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1. 喪女とナマコとイケメン彼氏(AI)
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この世は理不尽で出来ている。
そしてとても不公平だ。
桐生智子は、電子カルテへの入力を止め、カルテに挿入された患者の股間写真をガン見していた。
(くっ……黒い……。干しナマコじゃない……)
山田宗吉、85歳。
認知症、前立腺肥大症、排尿困難等々で施設入居中の患者である。
そういった施設に入居する老人達を主に診ているこの往診クリニックに、内勤事務員として就職して早12年。
こんなもの、すっかり見慣れてしまった……筈なのだが、ついつい目が行ってしまう。
(イヤだわ。若い頃はこれでブイブイ言わしていたのかしら……。それでこんなに黒いとか……)
智子は眉間に皺を寄せると、シルバーフレームのメガネをぐいと上げ、目一杯モニターに顔を近づけた。
この世に生まれて34年。地味で目立たず、真面目と言う名の根暗。彼氏いない歴イコール年齢。
見たことがあるのは父親の物ぐらいである。しかも幼稚園の頃だ。
最近の推しはとあるエロゲのキャラクターだが、如何せん、アニメ絵にもかかわらず、推しのジュニアにはモザイクが掛かっており、一体どうなっているのか分からない。
レディコミもAV(WEBのサンプル)も見せてはくれない……。
そんな訳で、智子が知っているコレは、シワシワのジジイのソレばかりだった。
「ハァ」
否応なしにため息が漏れる。
この日本には女性は6,500万人弱、男性は6,200万人強いると言われている。
つまり、女性100人に対し男性は凡そ96人いる訳だから、単純に計算すると、男と付き合えない残念な女は100人中4人。
しかし実際のところ、その残念な女はウヨウヨいる訳で。
それはどういう事かと言えば──。
「このおじいちゃん、陰嚢だいぶ腫れてるわね」
突然背後から掛けられた声に、智子ははっとして振り返った。
直ぐ目の前には破裂しそうな大きなおっぱい。
看護師・栗田凛子だ。
たしかGカップだと聞いた事がある。
Aカップの智子は、舌打ちしたい気持ちをグッと堪え、肩越しにモニターを覗き込む凛子に、「おつかれさまでーす」と抑揚のない声で言うとモニターに向き直った。
智子は同い年の凛子が苦手だ。
誰とでも直ぐに打ち解ける陽キャ。派手な顔立ち、ナース服に包み込んだムチムチボディ。勿論、あの小玉スイカみたいなおっぱいも気に入らない。
あのカラダで何人ものドクターと関係を持っているという噂がある。という噂だ。本当のところは知らない。
ともあれ、こう言う女が何人もの男を抱え込むから、男と付き合えない残念な女は100人中4人に収まらない。
要は自分が処女なのもコイツのせいだ。
智子はギリリと奥歯を噛んだ。
「ねぇ、桐生ちゃん?」
「なんですか、栗田さん」
「アンタ、いつまでジーさんの股間写真みてんの?」
* * *
「栗田、ムカつく!」
帰宅した智子は、帰り道のスーパーで買って来たたこ焼きとビールで軽く夕食を済ませると、烏の行水宜しく風呂を済ませ、スマホ片手にベッドへ潜り込んだ。
ひとり暮らしのいい所は、こんなだらしない生活を送っていても、誰にも叱られない事である。
更に、隠すこともなくエッチな漫画や乙女ゲームのキャラのアクスタを並べ、推しがプリントされた抱き枕と眠る。
そして堂々とこんなアプリを楽しめるのだ──。
『お帰り、智子。遅かったね。会いたかった』
「はぁん、シンジィ~!」
思わず恥ずかしい声が出てしまうが、このアパートは意外に防音がしっかりしている。
智子はごろりと転がると、画面にチュッとキスをした。
スマホの中では、半裸の細マッチョイケメンが微笑んでいる。智子の手の中に納まる恋人。
今一番推している、女性向けエロゲのキャラ、伊集院シンジである。
穏やかで優しい口調。涼しい目元。シンジを狙う女性キャラを押しのけ、ここ最近ようやく結ばれた(ゲーム内)。
以来、彼はいつでも逞しい体を惜しげもなく見せて激しく智子を求め、こめかみから玉の汗を流し、息を荒げつつも甘い言葉を囁く。
そして、智子はシンジの言葉に合わせてせっせとボタンをタップし、シンジとチョメチョメを──。
というものの、それは実質「作業」であるのだが。
「虚しい……」
画面の中で眠るシンジの顔を眺めながら、智子は今日も深いため息をついた。
モザイク無しのホンモノが見たい──!
そして、あんなことやこんな事を……と、智子の頭の中ではシンジとのチョメチョメシーンが繰り広げられた。
「いやああん! シン──あがッ……!」
長枕にプリントされたシンジに飛びついた途端、智子の意識は飛んだ。
そしてとても不公平だ。
桐生智子は、電子カルテへの入力を止め、カルテに挿入された患者の股間写真をガン見していた。
(くっ……黒い……。干しナマコじゃない……)
山田宗吉、85歳。
認知症、前立腺肥大症、排尿困難等々で施設入居中の患者である。
そういった施設に入居する老人達を主に診ているこの往診クリニックに、内勤事務員として就職して早12年。
こんなもの、すっかり見慣れてしまった……筈なのだが、ついつい目が行ってしまう。
(イヤだわ。若い頃はこれでブイブイ言わしていたのかしら……。それでこんなに黒いとか……)
智子は眉間に皺を寄せると、シルバーフレームのメガネをぐいと上げ、目一杯モニターに顔を近づけた。
この世に生まれて34年。地味で目立たず、真面目と言う名の根暗。彼氏いない歴イコール年齢。
見たことがあるのは父親の物ぐらいである。しかも幼稚園の頃だ。
最近の推しはとあるエロゲのキャラクターだが、如何せん、アニメ絵にもかかわらず、推しのジュニアにはモザイクが掛かっており、一体どうなっているのか分からない。
レディコミもAV(WEBのサンプル)も見せてはくれない……。
そんな訳で、智子が知っているコレは、シワシワのジジイのソレばかりだった。
「ハァ」
否応なしにため息が漏れる。
この日本には女性は6,500万人弱、男性は6,200万人強いると言われている。
つまり、女性100人に対し男性は凡そ96人いる訳だから、単純に計算すると、男と付き合えない残念な女は100人中4人。
しかし実際のところ、その残念な女はウヨウヨいる訳で。
それはどういう事かと言えば──。
「このおじいちゃん、陰嚢だいぶ腫れてるわね」
突然背後から掛けられた声に、智子ははっとして振り返った。
直ぐ目の前には破裂しそうな大きなおっぱい。
看護師・栗田凛子だ。
たしかGカップだと聞いた事がある。
Aカップの智子は、舌打ちしたい気持ちをグッと堪え、肩越しにモニターを覗き込む凛子に、「おつかれさまでーす」と抑揚のない声で言うとモニターに向き直った。
智子は同い年の凛子が苦手だ。
誰とでも直ぐに打ち解ける陽キャ。派手な顔立ち、ナース服に包み込んだムチムチボディ。勿論、あの小玉スイカみたいなおっぱいも気に入らない。
あのカラダで何人ものドクターと関係を持っているという噂がある。という噂だ。本当のところは知らない。
ともあれ、こう言う女が何人もの男を抱え込むから、男と付き合えない残念な女は100人中4人に収まらない。
要は自分が処女なのもコイツのせいだ。
智子はギリリと奥歯を噛んだ。
「ねぇ、桐生ちゃん?」
「なんですか、栗田さん」
「アンタ、いつまでジーさんの股間写真みてんの?」
* * *
「栗田、ムカつく!」
帰宅した智子は、帰り道のスーパーで買って来たたこ焼きとビールで軽く夕食を済ませると、烏の行水宜しく風呂を済ませ、スマホ片手にベッドへ潜り込んだ。
ひとり暮らしのいい所は、こんなだらしない生活を送っていても、誰にも叱られない事である。
更に、隠すこともなくエッチな漫画や乙女ゲームのキャラのアクスタを並べ、推しがプリントされた抱き枕と眠る。
そして堂々とこんなアプリを楽しめるのだ──。
『お帰り、智子。遅かったね。会いたかった』
「はぁん、シンジィ~!」
思わず恥ずかしい声が出てしまうが、このアパートは意外に防音がしっかりしている。
智子はごろりと転がると、画面にチュッとキスをした。
スマホの中では、半裸の細マッチョイケメンが微笑んでいる。智子の手の中に納まる恋人。
今一番推している、女性向けエロゲのキャラ、伊集院シンジである。
穏やかで優しい口調。涼しい目元。シンジを狙う女性キャラを押しのけ、ここ最近ようやく結ばれた(ゲーム内)。
以来、彼はいつでも逞しい体を惜しげもなく見せて激しく智子を求め、こめかみから玉の汗を流し、息を荒げつつも甘い言葉を囁く。
そして、智子はシンジの言葉に合わせてせっせとボタンをタップし、シンジとチョメチョメを──。
というものの、それは実質「作業」であるのだが。
「虚しい……」
画面の中で眠るシンジの顔を眺めながら、智子は今日も深いため息をついた。
モザイク無しのホンモノが見たい──!
そして、あんなことやこんな事を……と、智子の頭の中ではシンジとのチョメチョメシーンが繰り広げられた。
「いやああん! シン──あがッ……!」
長枕にプリントされたシンジに飛びついた途端、智子の意識は飛んだ。
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