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7 リリアの記憶1
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とても小さな頃、リリアはよく森の近くで遊んでいました。
その日も、いつもと同じように一人で、覚えたての歌を歌いながら、お花の冠を作ったり、きれいな蝶々を追いかけたりしながら遊んでいました。
近所に同じ年頃の子がいないので、リリアはいつも一人でした。
きれいな蝶々を追いかけていたリリアは、いつの間にか森の中に入ってしまいます。
リリアは、お父さんやお母さんから、「森の中には絶対に入らないように」と言いつけられていました。
森の中には、とても恐ろしい生き物がいるらしいのです。
「小さな子供なんて、一口で丸のみにされてしまうかもしれないよ」と言われていたので、リリアは怖くなりました。
「どうしよう……」
まわりを見回したリリアは、泣きそうな声で呟きます。
森の出口が分からなくなってしまったのです。
風でザワザワと音を立てる木の葉も、木の隙間から見えるくもり空も、リリアの怖さを引き立てます。
でも、助けてくれる人はいません。
「おかあさん……おとうさん……」
お父さんやお母さんが、リリアが居なくなったことに気がついてくれれば、きっと森の中まで探しに来てくれるはずです。でも、お父さんもお母さんも仕事でいつも帰って来るのは夜なので、まだ気がついてもらえません。
「ふぇ~んっ」
とうとうリリアは泣き出してしまいました。
泣きながら、トボトボと出口を探して歩きますが、どこに行っても木しかありません。
「出口、どこぉ……ぐすっ」
早く森の外に出たいの出られません。
恐ろしい生き物が出てきたらどうしようと、リリアの心は不安でいっぱいになります。
ガサッ
「ひゃっ」
草が大きな音をたてたので、リリアはびっくりして尻餅をついて座り込んでしまいました。
ガサガサッ、ぴょんっ
何かが近づいてくる音のあと、草むらから白いうさぎが跳ね出てきました。
「わっ、なんだぁ、うさぎさんかぁ」
出てきたのが可愛らしいうさぎだったので、リリアはホッと息を吐きます。
「あ、まって、うさぎさん」
リリアは白いうさぎに声をかけます。
でも、白いうさぎは、リリアには目もくれずに、ぴょんぴょんぴょーんと慌てたように走り去ってしまいました。
「いっちゃった……」
白いうさぎと一緒にいれば、怖くない気がしたので、リリアは残念そうに呟きました。
ガサッ
さっきより大きな音が、白いうさぎが跳ね出てきた場所から聞こえました。
もしかしたら、別のうさぎが出てきたのかもしれないと、リリアはパッと顔を明るくさせて振り返りました。
「がるるるるるっ」
しかしそれは、うさぎよりも大きな生き物でした。
黒っぽい灰色の毛におおわれた生き物です。
大きな口には、ギザギザした歯が生えています。歯のすきまから見える舌は、真っ赤でした。
にらむようなつり上がった目で、リリアを見ています。
「──っ」
リリアは、声にならない悲鳴をあげました。
きっと、お父さんとお母さんが言っていた「恐ろしい生き物」はこれに間違いないと、リリアは思いました。
その日も、いつもと同じように一人で、覚えたての歌を歌いながら、お花の冠を作ったり、きれいな蝶々を追いかけたりしながら遊んでいました。
近所に同じ年頃の子がいないので、リリアはいつも一人でした。
きれいな蝶々を追いかけていたリリアは、いつの間にか森の中に入ってしまいます。
リリアは、お父さんやお母さんから、「森の中には絶対に入らないように」と言いつけられていました。
森の中には、とても恐ろしい生き物がいるらしいのです。
「小さな子供なんて、一口で丸のみにされてしまうかもしれないよ」と言われていたので、リリアは怖くなりました。
「どうしよう……」
まわりを見回したリリアは、泣きそうな声で呟きます。
森の出口が分からなくなってしまったのです。
風でザワザワと音を立てる木の葉も、木の隙間から見えるくもり空も、リリアの怖さを引き立てます。
でも、助けてくれる人はいません。
「おかあさん……おとうさん……」
お父さんやお母さんが、リリアが居なくなったことに気がついてくれれば、きっと森の中まで探しに来てくれるはずです。でも、お父さんもお母さんも仕事でいつも帰って来るのは夜なので、まだ気がついてもらえません。
「ふぇ~んっ」
とうとうリリアは泣き出してしまいました。
泣きながら、トボトボと出口を探して歩きますが、どこに行っても木しかありません。
「出口、どこぉ……ぐすっ」
早く森の外に出たいの出られません。
恐ろしい生き物が出てきたらどうしようと、リリアの心は不安でいっぱいになります。
ガサッ
「ひゃっ」
草が大きな音をたてたので、リリアはびっくりして尻餅をついて座り込んでしまいました。
ガサガサッ、ぴょんっ
何かが近づいてくる音のあと、草むらから白いうさぎが跳ね出てきました。
「わっ、なんだぁ、うさぎさんかぁ」
出てきたのが可愛らしいうさぎだったので、リリアはホッと息を吐きます。
「あ、まって、うさぎさん」
リリアは白いうさぎに声をかけます。
でも、白いうさぎは、リリアには目もくれずに、ぴょんぴょんぴょーんと慌てたように走り去ってしまいました。
「いっちゃった……」
白いうさぎと一緒にいれば、怖くない気がしたので、リリアは残念そうに呟きました。
ガサッ
さっきより大きな音が、白いうさぎが跳ね出てきた場所から聞こえました。
もしかしたら、別のうさぎが出てきたのかもしれないと、リリアはパッと顔を明るくさせて振り返りました。
「がるるるるるっ」
しかしそれは、うさぎよりも大きな生き物でした。
黒っぽい灰色の毛におおわれた生き物です。
大きな口には、ギザギザした歯が生えています。歯のすきまから見える舌は、真っ赤でした。
にらむようなつり上がった目で、リリアを見ています。
「──っ」
リリアは、声にならない悲鳴をあげました。
きっと、お父さんとお母さんが言っていた「恐ろしい生き物」はこれに間違いないと、リリアは思いました。
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