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3 夜の森
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女の子から逃げ帰って数時間すると、森は暗くなりました。
木々が繁っているので、夕方になるとすぐに暗くなってしまうのです。
夕ごはんを食べながら、ディックは昼間の女の子のことを思い出しました。
「もう、帰ったよね」
追いかけてくる気配はなかったので、帰ったはずです。
「でも、ちゃんと森から出られたかな?」
考えてみれば、この森の深い場所から外に出るためには、かなり歩かなければなりません。ここまで来るのだって、朝早くに森に入ってもたどり着くのはお昼くらいになってしまいます。
「ここまで来るのに疲れてるだろうし……無理じゃないかな?」
女の子の足では暗くなる前に森を抜けるのは難しいのではないかということに、ディックは気がつきます。
夜の森は危険でいっぱいです。
夜行性の動物たちがたくさん居ます。
ふくろうやモモンガなどの小動物は特に人間を害することはないので大丈夫だと思います。
問題は、肉食の動物たちです。
あんな、か弱そうな女の子なんて、襲われたらひとたまりもありません。
「僕には関係ないことだ」
ディックは人間に関わりたくありません。
「……でも」
しかし、気がついてしまうと、気になってソワソワと落ち着かなくなります。
何度も外を見てしまいます。
外は、もう真っ暗です。
ディックは首を振って、女の子のことを頭の中から追い出そうとします。
気分転換に読書をしよと本を開きますが、気がつけばページをめくる手が止まり、外を見てしまいます。
ならば体を動かしてみようと、床に寝そべって腹筋を始め何回か数えてみますが、集中できず数字を忘れてしまいます。
ディックは腹筋をやめて、大の字に寝そべり目を瞑ります。
関わりたくないのに、頭から離れてくれない女の子に苛立ちます。
自分を探しに来た(かもしれない)者がが危険な夜の森にいると思うと、落ち着きません。もし襲われでもしたら、自分のせいみたいではありませんか。
「──ああ、もうっ!」
ディックは、ヤケ気味に大声を出して起き上がると、コートを羽織って外に飛び出しました。
そう、外に出るにはコートを羽織るくらい肌寒いのです。
肉食の動物たちだけではなく、人間にとっては寒さも命取りになってしまいます。
ディックは、女の子と会った場所まで駆けていきました。
キョロキョロを辺りを見渡しますが、女の子が居る気配はしません。
「ここには居ないか」
女の子が同じ場所に留まっているとは限りません。
念のためディックは、もう少し森の中を探してみることにしました。
(なんで、僕は人間を探したりしているんだろう? でも、死なれても目覚めが悪いし……もう、襲われてたりしないよね?)
そんなことを考えながら探していると、パチパチを何かが小さく爆ぜる音が微かにしました。獣人は耳が良いのです。
ディックは音のする方に行ってみました。
少し木々の開けた場所に焚き火が見えました。
そして、大きな木の穴の中に横たわる女の子を見つけます。
スヤスヤと微かな寝息を聴こえてきて、女の子が生きているのを確認したディックは、ホッと胸を撫で下ろしたのでした。
木々が繁っているので、夕方になるとすぐに暗くなってしまうのです。
夕ごはんを食べながら、ディックは昼間の女の子のことを思い出しました。
「もう、帰ったよね」
追いかけてくる気配はなかったので、帰ったはずです。
「でも、ちゃんと森から出られたかな?」
考えてみれば、この森の深い場所から外に出るためには、かなり歩かなければなりません。ここまで来るのだって、朝早くに森に入ってもたどり着くのはお昼くらいになってしまいます。
「ここまで来るのに疲れてるだろうし……無理じゃないかな?」
女の子の足では暗くなる前に森を抜けるのは難しいのではないかということに、ディックは気がつきます。
夜の森は危険でいっぱいです。
夜行性の動物たちがたくさん居ます。
ふくろうやモモンガなどの小動物は特に人間を害することはないので大丈夫だと思います。
問題は、肉食の動物たちです。
あんな、か弱そうな女の子なんて、襲われたらひとたまりもありません。
「僕には関係ないことだ」
ディックは人間に関わりたくありません。
「……でも」
しかし、気がついてしまうと、気になってソワソワと落ち着かなくなります。
何度も外を見てしまいます。
外は、もう真っ暗です。
ディックは首を振って、女の子のことを頭の中から追い出そうとします。
気分転換に読書をしよと本を開きますが、気がつけばページをめくる手が止まり、外を見てしまいます。
ならば体を動かしてみようと、床に寝そべって腹筋を始め何回か数えてみますが、集中できず数字を忘れてしまいます。
ディックは腹筋をやめて、大の字に寝そべり目を瞑ります。
関わりたくないのに、頭から離れてくれない女の子に苛立ちます。
自分を探しに来た(かもしれない)者がが危険な夜の森にいると思うと、落ち着きません。もし襲われでもしたら、自分のせいみたいではありませんか。
「──ああ、もうっ!」
ディックは、ヤケ気味に大声を出して起き上がると、コートを羽織って外に飛び出しました。
そう、外に出るにはコートを羽織るくらい肌寒いのです。
肉食の動物たちだけではなく、人間にとっては寒さも命取りになってしまいます。
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キョロキョロを辺りを見渡しますが、女の子が居る気配はしません。
「ここには居ないか」
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念のためディックは、もう少し森の中を探してみることにしました。
(なんで、僕は人間を探したりしているんだろう? でも、死なれても目覚めが悪いし……もう、襲われてたりしないよね?)
そんなことを考えながら探していると、パチパチを何かが小さく爆ぜる音が微かにしました。獣人は耳が良いのです。
ディックは音のする方に行ってみました。
少し木々の開けた場所に焚き火が見えました。
そして、大きな木の穴の中に横たわる女の子を見つけます。
スヤスヤと微かな寝息を聴こえてきて、女の子が生きているのを確認したディックは、ホッと胸を撫で下ろしたのでした。
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