45 / 103
4.茶会・夜会にて
11.結婚報告
しおりを挟む
特に開会の挨拶もなく、使用人たちが紅茶と焼菓子を持ってきて、茶会が始まった。ウィンダム家の魔術師たちは口をつけるが、ルークとミア、それからルークの母親は何もしない。座って眺めているだけ、指示があるまで何もしないに限る。逆なでするのは簡単だが、穏便に済むならそれが一番だ。
「ルーク、結婚したそうじゃないか。紹介どころか連絡もしないとは…」
「ご挨拶が遅れ、申し訳ございません。こちら、僕の妻でミアと言います」
父親の言葉を遮って、ミアを紹介した。魔術学校への入学前以来の対面で、ひさびさ交わす会話の糸口がこれなのは、それだけで上下関係がはっきりと見える。ルークに嫌がらせをしたいのがありありと伝わってきて、ミアには聞いてほしくない。あまり長々と、口を開かせたくない。
「公爵令嬢だったな? まさか俺と同じ褒賞になるとはな。そんな功績をあげるとは思わなかった」
王家からの褒賞として妻をもらったことは、確かに同じだが、その経緯が違いすぎるだろう。正確なことは公になっていないとしても、嫌味な言い方をしてくる。オッドアイについては何も知らないし仕方ないとも思うが、父親と同等だと評価されるのは腹が立つ。チャールズへの態度に呆れていることもあり、父親と兄からは何を言われても引っかかるのだろう。
母親が教えてくれたように、父親や兄たちはミアの生家に興味がなさそうだった。もし聞かれたら、公爵家であるエリザベスの生家、ゴートンの名を借りようと思っていた。もし名乗ったら王家と距離が近くなってしまうために隠していたとすれば、まだ理由が立つ。ただし、帰り際に忘却魔術を使うことが確定するが。
「その傷のある目で、よく結婚できたな」
「騎士だから、オレたちと違って魔術は使えない。無理矢理従わせるのもできない」
「出歩けるわけだよな。噂も本当なんだろ?」
「女嫌いで有名なルークには、難しいよな? 王家付きの堅物騎士だもんな?」
兄たちがにやにやと嫌な笑みを浮かべて、ミアも隣にいるのに揶揄ってくる。二人の言う噂は、結婚したのに初夜を迎えていないとか、ルークが不能とか、その類のことだ。初夜を迎えて懐妊していれば、ミアの体調が不安定になって外に出づらくなる。チャールズが懸念していたことが、魔術師の中では話されているのだろう。むしろ、兄が発端で流している噂だと考えるほうが、自然かもしれない。
ミアが公爵令嬢だったことは公表されていて、爵位が高いため、マイナスな噂はルークのことに関してしか出回っていない。ルークの同僚である騎士たちも、王家付きとなって圧倒的に立場が上のルークに、直接言ってこないだけだろう。
ルークは、魔術で感情を操ろうとは思わない。魔力的には全く問題ないが、気が進まないのだ。ミアを無理矢理ルークに従わせたところで、何が残るというのだろう。そんなことをしなくても、ミアは隣にいてくれるのだが。
母親から、父親の話を聞いたところだ。片親の血だけだとしても、血縁があるのは事実だが、どうせなら完全に血縁がないと言われたほうがよかったのかもしれない。この三人と同じだと見られたくなかったことも、幼いころに魔術を使わなくなった一因で、騎士学校で努力する原動力だったのは間違いない。
(僕は例外で、ウィンダムらしくないように生きてきたから…)
魔術師である三人には、父親が父親なら、息子も息子、それぞれ魔力増強のための相手がいると考えていいだろう。兄にもし番がいるとすれば、結婚していてもおかしくないが、指輪もしていないし、可能性は低い。
任務に就いていないことが事実なら、三人は何に対して魔力を使っているのだろう。屋敷内でできるのは魔術道具を作るくらいで、大きな収入にはならない。ウェルスリーのように何かしらの罪に関わっているとか、嫌な想像が過ぎるが、当たってほしくない。ルークの成果でウィンダム家は名が通っているし、妙なことはできないはずだ。
兄二人と父親がミアを見ている。座っていなければ、足先までくまなく見ただろう。ミアの眼帯は黒ではなく、肌に馴染みやすい白に近い色で、さらに同化魔術も掛けてある。ルークと同じように前髪でも隠しているし、気付いていないかもしれない。
母親は、ミアについて事情があることを察していて、それを眼帯だと捉えているかもしれない。ミアには、何があっても魔術を使わないでほしいと頼んである。もし使うことになっても、ルークだけで十分だ。
「…兄上たちにも、早く相手が見つかるといいですね」
「適齢期でもない子どもが…っ!」
「騎士は魔術師には勝てない。分かって言ってるのか!」
ルークの幼少期を知っている家族は、片目だけが赤いオッドアイであることも知っている。その強さを知らないだけだ。
何を思って、ここまでの敵意を向けるのか、ルークには理解できないが、やはり魔術を使う状況にはなった。少し煽っただけで、兄二人から攻撃魔術が放たれたが、そのまま返してやった。弾いただけで、もし当たったとしても自分の魔術で、暴走の心配もない。
母親は、ただ見ているだけだ。魔力は感じないと言っていたし、目に見える魔術でなければ、目の前で何が起きているのは分からない。ミアの魔力の気配にも動揺はない。指輪のおかげもあると思うが、魔力の制御が上達した証拠だ。
(…うん、これでいい)
兄に加えて、父親からも威嚇の気配が強まった。この屋敷の敷地に入ってからずっと感じていたもので、意識して出しているわけではなさそうだ。感情とともに魔力放出の制限が利かなくなるのは常識中の常識で、精神的な余裕と魔力量でその人となりも見えてくる。
「……弾き返しただと?」
やっと返ってきた言葉がそれだった。状況を飲み込めなかったとしても、不思議ではない。ルークが魔術を扱えることを、この三人は完全に忘れ切っている。三人の魔術師の相手をしているのは、国中を見ても貴重で強力なオッドアイ魔術師だ。一般に情報は流れていないし、ウィンダム家が知るわけもない。
「誰も、僕が魔術を使えないと言ったわけではないでしょう」
「…何を言っている?」
「僕も魔術師なんですよ、ウィンダム魔術爵」
父親が口をぱくぱくさせて、必死に何か返す言葉を探している。母親とミアの視線を感じながら、攻撃魔術を手のひらに集めて玉を作る。この形にすれば、母親にも見えるはずだ。ちらりと目を向けると、目を開いて驚いている。魔術師ではない一般人だ、無理もない。
圧倒的な魔力差を見せつける、いい機会だ。手のひらに載せた玉に魔力を貯め、一度目を閉じてから見開いて、一気に解放した。この敷地内に漂う威嚇の気配を、全て払ってしまう。
「あんなに威嚇しておいて、今の魔力は怯えきっていますね」
母親以外に、恐怖だけを残して忘却魔術をかける。魔術師だと知られたままだと、王家をまた利用しようと企みそうで、使用人も含めて広範囲にかけた。引きつった表情で気を失い、チェアから滑り落ちた血縁者たちを一瞥してから母親を見た。状況は飲み込めているようで、ゆっくりと頷かれた。
「そろそろ、失礼します」
母親に向けて言い、立ち上がってミアの手を取った。戸惑うミアと一緒に、母親に対してのみ礼をする。
ミアの手を引きつつ馬車まで歩く間、母親はついて来なかった。母親がこれからも生活していくのは、いくら没落すると分かっていてもウィンダム魔術爵家だ。王命の褒賞としてこの家に来た母親が、それに背くことはできない。見送るのを使用人に見られては、母親にとって不利になるだろう。
馬車に乗って少し離れてから、ゆっくりと一息吐き出した。兄から出た噂については、国王夫妻からも意識させられたことを思い出す。周りに、流されたくない。横に座るミアが、手を握り返してくれた。
「……よかったの?」
「いいんだ、もう会いに行くこともない」
ミアを抱き締めると、背中に手を回して返してくれる。首元から香るミアの匂いを吸い込むと、身体から力が抜けていく気がする。ミアが居れば十分で、ミア以外を特別だと思えないのに、皆が皆、それ以上何をルークに望むというのだろう。
「ルーク、結婚したそうじゃないか。紹介どころか連絡もしないとは…」
「ご挨拶が遅れ、申し訳ございません。こちら、僕の妻でミアと言います」
父親の言葉を遮って、ミアを紹介した。魔術学校への入学前以来の対面で、ひさびさ交わす会話の糸口がこれなのは、それだけで上下関係がはっきりと見える。ルークに嫌がらせをしたいのがありありと伝わってきて、ミアには聞いてほしくない。あまり長々と、口を開かせたくない。
「公爵令嬢だったな? まさか俺と同じ褒賞になるとはな。そんな功績をあげるとは思わなかった」
王家からの褒賞として妻をもらったことは、確かに同じだが、その経緯が違いすぎるだろう。正確なことは公になっていないとしても、嫌味な言い方をしてくる。オッドアイについては何も知らないし仕方ないとも思うが、父親と同等だと評価されるのは腹が立つ。チャールズへの態度に呆れていることもあり、父親と兄からは何を言われても引っかかるのだろう。
母親が教えてくれたように、父親や兄たちはミアの生家に興味がなさそうだった。もし聞かれたら、公爵家であるエリザベスの生家、ゴートンの名を借りようと思っていた。もし名乗ったら王家と距離が近くなってしまうために隠していたとすれば、まだ理由が立つ。ただし、帰り際に忘却魔術を使うことが確定するが。
「その傷のある目で、よく結婚できたな」
「騎士だから、オレたちと違って魔術は使えない。無理矢理従わせるのもできない」
「出歩けるわけだよな。噂も本当なんだろ?」
「女嫌いで有名なルークには、難しいよな? 王家付きの堅物騎士だもんな?」
兄たちがにやにやと嫌な笑みを浮かべて、ミアも隣にいるのに揶揄ってくる。二人の言う噂は、結婚したのに初夜を迎えていないとか、ルークが不能とか、その類のことだ。初夜を迎えて懐妊していれば、ミアの体調が不安定になって外に出づらくなる。チャールズが懸念していたことが、魔術師の中では話されているのだろう。むしろ、兄が発端で流している噂だと考えるほうが、自然かもしれない。
ミアが公爵令嬢だったことは公表されていて、爵位が高いため、マイナスな噂はルークのことに関してしか出回っていない。ルークの同僚である騎士たちも、王家付きとなって圧倒的に立場が上のルークに、直接言ってこないだけだろう。
ルークは、魔術で感情を操ろうとは思わない。魔力的には全く問題ないが、気が進まないのだ。ミアを無理矢理ルークに従わせたところで、何が残るというのだろう。そんなことをしなくても、ミアは隣にいてくれるのだが。
母親から、父親の話を聞いたところだ。片親の血だけだとしても、血縁があるのは事実だが、どうせなら完全に血縁がないと言われたほうがよかったのかもしれない。この三人と同じだと見られたくなかったことも、幼いころに魔術を使わなくなった一因で、騎士学校で努力する原動力だったのは間違いない。
(僕は例外で、ウィンダムらしくないように生きてきたから…)
魔術師である三人には、父親が父親なら、息子も息子、それぞれ魔力増強のための相手がいると考えていいだろう。兄にもし番がいるとすれば、結婚していてもおかしくないが、指輪もしていないし、可能性は低い。
任務に就いていないことが事実なら、三人は何に対して魔力を使っているのだろう。屋敷内でできるのは魔術道具を作るくらいで、大きな収入にはならない。ウェルスリーのように何かしらの罪に関わっているとか、嫌な想像が過ぎるが、当たってほしくない。ルークの成果でウィンダム家は名が通っているし、妙なことはできないはずだ。
兄二人と父親がミアを見ている。座っていなければ、足先までくまなく見ただろう。ミアの眼帯は黒ではなく、肌に馴染みやすい白に近い色で、さらに同化魔術も掛けてある。ルークと同じように前髪でも隠しているし、気付いていないかもしれない。
母親は、ミアについて事情があることを察していて、それを眼帯だと捉えているかもしれない。ミアには、何があっても魔術を使わないでほしいと頼んである。もし使うことになっても、ルークだけで十分だ。
「…兄上たちにも、早く相手が見つかるといいですね」
「適齢期でもない子どもが…っ!」
「騎士は魔術師には勝てない。分かって言ってるのか!」
ルークの幼少期を知っている家族は、片目だけが赤いオッドアイであることも知っている。その強さを知らないだけだ。
何を思って、ここまでの敵意を向けるのか、ルークには理解できないが、やはり魔術を使う状況にはなった。少し煽っただけで、兄二人から攻撃魔術が放たれたが、そのまま返してやった。弾いただけで、もし当たったとしても自分の魔術で、暴走の心配もない。
母親は、ただ見ているだけだ。魔力は感じないと言っていたし、目に見える魔術でなければ、目の前で何が起きているのは分からない。ミアの魔力の気配にも動揺はない。指輪のおかげもあると思うが、魔力の制御が上達した証拠だ。
(…うん、これでいい)
兄に加えて、父親からも威嚇の気配が強まった。この屋敷の敷地に入ってからずっと感じていたもので、意識して出しているわけではなさそうだ。感情とともに魔力放出の制限が利かなくなるのは常識中の常識で、精神的な余裕と魔力量でその人となりも見えてくる。
「……弾き返しただと?」
やっと返ってきた言葉がそれだった。状況を飲み込めなかったとしても、不思議ではない。ルークが魔術を扱えることを、この三人は完全に忘れ切っている。三人の魔術師の相手をしているのは、国中を見ても貴重で強力なオッドアイ魔術師だ。一般に情報は流れていないし、ウィンダム家が知るわけもない。
「誰も、僕が魔術を使えないと言ったわけではないでしょう」
「…何を言っている?」
「僕も魔術師なんですよ、ウィンダム魔術爵」
父親が口をぱくぱくさせて、必死に何か返す言葉を探している。母親とミアの視線を感じながら、攻撃魔術を手のひらに集めて玉を作る。この形にすれば、母親にも見えるはずだ。ちらりと目を向けると、目を開いて驚いている。魔術師ではない一般人だ、無理もない。
圧倒的な魔力差を見せつける、いい機会だ。手のひらに載せた玉に魔力を貯め、一度目を閉じてから見開いて、一気に解放した。この敷地内に漂う威嚇の気配を、全て払ってしまう。
「あんなに威嚇しておいて、今の魔力は怯えきっていますね」
母親以外に、恐怖だけを残して忘却魔術をかける。魔術師だと知られたままだと、王家をまた利用しようと企みそうで、使用人も含めて広範囲にかけた。引きつった表情で気を失い、チェアから滑り落ちた血縁者たちを一瞥してから母親を見た。状況は飲み込めているようで、ゆっくりと頷かれた。
「そろそろ、失礼します」
母親に向けて言い、立ち上がってミアの手を取った。戸惑うミアと一緒に、母親に対してのみ礼をする。
ミアの手を引きつつ馬車まで歩く間、母親はついて来なかった。母親がこれからも生活していくのは、いくら没落すると分かっていてもウィンダム魔術爵家だ。王命の褒賞としてこの家に来た母親が、それに背くことはできない。見送るのを使用人に見られては、母親にとって不利になるだろう。
馬車に乗って少し離れてから、ゆっくりと一息吐き出した。兄から出た噂については、国王夫妻からも意識させられたことを思い出す。周りに、流されたくない。横に座るミアが、手を握り返してくれた。
「……よかったの?」
「いいんだ、もう会いに行くこともない」
ミアを抱き締めると、背中に手を回して返してくれる。首元から香るミアの匂いを吸い込むと、身体から力が抜けていく気がする。ミアが居れば十分で、ミア以外を特別だと思えないのに、皆が皆、それ以上何をルークに望むというのだろう。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
戦神、この地に眠る
宵の月
恋愛
家名ではなく自身を認めさせたい。旧家クラソン家の息女エイダは、そんな思いを抱き新聞記者として日々奮闘していた。伝説の英雄、戦神・セスの未だ見つからない墓所を探し出し、誰もが無視できない功績を打ち立てたい。
歴史への言及を拒み続ける戦神の副官、賢人・ジャスパーの直系子孫に宛て、粘り強く手紙を送り続けていた。熱意が伝わったのか、ついに面談に応じると返事が届く。
エイダは乗り物酔いに必死に耐えながら、一路、伝説が生まれた舞台の北部「ヘイヴン」へと向かった。
当主に出された奇妙な条件に従い、ヘイヴンに留まるうちに巻き込まれた、ヘイヴン家の孫・レナルドとの婚約騒動。レナルドと共に厳重に隠されていた歴史を紐解く時間が、エイダの心にレナルドとの確かな絆と変化をもたらしていく。
辿り着いた歴史の真実に、エイダは本当に求める自分の道を見つけた。
1900年代の架空の世界を舞台に、美しく残酷な歴史を辿る愛の物語。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる