるなど、それこそ大事だ。
まずはルークが手本となるように、指先を切り小瓶に流した。蓋をしてから、自分の血液に向かって魔力を込める。ミアも、魔術道具への魔力注入は行ってきたが、自分の血液へ注入するとなると、緊張したのだろう。頷いてあげると、口をぎゅっと引き締め、小瓶を握りしめた。
「ふたりとも、耳の後ろを」
仕上げにジョンが、耳の後ろ、髪の生え際の辺りに印を打った。封印の印だ。もしこの印が消えてしまったら、その封印は解ける。今回であれば、この小瓶が割れてしまったり、ジョンが亡くなったりすると、印が消える。
この小瓶をチャールズも持つと聞かされた時点で、予知ではルークとミアの生死までは見えていないと言われているのと同義だ。
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