1 / 13
1 狼の獣人ディック
しおりを挟む
深い森の奥に、狼の獣人のディックは住んでいました。
獣人というのは、動物の特徴を持った種族のことです。
ディックにも狼の特徴であるモフモフの耳と尻尾、そして牙があります。
ディックが森の奥深くに住んでいるのには理由がありました。
(人間は怖い)
そう、ディックは人間が怖いので、できる限り関わらないように、森の奥深くに住んでいるのです。
最近は、人間との共存を目指すといって、人間の町に住む獣人も多くなっています。人間と結婚する獣人もいるくらいです。
ディックの両親や兄も、数年前に他の獣人たちと一緒に人間の町に引っ越してしまいました。
もちろんディックも一緒に行くように言われましたが、「絶対に嫌だ!!」と拒否して、家出同然に飛び出したのです。それからずっと、ディックは森の奥で一人で暮らしています。
ディックが人間を怖いと思ったのには理由がありました。
小さなころに「赤ずきん」という物語を読んでしまったのです。これは狼の性質を持っている獣人が、人間に危害を加えないようにと少しお兄さんくらいの年頃になったら読み聞かせる物語でした。
(お腹を切り裂いて、石を詰め込むなんて……それから湖に落とすの!?なんて人間は怖いんだ!!)
まず、狼がおばあさんを食べたことや、赤ずきんを騙して食べようとしたことが悪いのですが、それにしてもひどいと思いました。倍返しどころではありません。
幼いディックには少し刺激が強すぎました。
そして間が悪いことに、その物語を聞いた翌日に、人間の罠にかかって足と左目の下を怪我してしまうという事件もありました。
(このままじゃ、人間に捕まっちゃう!)
(悪い狼と思われて、僕も殺されちゃうかもしれない!!)
別にディックは悪いことをして罠にかかったわけではありませんが、前の日に読んだ「赤ずきん」の衝撃が抜けていませんでした。
幼いディックはパニックになりました。どうやって罠から抜けたのか覚えていません。
その後ディックは、怪我と精神的なストレスで何日間も寝込んでしまいました。
成長して、あの物語が人間に危害を加えないようにとする教材であることを理解できるようになってからも、あの時に感じた恐怖が消えることはありませんでした。
トラウマになってしまったのです。
なので、人間の町に住むなんてディックには到底無理な話でした。
ディックは、家族と離れて一人で暮らすことになっても、人間と関わりたくないと思ったのです。
獣人というのは、動物の特徴を持った種族のことです。
ディックにも狼の特徴であるモフモフの耳と尻尾、そして牙があります。
ディックが森の奥深くに住んでいるのには理由がありました。
(人間は怖い)
そう、ディックは人間が怖いので、できる限り関わらないように、森の奥深くに住んでいるのです。
最近は、人間との共存を目指すといって、人間の町に住む獣人も多くなっています。人間と結婚する獣人もいるくらいです。
ディックの両親や兄も、数年前に他の獣人たちと一緒に人間の町に引っ越してしまいました。
もちろんディックも一緒に行くように言われましたが、「絶対に嫌だ!!」と拒否して、家出同然に飛び出したのです。それからずっと、ディックは森の奥で一人で暮らしています。
ディックが人間を怖いと思ったのには理由がありました。
小さなころに「赤ずきん」という物語を読んでしまったのです。これは狼の性質を持っている獣人が、人間に危害を加えないようにと少しお兄さんくらいの年頃になったら読み聞かせる物語でした。
(お腹を切り裂いて、石を詰め込むなんて……それから湖に落とすの!?なんて人間は怖いんだ!!)
まず、狼がおばあさんを食べたことや、赤ずきんを騙して食べようとしたことが悪いのですが、それにしてもひどいと思いました。倍返しどころではありません。
幼いディックには少し刺激が強すぎました。
そして間が悪いことに、その物語を聞いた翌日に、人間の罠にかかって足と左目の下を怪我してしまうという事件もありました。
(このままじゃ、人間に捕まっちゃう!)
(悪い狼と思われて、僕も殺されちゃうかもしれない!!)
別にディックは悪いことをして罠にかかったわけではありませんが、前の日に読んだ「赤ずきん」の衝撃が抜けていませんでした。
幼いディックはパニックになりました。どうやって罠から抜けたのか覚えていません。
その後ディックは、怪我と精神的なストレスで何日間も寝込んでしまいました。
成長して、あの物語が人間に危害を加えないようにとする教材であることを理解できるようになってからも、あの時に感じた恐怖が消えることはありませんでした。
トラウマになってしまったのです。
なので、人間の町に住むなんてディックには到底無理な話でした。
ディックは、家族と離れて一人で暮らすことになっても、人間と関わりたくないと思ったのです。
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
猫のお菓子屋さん
水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。
毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。
お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。
だから、毎日お菓子が変わります。
今日は、どんなお菓子があるのかな?
猫さんたちの美味しい掌編集。
ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。
顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる