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番外編
番外編 探し物
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舞踏会が終わり、ティナリアとルイは海へ帰る途中です。
ヒューリックは「遅いし、城に泊まっていって良いよ」と言ってくれましたが、人魚は海の生き物なので、やはり海が恋しい二人は、その申し出を丁寧に断りました。
その代わり、今度また会う約束をしました。
「そういえば、ローズマリーさんの落とし物が指輪ってよくわかったね」
砂浜を手を繋いで歩いていると、ふと思い出したように、ティナリアがルイに尋ねました。
「まあ、なにか大切なものだろうなっていうのは分かってたから」
「どうやって、探したの?」
ティナリアは興味津々な瞳でルイに聞きます。
「隠すことでもないから良いけど……」
そういってルイは、話始めました。
ローズマリーに「ちょっと用事を思い出したので出てきます」と言ってお城を出たあと、ルイは彼女が倒れていたゴツゴツとした岩場に行きました。
そこで、小さなお魚ややどかりに「ここで倒れていた女の子が探していたものが何か知らない?」と聞いたのです。
といっても、人間には興味がなかったり、人間は怖いので近づいて来たら逃げると教えられている海の生き物たちです。ルイの期待する返事には、なかなか行き着きません。そもそも人間の姿のルイを見ると逃げようとするので、仕方なしにルイは一旦人魚に戻りました。
そして何十匹か同じ質問をしていると、いくつか話を聞くことができました。
「女の子が何かを追いかけていたよ」
「鳥を追いかけてたんじゃない?」
「そういえば、何か落として飛んで行った気がする」
「キラキラ光ってた」
ローズマリーが話してくれたことと一致しました。
ルイは「キラキラ光ってた」と教えてくれた黄色いお魚に話しかけます。
「ねえ、そのキラキラ光ってたものって、どこに落ちたかわかる?」
「うん、わかるよ!」
元気いっぱいに答えてくれた黄色いお魚の案内で、ルイは海に潜りキラキラ光るものを探すことにしました。
「あれ? ここに落ちてたのにな?」
キラキラ光るものが落ちていたはずの場所に来た黄色いお魚は首を傾げます。
「本当だよ。ここにあったんだよ。嘘じゃないよ」
黄色いお魚は「あれ? あれ?」とクルクルと泳ぎながら必死に言います。
「大丈夫。嘘だなんて思ってないよ。たぶん、ここは潮の動きが速いから流されてしまったんだよ。探してみるね」
嘘つきだと思われていないか心配してしまった黄色いお魚は、ルイの返事にホッしたようで「僕も、一緒に探してあげるね」と言います。
一人で探すよりも二人(?)で探す方が見つかる可能性が高いです。それにルイはキラキラ光るものが何か見ていませんが、黄色いお魚は見ているので、心強い助っ魚でした。
石の下や珊瑚の隙間、砂に隠れる平べったいお魚の下まで、ルイと黄色いお魚は探していきますが、なかなか見つかりません。
この大きな海の中です。思ったよりも遠くに流されてしまったのかもしれません。もし、大きなお魚にエサと間違えられて食べられていたら、もう探しようもありません。
「見つからないかな」
もし見つからなくても、ローズマリーとヒューリックを仲良くさせる方法はあります。だけど、怖い思いまでして探しに来たということはローズマリーにとっては、とても大切な物だったはずなのです。
ルイにも大切にしているものがあります。もし、それを無くしてしまったら、すごくショックで落ち込むと思いました。なので、見つけてあげたいと思ったのです。
「もう少し探してみよう──あっ」
もしかしたら見落としがあるかもと振り返ってたルイは、岩の隙間にキラリと光るものを見つけました。さっきも探した場所でしたが、反対側だったので見えなかったようです。近づいて手に取ってみると、それは小さな指輪でした。
「ねえ、キラキラしたものって、これだった?」
少し遠くの場所を探してくれている黄色いお魚に声をかけます。
「あー! それだよ。それ。僕が見たキラキラするもの!」
ローズマリーの落としたものは、この小さな指輪で間違いなさそうです。
「見つかって良かった!」
黄色いお魚は自分のことのように喜んでくれました。
「ありがとう。君のおかげだよ」
ルイは黄色いお魚にお礼をいうと、持っていた小さいお魚用のエサをあげて、また人間になる薬を飲んで地上に上がりました。
「──で、またお城に戻ったんだよ」
ルイの話をティナリアは「うん、うん」と相づちを打ちながら聞いていました。
「そうだったんだぁ」
ティナリアは、一緒にいない間のルイの話が聞けて嬉しいようです。そして、ルイの優しさに心が温かくなりました。
「ところで、ルイの大切にしてるものって何?」
ティナリアは気になったこと聞きます。
「それは秘密」
ティナリアの質問に、ルイは即答しました。「えー、教えてよ」とティナリアはしつこく聞いてきますが、ルイは口を閉ざして教えてくれません。
「それより、またヒューリックさまやローズマリーさんと会う約束できて良かったね」
ルイが分かりやすく話を反らしました。ティナリアは「けちー」と言いながらも「王子さまやローズマリーさんと、また会えるの楽しみだね」と笑顔で答えます。
いつかルイが教えてくれるのを待つことにしたのです。
「いつか、教えてね」
「……いつか、ね」
ルイの返事に満足したティナリアは、にっこり笑います。
それからも、他愛のない話をしながら、二人は海へと帰っていきました。
ヒューリックは「遅いし、城に泊まっていって良いよ」と言ってくれましたが、人魚は海の生き物なので、やはり海が恋しい二人は、その申し出を丁寧に断りました。
その代わり、今度また会う約束をしました。
「そういえば、ローズマリーさんの落とし物が指輪ってよくわかったね」
砂浜を手を繋いで歩いていると、ふと思い出したように、ティナリアがルイに尋ねました。
「まあ、なにか大切なものだろうなっていうのは分かってたから」
「どうやって、探したの?」
ティナリアは興味津々な瞳でルイに聞きます。
「隠すことでもないから良いけど……」
そういってルイは、話始めました。
ローズマリーに「ちょっと用事を思い出したので出てきます」と言ってお城を出たあと、ルイは彼女が倒れていたゴツゴツとした岩場に行きました。
そこで、小さなお魚ややどかりに「ここで倒れていた女の子が探していたものが何か知らない?」と聞いたのです。
といっても、人間には興味がなかったり、人間は怖いので近づいて来たら逃げると教えられている海の生き物たちです。ルイの期待する返事には、なかなか行き着きません。そもそも人間の姿のルイを見ると逃げようとするので、仕方なしにルイは一旦人魚に戻りました。
そして何十匹か同じ質問をしていると、いくつか話を聞くことができました。
「女の子が何かを追いかけていたよ」
「鳥を追いかけてたんじゃない?」
「そういえば、何か落として飛んで行った気がする」
「キラキラ光ってた」
ローズマリーが話してくれたことと一致しました。
ルイは「キラキラ光ってた」と教えてくれた黄色いお魚に話しかけます。
「ねえ、そのキラキラ光ってたものって、どこに落ちたかわかる?」
「うん、わかるよ!」
元気いっぱいに答えてくれた黄色いお魚の案内で、ルイは海に潜りキラキラ光るものを探すことにしました。
「あれ? ここに落ちてたのにな?」
キラキラ光るものが落ちていたはずの場所に来た黄色いお魚は首を傾げます。
「本当だよ。ここにあったんだよ。嘘じゃないよ」
黄色いお魚は「あれ? あれ?」とクルクルと泳ぎながら必死に言います。
「大丈夫。嘘だなんて思ってないよ。たぶん、ここは潮の動きが速いから流されてしまったんだよ。探してみるね」
嘘つきだと思われていないか心配してしまった黄色いお魚は、ルイの返事にホッしたようで「僕も、一緒に探してあげるね」と言います。
一人で探すよりも二人(?)で探す方が見つかる可能性が高いです。それにルイはキラキラ光るものが何か見ていませんが、黄色いお魚は見ているので、心強い助っ魚でした。
石の下や珊瑚の隙間、砂に隠れる平べったいお魚の下まで、ルイと黄色いお魚は探していきますが、なかなか見つかりません。
この大きな海の中です。思ったよりも遠くに流されてしまったのかもしれません。もし、大きなお魚にエサと間違えられて食べられていたら、もう探しようもありません。
「見つからないかな」
もし見つからなくても、ローズマリーとヒューリックを仲良くさせる方法はあります。だけど、怖い思いまでして探しに来たということはローズマリーにとっては、とても大切な物だったはずなのです。
ルイにも大切にしているものがあります。もし、それを無くしてしまったら、すごくショックで落ち込むと思いました。なので、見つけてあげたいと思ったのです。
「もう少し探してみよう──あっ」
もしかしたら見落としがあるかもと振り返ってたルイは、岩の隙間にキラリと光るものを見つけました。さっきも探した場所でしたが、反対側だったので見えなかったようです。近づいて手に取ってみると、それは小さな指輪でした。
「ねえ、キラキラしたものって、これだった?」
少し遠くの場所を探してくれている黄色いお魚に声をかけます。
「あー! それだよ。それ。僕が見たキラキラするもの!」
ローズマリーの落としたものは、この小さな指輪で間違いなさそうです。
「見つかって良かった!」
黄色いお魚は自分のことのように喜んでくれました。
「ありがとう。君のおかげだよ」
ルイは黄色いお魚にお礼をいうと、持っていた小さいお魚用のエサをあげて、また人間になる薬を飲んで地上に上がりました。
「──で、またお城に戻ったんだよ」
ルイの話をティナリアは「うん、うん」と相づちを打ちながら聞いていました。
「そうだったんだぁ」
ティナリアは、一緒にいない間のルイの話が聞けて嬉しいようです。そして、ルイの優しさに心が温かくなりました。
「ところで、ルイの大切にしてるものって何?」
ティナリアは気になったこと聞きます。
「それは秘密」
ティナリアの質問に、ルイは即答しました。「えー、教えてよ」とティナリアはしつこく聞いてきますが、ルイは口を閉ざして教えてくれません。
「それより、またヒューリックさまやローズマリーさんと会う約束できて良かったね」
ルイが分かりやすく話を反らしました。ティナリアは「けちー」と言いながらも「王子さまやローズマリーさんと、また会えるの楽しみだね」と笑顔で答えます。
いつかルイが教えてくれるのを待つことにしたのです。
「いつか、教えてね」
「……いつか、ね」
ルイの返事に満足したティナリアは、にっこり笑います。
それからも、他愛のない話をしながら、二人は海へと帰っていきました。
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お読み頂き、ありがとうございます
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