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本編
13 言葉の刃
しおりを挟む 入学当初は週の半分くらい休んでいたルイシャだが、入学して半年が経つ頃には月に数日休む程度まで学園生活に慣れ、体調管理も上手く出来るようになっていた。
学業の方は今のところ問題なく、先日行われたテストでは全教科平均点より上の点数を採れたので安心している。
気になる点があるとすれば、仲の良い友人が居ないことだった。
(休むことが多かったから仕方がないのだけど……)
入学当初体調を崩して休みがちだったルイシャは、見事に友人作りの機会を逃してしまったのだ。気がつけば既に仲の良いグループが出来上がっていた。今さらそこに入るコミュニケーション能力をルイシャは持ち合わせていなかった。
クラスメイトたちは親切で、困っていれば助けてくれるのは幸いだったが、友人と呼べる者が居ないのは寂しい気持ちになるルイシャだった。
そんな友人の居ないルイシャが、カインとジェイスを除いて一番話をする相手といえばクロエだった。
放課後、生徒会室に行けば顔を合わせる相手なので必然的といえばそうなのだが、前回のやり取りがあって少し苦手意識がルイシャにはあった。
それに、役員としてカインの隣で話しているクロエの姿は乙女ゲームの映像と重なって、とても複雑な気持ちになった。
クロエがカインに特別接近しているわけではない。ジェイスや他の役員たちとも同じ距離感で話している。本当に役員としての関わりだと、見ていれば分かる。
ルイシャに対しても普通に笑顔で話しかけてくれている。
(それなのに嫉妬するなんて、彼女にもカイン様にも失礼だわ)
そう思っても、モヤモヤする気持ちは払拭出来なかった。
時は流れ、季節外れの寒さが連日続いた。
このような寒暖の差が激しい時は体調を崩しやすいため、ルイシャはいつも以上に気を付けていたが、やはり熱を出してしまった。
久しぶりにあの絶妙な色と味と臭いの薬湯のお世話にもなった。
幼少期に比べて体力があるため、すぐに熱は下がり、何日も寝込むことはなかった。
心配してお見舞いに来てくれたカインも、思ったより元気そうなルイシャの様子をみて安心した表情を浮かべていた。
「コルトンさん、体の調子は大丈夫ですか?」
二日休んで学園に登校し、いつものように放課後は生徒会室へ行く。すると、ルイシャに気が付いたクロエが近づいてきて話しかけてきた。
少し苦手意識を感じていたが、生徒会室に行く度に話していれば慣れてくるもので、今ではルイシャも普通にクロエと会話する仲になっていた。
今のルイシャとクロエは、知り合い以上友人未満という微妙な関係だった。
「ええ、もう大丈夫です」
「それなら良かった。コルトンさん、体が弱いと聞いていたので気になってたんです」
ルイシャの返事を聞いて、にこりと表情を崩すクロエの様子は、本当に体調を案じてくれていたようだった。
しかし、続いた言葉にルイシャの胸はズキッと刃物が刺さったように痛んだ。
「最近寒かったですもんね。季節の変化くらいで体調を崩さないように、もっと健康に気を付けないと。会長も心配そうでした」
「そう、ですね」
絞り出すように返事をしたが、込み上げてきた涙でルイシャの視界が滲む。
(そんなこと、言われなくても私が一番わかっているわ。私だって、もっと健康になりたいのに……)
「すみません、ちょっと」
クロエに涙を見せたくなくて、ルイシャは急いで立ち上がると、小走りで生徒会室を出た。
背後で「え、コルトンさん?」とクロエの戸惑った声が聞こえたが、振り返ることは出来なかった。
学業の方は今のところ問題なく、先日行われたテストでは全教科平均点より上の点数を採れたので安心している。
気になる点があるとすれば、仲の良い友人が居ないことだった。
(休むことが多かったから仕方がないのだけど……)
入学当初体調を崩して休みがちだったルイシャは、見事に友人作りの機会を逃してしまったのだ。気がつけば既に仲の良いグループが出来上がっていた。今さらそこに入るコミュニケーション能力をルイシャは持ち合わせていなかった。
クラスメイトたちは親切で、困っていれば助けてくれるのは幸いだったが、友人と呼べる者が居ないのは寂しい気持ちになるルイシャだった。
そんな友人の居ないルイシャが、カインとジェイスを除いて一番話をする相手といえばクロエだった。
放課後、生徒会室に行けば顔を合わせる相手なので必然的といえばそうなのだが、前回のやり取りがあって少し苦手意識がルイシャにはあった。
それに、役員としてカインの隣で話しているクロエの姿は乙女ゲームの映像と重なって、とても複雑な気持ちになった。
クロエがカインに特別接近しているわけではない。ジェイスや他の役員たちとも同じ距離感で話している。本当に役員としての関わりだと、見ていれば分かる。
ルイシャに対しても普通に笑顔で話しかけてくれている。
(それなのに嫉妬するなんて、彼女にもカイン様にも失礼だわ)
そう思っても、モヤモヤする気持ちは払拭出来なかった。
時は流れ、季節外れの寒さが連日続いた。
このような寒暖の差が激しい時は体調を崩しやすいため、ルイシャはいつも以上に気を付けていたが、やはり熱を出してしまった。
久しぶりにあの絶妙な色と味と臭いの薬湯のお世話にもなった。
幼少期に比べて体力があるため、すぐに熱は下がり、何日も寝込むことはなかった。
心配してお見舞いに来てくれたカインも、思ったより元気そうなルイシャの様子をみて安心した表情を浮かべていた。
「コルトンさん、体の調子は大丈夫ですか?」
二日休んで学園に登校し、いつものように放課後は生徒会室へ行く。すると、ルイシャに気が付いたクロエが近づいてきて話しかけてきた。
少し苦手意識を感じていたが、生徒会室に行く度に話していれば慣れてくるもので、今ではルイシャも普通にクロエと会話する仲になっていた。
今のルイシャとクロエは、知り合い以上友人未満という微妙な関係だった。
「ええ、もう大丈夫です」
「それなら良かった。コルトンさん、体が弱いと聞いていたので気になってたんです」
ルイシャの返事を聞いて、にこりと表情を崩すクロエの様子は、本当に体調を案じてくれていたようだった。
しかし、続いた言葉にルイシャの胸はズキッと刃物が刺さったように痛んだ。
「最近寒かったですもんね。季節の変化くらいで体調を崩さないように、もっと健康に気を付けないと。会長も心配そうでした」
「そう、ですね」
絞り出すように返事をしたが、込み上げてきた涙でルイシャの視界が滲む。
(そんなこと、言われなくても私が一番わかっているわ。私だって、もっと健康になりたいのに……)
「すみません、ちょっと」
クロエに涙を見せたくなくて、ルイシャは急いで立ち上がると、小走りで生徒会室を出た。
背後で「え、コルトンさん?」とクロエの戸惑った声が聞こえたが、振り返ることは出来なかった。
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