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13 お友達
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小さな時の記憶を思い出したディックは、正直に答えます。
「覚えてたというか……思い出したというか……ねぇ、何してるの?」
座り込むディックの耳を、リリアが興味深そうにさわさわと触っていました。
「わぁっ、フワフワだぁ」
リリアの目はキラキラ光っています。
「ちょっとっ、くすっぐったいからっ!」
遠慮がちに触ってくるのが、逆にくすぐったくて、ディックは耳をパタパタと動かします。
「わっ……ごめんなさい、勝手に触って」
リリアは謝って、手を離してくれましたが、今度はディックの尻尾をジッと見つめています。
「尻尾フサフサ……触っても良い?」
勝手に触ったらダメなら、きちんと確認してから触ろうと、ウズウズした表情でリリアはディックに尋ねました。
「えー……強く引っ張らなければ……あ、弱すぎるのもちょっとイヤかも」
あまりに期待に満ちた表情で聞かれたので、ディックは思わず触って良いと返事をしてしまいました。
「ありがとう! わぁ、やっぱりフサフサ! それにツヤツヤだわ」
ディックの要望(?)通り、絶妙な力加減でリリアは尻尾を撫でます。
(なんだ、このやり取り……)
リリアに対しては、もう「人間怖い」なんて感情は浮かんで来ないディックは、力が抜けたように息を吐きました。
「なのね、オオカミさん。さっきも、小さな時も助けてくれて、ありがとう」
リリアはディックの尻尾を撫でながら、真面目な声でお礼を言いました。
「私、ずっとオオカミさんに会いたかったの。会えて嬉しい」
ディックは、振り返ってリリアを見ます。リリアは、とても嬉しそうに微笑んでいました。その表情を見て、ディックの心臓はドキッと跳ねます。
「ど、どういたしまして」
ディックは赤くなった顔を見られないように、リリアから顔を反らしながら返事をしました。でも、フワフワの耳はペタンッと伏せてしまっていますし、少し見える頬っぺたは赤くなっているのが、リリアには見えていました。
(良かった、嫌がられてはいないみたい)
その反応にリリアは嬉しくなりました。
「オオカミさん、私とお友達になって下さい」
リリアはディックに恋しているので、本当は恋人になりたいと言いたいところですか、きっとそんな事を言ったら困らせてしまいます。
(お友達から……そして、もっと仲良くなれたら告白しよう)
そんな計画を考えつつ、リリアはディックに手を差し出しました。
割とグイグイくるリリアに困惑しながら、ディックは差し出された手を反射的に握り返していました。
(あ、思わず握っちゃった……まぁ、良い子みたいだし、いいか)
「わかった。いいよ」
「ありがとう、オオカミさん!」
まずは「友達」になることが出来て、リリアは喜びます。これで、森に会いに来る理由が出来ました。
「……ディック」
「え?」
「僕の名前。友達だから」
照れ隠しなのか、少しぶっきらぼうにディックが名前を教えてくれました。
「ありがとう、ディックさん」
本人の口から聞きたかった名前を、ようやく聞くことがでしました。これで、堂々と呼ぶことが出来ます。
リリアは喜びのあまり、ディックの首に抱きつきました。
その後、ディックの慌てたような、間抜けな悲鳴が森の中に響いたのでした。
─ 完 ─
「覚えてたというか……思い出したというか……ねぇ、何してるの?」
座り込むディックの耳を、リリアが興味深そうにさわさわと触っていました。
「わぁっ、フワフワだぁ」
リリアの目はキラキラ光っています。
「ちょっとっ、くすっぐったいからっ!」
遠慮がちに触ってくるのが、逆にくすぐったくて、ディックは耳をパタパタと動かします。
「わっ……ごめんなさい、勝手に触って」
リリアは謝って、手を離してくれましたが、今度はディックの尻尾をジッと見つめています。
「尻尾フサフサ……触っても良い?」
勝手に触ったらダメなら、きちんと確認してから触ろうと、ウズウズした表情でリリアはディックに尋ねました。
「えー……強く引っ張らなければ……あ、弱すぎるのもちょっとイヤかも」
あまりに期待に満ちた表情で聞かれたので、ディックは思わず触って良いと返事をしてしまいました。
「ありがとう! わぁ、やっぱりフサフサ! それにツヤツヤだわ」
ディックの要望(?)通り、絶妙な力加減でリリアは尻尾を撫でます。
(なんだ、このやり取り……)
リリアに対しては、もう「人間怖い」なんて感情は浮かんで来ないディックは、力が抜けたように息を吐きました。
「なのね、オオカミさん。さっきも、小さな時も助けてくれて、ありがとう」
リリアはディックの尻尾を撫でながら、真面目な声でお礼を言いました。
「私、ずっとオオカミさんに会いたかったの。会えて嬉しい」
ディックは、振り返ってリリアを見ます。リリアは、とても嬉しそうに微笑んでいました。その表情を見て、ディックの心臓はドキッと跳ねます。
「ど、どういたしまして」
ディックは赤くなった顔を見られないように、リリアから顔を反らしながら返事をしました。でも、フワフワの耳はペタンッと伏せてしまっていますし、少し見える頬っぺたは赤くなっているのが、リリアには見えていました。
(良かった、嫌がられてはいないみたい)
その反応にリリアは嬉しくなりました。
「オオカミさん、私とお友達になって下さい」
リリアはディックに恋しているので、本当は恋人になりたいと言いたいところですか、きっとそんな事を言ったら困らせてしまいます。
(お友達から……そして、もっと仲良くなれたら告白しよう)
そんな計画を考えつつ、リリアはディックに手を差し出しました。
割とグイグイくるリリアに困惑しながら、ディックは差し出された手を反射的に握り返していました。
(あ、思わず握っちゃった……まぁ、良い子みたいだし、いいか)
「わかった。いいよ」
「ありがとう、オオカミさん!」
まずは「友達」になることが出来て、リリアは喜びます。これで、森に会いに来る理由が出来ました。
「……ディック」
「え?」
「僕の名前。友達だから」
照れ隠しなのか、少しぶっきらぼうにディックが名前を教えてくれました。
「ありがとう、ディックさん」
本人の口から聞きたかった名前を、ようやく聞くことがでしました。これで、堂々と呼ぶことが出来ます。
リリアは喜びのあまり、ディックの首に抱きつきました。
その後、ディックの慌てたような、間抜けな悲鳴が森の中に響いたのでした。
─ 完 ─
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いつも読んでくださり、ありがとうございます!ディックは、とても良い子なんですよ✨完結までの目処がたったので、今日から更新ペースを上げてます。続きをお楽しみ下さい(*^^*)