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第三章
4.5 幕間:主任といっしょ
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その日の晩──。
玄関のドアを開けると、翔平が立っていた。
「何故いる」
「ムフ。来ちゃいました」
翔平の含み笑いに、氷室は眉間に皺を寄せた。
「呼んでない」
「いいじゃないですか。一緒に飲みたいなと思ったんですよ~」
言いながらスーパーの袋を掲げ、無遠慮に氷室の部屋を覗き込む。
「何故ウチが分かった」
「竹さんが教えてくれました! おっ邪魔しまーす。わっ! キレイ! いい匂いがする!」
翔平は氷室の腕をすり抜けると、すたすたと部屋の中へと入って行く。
氷室は深くため息をつきながら、ドアを閉めた。
「さすが主任、めっちゃ片付いてる!」
翔平は、氷室が勧める前にソファーにちょこんと腰を下ろすと、ガサガサと袋からビールやチューハイを出し、コーヒーテーブルに並べた。
「おつまみは冷凍唐揚げ~! ってことで、チンしてください」
「ったく……しょうがないな」
氷室は翔平から冷凍唐揚げを受け取ると、皿に並べて電子レンジに入れた。
そして冷蔵庫を開けると、つまみになる物を探す。
切り落としのチャーシューとメンマの瓶、パックの刻み葱があった。
それらをガラスのボウルに入れ、ごま油、鶏がらスープの素、うま味調味料を適量入れて混ぜ、最後に黒胡椒を挽く。
あっという間に一品出来上がりである。
「えっ? えっ? なにそれ。美味しそう!」
いつの間にか翔平が隣で覗き込んでいた。
そして魚焼きグリルを開ける。
そこでは、スキレットの中で、ジュワジュワと音を立てる、オイルサーディンと玉ねぎのガーリックグリルがあった。
「イヤー! めっちゃいい匂い!」
翔平はその場でじたじたと足を踏み鳴らして喜んでいる。
氷室はミトンを嵌めながら、嘆息した。
「今日はこれでひとり、一杯やろうと思ってたんだがな」
「ふたりになっちゃいましたねー! 良かったですねー!」
何が良かったんだか……。
氷室はがっくりと肩を落とした。
* * *
「で、森崎は何も語らずですか。んーおいし」
翔平は焼き豚メンマを頬張ると、レモンサワーで流し込んだ。
翔平の腹がこの程度で膨れるはずがない。
「絶対何か隠していると思うけどな」
そう言いながら、氷室は立ち上がった。
冷凍庫からご飯を出して解凍すると、それで握り飯を作ってやる。
そしてその傍らで湯を沸かし、インスタントラーメンを茹で始めた。
「ところでお前、随分飲んでるけど、帰りどうするんだ?」
「泊まる」
「は?」
氷室の手から、握り飯がぼとりと落ちた。
「なんだと?」
「しゅにんのおうちにお泊りするー! かえらにゃいー! かえらにゃいぞおおおお!」
翔平は顔を真っ赤にして床に転がり、おもちゃを買って貰えないと暴れる子供のように体をばたつかせた。
とんでもない大トラを家に入れてしまった。
そう後悔する頃には、リビングで大きな子供がいびきをかいていた。
玄関のドアを開けると、翔平が立っていた。
「何故いる」
「ムフ。来ちゃいました」
翔平の含み笑いに、氷室は眉間に皺を寄せた。
「呼んでない」
「いいじゃないですか。一緒に飲みたいなと思ったんですよ~」
言いながらスーパーの袋を掲げ、無遠慮に氷室の部屋を覗き込む。
「何故ウチが分かった」
「竹さんが教えてくれました! おっ邪魔しまーす。わっ! キレイ! いい匂いがする!」
翔平は氷室の腕をすり抜けると、すたすたと部屋の中へと入って行く。
氷室は深くため息をつきながら、ドアを閉めた。
「さすが主任、めっちゃ片付いてる!」
翔平は、氷室が勧める前にソファーにちょこんと腰を下ろすと、ガサガサと袋からビールやチューハイを出し、コーヒーテーブルに並べた。
「おつまみは冷凍唐揚げ~! ってことで、チンしてください」
「ったく……しょうがないな」
氷室は翔平から冷凍唐揚げを受け取ると、皿に並べて電子レンジに入れた。
そして冷蔵庫を開けると、つまみになる物を探す。
切り落としのチャーシューとメンマの瓶、パックの刻み葱があった。
それらをガラスのボウルに入れ、ごま油、鶏がらスープの素、うま味調味料を適量入れて混ぜ、最後に黒胡椒を挽く。
あっという間に一品出来上がりである。
「えっ? えっ? なにそれ。美味しそう!」
いつの間にか翔平が隣で覗き込んでいた。
そして魚焼きグリルを開ける。
そこでは、スキレットの中で、ジュワジュワと音を立てる、オイルサーディンと玉ねぎのガーリックグリルがあった。
「イヤー! めっちゃいい匂い!」
翔平はその場でじたじたと足を踏み鳴らして喜んでいる。
氷室はミトンを嵌めながら、嘆息した。
「今日はこれでひとり、一杯やろうと思ってたんだがな」
「ふたりになっちゃいましたねー! 良かったですねー!」
何が良かったんだか……。
氷室はがっくりと肩を落とした。
* * *
「で、森崎は何も語らずですか。んーおいし」
翔平は焼き豚メンマを頬張ると、レモンサワーで流し込んだ。
翔平の腹がこの程度で膨れるはずがない。
「絶対何か隠していると思うけどな」
そう言いながら、氷室は立ち上がった。
冷凍庫からご飯を出して解凍すると、それで握り飯を作ってやる。
そしてその傍らで湯を沸かし、インスタントラーメンを茹で始めた。
「ところでお前、随分飲んでるけど、帰りどうするんだ?」
「泊まる」
「は?」
氷室の手から、握り飯がぼとりと落ちた。
「なんだと?」
「しゅにんのおうちにお泊りするー! かえらにゃいー! かえらにゃいぞおおおお!」
翔平は顔を真っ赤にして床に転がり、おもちゃを買って貰えないと暴れる子供のように体をばたつかせた。
とんでもない大トラを家に入れてしまった。
そう後悔する頃には、リビングで大きな子供がいびきをかいていた。
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