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本編
11 ティナリアの特技
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コンテストは至ってシンプルなものでした。
壇上に上がった女の子たちが、一人ずつ自己紹介と、得意なことを披露するというものです。
「絶対に人魚だってことがバレないようにしてよ」
運営の人と一緒に壇上に向かうティナリアに、ルイは小声で言います。人魚だとバレたら大騒ぎになってしまいます。それはティナリアも充分分かっているはずですが、一応念のためです。
「分かってるよ。大丈夫!」
ティナリアは笑顔で答えると、元気よく壇上に上がって行きました。
可愛い女の子たちが、次々に自分の特技を披露していきます。
歌う女の子。
詩を朗読する女の子。
手品で壇上に花を降らせる女の子。
みんな色々な特技を持っています。
(私は何をしようかなぁ……)
飛び入り参加のティナリアの出番は最後です。何をするか決めずに付いてきたので、女の子たちの特技を観ながら考えます。
(そうだ、アレにしよう)
何をするか決めたところで、丁度ティナリアの番になりました。
ティナリアは壇上の真ん中まで行くと、にっこりと笑顔で、見ている人たちに手を振ります。
その笑顔は見ているだけで元気になれるような魅力がありました。
「ティナリアって言います。今日は初めてお祭りに来れて、とっても楽しいです。何をしようか迷ったんだけど、私の特技と言ったら元気に舞うことなので、踊ろうと思います!」
ティナリアは海の中で自由に泳ぎ舞うのが大好きなのです。
ここは水中ではないし、人魚の姿ではありませんが、きっと大丈夫だと思いました。陸に上がってから歩いたり、走ったりして両足の感覚にも慣れてきました。
「ルイ、歌って」
突然の名指しに、壇の近くにいたルイはもちろん驚きます。
しかし、ティナリアの突拍子もない行動はいつもの事です。それに慣れきっているルイは、やれやれといった表情でティナリアの好きな詩を歌い始めました。
もちろん人魚の力の籠った詩ではなく、普通に。
ルイの歌声に合わせて、ティナリアはタンッと足を跳ねらせ、躍り始めます。水色のキレイな髪は、直接陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えます。すべるように滑らかな動きで舞うティナリアは、ルイの歌声と相まって、とても神秘的です。
短い躍りが終わると、会場はワッと歓声で包まれました。
壇上にいる他の女の子たちもティナリアに拍手を送ってくれています。
「ありがとう!!」
ティナリアは満面の笑みで拍手に応えながら、他の女の子たちの場所へ戻りました。
それからすぐにコンテストの表彰が始まりました。
受賞者には王子さまから花が送られるそうです。
王子さまは、ティナリアと同じくらいの年頃で、とても整った──つまりカッコいい男の子でした。
色々な賞の受賞がされ、女の子たちは顔を薄桃色に染めながら王子さまから花を受け取っています。
最後にコンテストの優勝者の名前が呼ばれました。
優勝者はティナリアでした。
名前を呼ばれたティナリアが、王子さまの前に行くと、水色の可愛らしい花が差し出されました。
「優勝した君を、今夜お城で開かれる舞踏会に招待するよ。良かったら歌ってくれた友達と一緒に来てくれないかな」
王子さまは、ティナリアに笑顔で言います。友達と言ったときに、ちらりとルイの事を見た気がしました。
お祭りの後は海に帰る予定でしたが、お城の舞踏会に参加するという、予想外の予定ができてしまいました。
壇上に上がった女の子たちが、一人ずつ自己紹介と、得意なことを披露するというものです。
「絶対に人魚だってことがバレないようにしてよ」
運営の人と一緒に壇上に向かうティナリアに、ルイは小声で言います。人魚だとバレたら大騒ぎになってしまいます。それはティナリアも充分分かっているはずですが、一応念のためです。
「分かってるよ。大丈夫!」
ティナリアは笑顔で答えると、元気よく壇上に上がって行きました。
可愛い女の子たちが、次々に自分の特技を披露していきます。
歌う女の子。
詩を朗読する女の子。
手品で壇上に花を降らせる女の子。
みんな色々な特技を持っています。
(私は何をしようかなぁ……)
飛び入り参加のティナリアの出番は最後です。何をするか決めずに付いてきたので、女の子たちの特技を観ながら考えます。
(そうだ、アレにしよう)
何をするか決めたところで、丁度ティナリアの番になりました。
ティナリアは壇上の真ん中まで行くと、にっこりと笑顔で、見ている人たちに手を振ります。
その笑顔は見ているだけで元気になれるような魅力がありました。
「ティナリアって言います。今日は初めてお祭りに来れて、とっても楽しいです。何をしようか迷ったんだけど、私の特技と言ったら元気に舞うことなので、踊ろうと思います!」
ティナリアは海の中で自由に泳ぎ舞うのが大好きなのです。
ここは水中ではないし、人魚の姿ではありませんが、きっと大丈夫だと思いました。陸に上がってから歩いたり、走ったりして両足の感覚にも慣れてきました。
「ルイ、歌って」
突然の名指しに、壇の近くにいたルイはもちろん驚きます。
しかし、ティナリアの突拍子もない行動はいつもの事です。それに慣れきっているルイは、やれやれといった表情でティナリアの好きな詩を歌い始めました。
もちろん人魚の力の籠った詩ではなく、普通に。
ルイの歌声に合わせて、ティナリアはタンッと足を跳ねらせ、躍り始めます。水色のキレイな髪は、直接陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えます。すべるように滑らかな動きで舞うティナリアは、ルイの歌声と相まって、とても神秘的です。
短い躍りが終わると、会場はワッと歓声で包まれました。
壇上にいる他の女の子たちもティナリアに拍手を送ってくれています。
「ありがとう!!」
ティナリアは満面の笑みで拍手に応えながら、他の女の子たちの場所へ戻りました。
それからすぐにコンテストの表彰が始まりました。
受賞者には王子さまから花が送られるそうです。
王子さまは、ティナリアと同じくらいの年頃で、とても整った──つまりカッコいい男の子でした。
色々な賞の受賞がされ、女の子たちは顔を薄桃色に染めながら王子さまから花を受け取っています。
最後にコンテストの優勝者の名前が呼ばれました。
優勝者はティナリアでした。
名前を呼ばれたティナリアが、王子さまの前に行くと、水色の可愛らしい花が差し出されました。
「優勝した君を、今夜お城で開かれる舞踏会に招待するよ。良かったら歌ってくれた友達と一緒に来てくれないかな」
王子さまは、ティナリアに笑顔で言います。友達と言ったときに、ちらりとルイの事を見た気がしました。
お祭りの後は海に帰る予定でしたが、お城の舞踏会に参加するという、予想外の予定ができてしまいました。
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