聖女として誘拐されましたが、字幕の人はいい仕事をしてました!

隅野せかい

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ゆうやけこやけで帰れない

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「ん、じゃ、また明日」
「じゃあね。宿題忘れないでね!」
「それはアタシのセリフ! いつも写してすませんなよ!」
「善処します!」

 最寄り駅の前で、キヨミと手をふりあって左右に分かれて帰り道。

 夕暮れにそまった住宅街を家へ向かう途中。

「?」

 違和感。

 今は大体午後5時。時報が鳴ってないから少し前。

 いつもこんなに静かだろうか。

 公園や、近くの保育園から子供たちの声が聞こえてくる。はず。

 ってか、車の音もしないんですけど!

 おかしい。

 辺りを見回せば、どこか景色はゆらゆらして見える。

 透明なゼリー越しに見ているみたいに。

 走っている車も妙にゆっくり。

「!」

 やばい。やばい。やばい。

 なにかやばい!

 あたしは本能的に駆け出した!

 だけど、走っても走っても前へ進まない。

「!?」

 異様な気配に頭上を見上げれば、夕暮れの空に、真っ黒な孔が開いていた。

 大きなビルをまるごと呑み込めそうな底なしの孔。

 妙に間延びした音が聞こえてきた。

 これは。5時の時報『ゆうやけこやけでひがくれて』の出だしの音!

 くるり、と、視界がひっくりかえった。

 頭上には、見慣れた住宅街、そして足元には真っ黒な孔。

「なんだってんのよ、もう!」

 あたしは、じたばたしたが、抗うすべなく孔へ落ちていった。
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