とあるオッドアイ魔術師と魔の紋章を持つ少女の、定められた運命

垣崎 奏

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5.番の魔術講師

2.ルークの異変 ※

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 ルークの帰りを屋敷で待っていたミアは、近づいてくるルークの気配に気付いて玄関へと向かった。いつもなら、王都からの転移魔術でいきなり帰ってくるのに、どうして少し距離のあるところからルークの気配がしているのだろう。気配が感じられるということは、ルークはすでに屋敷の結界の中にいる。ルークは、絶対に自分の魔力の気配を表に出さない人なのに。

 屋敷の扉が開いて見えたルークは、その勢いのままミアを引き寄せ唇を奪った。壁に押し付けられ、舌も絡めとられる。何か理由があるとは思うものの、だんだんと頭が回らなくなってくる。ルークの肩を押すと、少し離れてくれたけど、腰はがっちりと掴まれたままだ。

「ん…、ルーク?」
「ごめん」

 ルークがミアを抱き上げ、寝室へ向かう。いつもなら、迷わず転移魔術を使っているだろう。横抱きされて、運ばれている。ベッドに下ろされ、マントを脱ぎながらミアに乗ってくる。

「ミア…」
「ん、あっ、ルーク、ちょっと…」

 いつもなら、敏感なところを避けて、ひたすらルークの気が済むまで全身を啄みながら愛撫されるのに、今日はワンピースをめくるだけで、すでに胸の頂きを口に含んでいる。手つきは優しいルークそのものだけど、本能が強めで、急いでいる気もする。

「ルーク…!」
「我慢、できない…」
「あっルーク、まだダメっ」

 足首を持ち上げられたと思えば下着を脱がされ、ルークも前を緩めていた。すでに大きくなったルーク自身を取り出すと、這わせることもなく密壷の入り口に突き立てられる。

「んっ、まって、んん!」

 解されていないミアの蜜壷は、ルークの形を覚えてはいるものの若干の痛みがあって、顔を歪めてしまう。それを見ているのに、ルークが止まってくれない。今まで、痛い交わりなんてなかったのに。

「んっ、ルークっ」
「…もっと、僕を呼んで、求めて、ミア」
「ルーク…、ルークっ」
「ミア……」

 痛みは動かれているうちに和らいで、魔力を放出し始めて、そこでやっと、ルークに感じた違和感の理由に気付いた。ルークの魔力がおかしい。ずっと放出され続けているけど、中和が進んでいない。

 感じながら頭を動かすのは難しい。でも、今は考えないといけない。魔力が中和できていない以上、全てをルークに明け渡すことはできない。ミアは必死に、知識を探した。今日のルークは任務帰り、転移魔術を使って帰ってこなかった。

(魔術を使わなかった? 使えなかった?)

 ルークの中に、ルークともミアとも違う、別の魔力がある。ミアと交わることで魔力を増強して、その別の魔力を取り込んで中和させてしまいたいのだ。

「ルーク、ああっ、まって、だめっ、ルーク!」

 ルークがどうしたいのかが分かっても、放出する魔力が大きくて、ミアには飲み込まれないようにするのが精一杯だった。

 快感の中で一線を引いて、ミアが中和できる部分だけを選ぶ。ルークの中で暴れる別の魔力よりも、ルークとミアの魔力が強く大きくなれば、きっと抑え込める。

 そこまで理解はできても、素直な反応は止められない。ルークが、動きを緩めない。いつものルークなら抱き締めて待ってくれるけど、今日はずっと動き続けている。

「ルーク…、も、だめ、あん、んんんっ!」

 がくがくと達し続けるミアは、とうとう意識を手放してしまった。


 ☆


 ミアが意識を失ってから、どれくらい挿れていただろう。何度も果ててやっと、自分の魔力が落ち着いたのが分かる。まだ余韻が続いていて、あまり思考を巡らせることはできないが、攻撃魔術を受けてしまったせいだとしても、ミアを抱き潰してしまった。

 ミアは、別の魔力に気付いていたのだろうか。それすらも分からないままだったら、かなり酷いことをした。いや、気付いていてもいなくても、酷い抱き方をしたのは事実だ。魔力の暴走について、教えたことがあっただろうか。勝手にジョンの書斎で読んでいてくれたらありがたいが、期待するにはミア任せすぎて、先輩魔術師としての顔が立たない。

 何にせよ、ルークが魔力暴走を初めて体験したのは間違いない。もう暴走が治まっているのは分かるが、魔術を使わずに濡らしたタオルでミアを清める。少し、自分の魔力が怖くなった。どんなに大事にしたいと思っていても、ミアをめちゃくちゃに抱いてしまうほどの衝動が、暴走中は止められなかった。何度も「待って」と言われたのは聞こえていた。

 ミアが目を覚ますまで、そばで待っていることはできなかった。涙を流した跡もあるミアを見ていられず、髪を撫でて額にそっとキスを落とし、外に出た。

 軽い魔術を試してみる。ミアに初めて魔力を使ってもらったあの日のように、枯れ葉を踊らせてみる。あたたかい魔力だ。違和感は、消えているが、少し熱く煮えているような感覚がした。


 ☆


「ルーク!」

 屋敷のほうへ目線をやると、ミアが駆け寄ってくる。噴水に腰掛けていたルークは、立ち上がって迎えた。

「ミア…」

 抱きついてきたミアを、普段よりもしっかり支えた。ミアは自分で、下半身に回復魔術を使っている。

「ごめん」

 額にキスを落とすと、優しく微笑みながらルークの頬を両手で挟み、唇に返される。

「今はもう大丈夫?」
「おかげさまで…、ミアは?」
「ルークが大丈夫なら、大丈夫」

 どういう意味か聞こうとして、口をつぐんだ。魔力の暴走について、どうやら知っていたようだ。それなら、暴走を続けたらどうなるかも、分かっているのだろう。

 回復魔術に重ねて、ルークがめったに使わない、体内への医療魔術を使った。この暴走で、授かってしまうのは困る。倫理的に、許されるかどうかは難しい魔術だ。ミアには悪いが、魔術の気配も消したため気付きようがない。

「よかった、死ななくて…」
「…そんな簡単に、僕は死なないよ」

 セントレ王国に三人しかいないオッドアイ魔術師の中で、最強がルークなのだ。チャールズのためにも、簡単に死ぬわけにはいかない。

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