獣人ディックと赤ずきんちゃん

佐倉穂波

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 家に帰ったディックは、朝ご飯を食べたあと、少し眠りました。
 目が覚めた時には、太陽は空の真ん中の少し手前まで昇っていました。
(今日はどうしよう)
 ディックは今日の予定を考えます。
(そうだ、野草でも取りに行こう)
 朝ご飯を作るとき、野草のストックを使いきってしまったことを思い出します。
 ディックは身支度を整えると、カゴを手に取りました。カゴの中にチーズと野菜を挟んだパンと、ブドウのジュースが入った瓶を入れます。野草を取ったら、そのまま外で昼ご飯を食べるつもりです。

 外はポカポカと良い天気でした。
「ふわぁ~っ」
 野草を採って、お昼ご飯を食べると、眠くなってきました。お昼近くまで眠っていましたが、まだ眠り足りないようです。
 ディックは草原に寝転びます。
 緑のいい匂いがしました。ポカポカと暖かい日差しに、ディックは更に眠たくなります。
(ちょっとだけ、眠ろう……)
 数秒後には、スースーと規則正しい寝息をたてて、ディックは眠ってしまいました。

 それから、しばらく経ち、ディックは目を覚まします。
 太陽は少し西に傾いています。
 もう少ししたら、キレイなオレンジの夕焼け空が見えるでしょう。
「はーっ、よく寝た──ん?」
 両手を伸ばし、グイッと背伸びをします。目を開けると、ディックの側に眠る前はなかったものがありました。
「え、このコートって……」
 それは、昨日の夜、女の子に掛けてあげたコートでした。
 コートの上には紙が添えられていました。
 ディックは、紙が飛ばないように置かれた石を退けて、二つに折られた紙を手に取りました。
 恐る恐る紙を開いてみます。

『オオカミさんへ
 昨日は、突然声をかけて、ビックリさせてしまって、ごめんんなさい。
 このコートはオオカミさんのですか? とてもあたたかかったです。
 ありがとう。 リリアより』

 ディック宛のお手紙でした。
 送り主は、あの女の子のようです。

「あの女の子、リリアっていうのか……コート、わざわざ返しにきたんだな」
 あげても良いやという思っていたので、返してくるとは予想外でした。
「っていうか、まだあの子、この森にいたの?」
 もうとっくに森から出ていっていると思っていました。でも、ディックにコートを届けてから、森を出ていった可能性もあります。
 ディックは「う~ん」と考えましたが、ひとまず家に帰ることにしました。

 家に帰りついたディックは、採ってきた野草と保存している乾燥肉などを使って夕食を作ります。
 いつもより多く作った食事を、ディックは腕を組んで考えたあと、蓋の付いた容器に詰めてカゴに入れました。サンドイッチも作りました。
(念のため……別に心配してるとかじゃないから)
 誰に言い訳してるのか分かりませんが、ディックは心の中で言い訳を呟くと、昼間干してフワフワになっていた毛布とカゴを片手に出掛けたのでした。

 向かった先は、昨夜リリアが眠っていた木の場所です。
(……やっぱり居た)
 リリアはディックの予想通り、まだ森の中に居たのでした。
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