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11 わたくしには素敵ないもうとがいる。(義姉視点)

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 それからわたくし、いえ、わたくし達は、フランボワーズがいつこの屋敷にやって来てもあたたかく迎えられるようにすべく心をひとつにしましたわ。

 もし万が一ひょっとして彼女が滞在するようなことがあったら、いつでも大丈夫なように部屋の準備をしましたわ。
 最初は大きな部屋を準備しましたが、平民出身の侍女に『余り広く豪華なお部屋を用意すると、フランボワーズお嬢様には居心地が悪いのではないでしょうか? そもそもあの方は、貴族になりたいと思っていらっしゃらないのですから』といさめられ一同で考え直した結果、本館に豪華で大きめ、質素で大きめ、豪華で中くらい、質素で中くらい、豪華で小さめ、質素で小さめと6つの部屋用意しておけば完璧であろう、という結論に達し、その通りに万事準備しましたのよ。

 フランボワーズはひとりでお風呂に入りたがるのでは、と離れのバスルームを綺麗に改装するべきという意見も出ました。ですが、それは、それだけは断固として退けました。
 だって、そうしたら、フランボワーズはそこでしか入らなくなるに決まっていますもの。わたくしと入ってくれなくなってしまいますわ。
 それくらいは素敵な妹のいる姉のわがままとして許されますわよね?

 それから、わたくしが『呪われたピンクブロンド』の処理に失敗したというのを口実に、男の養子をとってそれに家督を譲れと迫って来た親戚一同を、断固として撃退しましたわ。

 彼らに喋らせるだけ喋らせておいてから、わたくしは言ってやりました。
「貴重なご意見ありがとうございました。ですが、それに何か根拠がおありなんですの?」って。
『ピンクブロンドの呪い』を処理するのに失敗したら、当主の座を譲らねばならない。などという法律はありませんもの。そもそも『ピンクブロンドの呪い』というのがでっち上げなのですけどね。

 わたくしはモンブラン侯爵家の当主です。宗家の当主ですわ。
 向こうのあやふやというか無きに等しい根拠と違って、わたくしは彼らに対して色々と出来るのです。

 それに親戚一同と言いましたが、彼らは一枚岩ではありませんでしたわ。
 愚かな父とあの女が、モンブラン侯爵家を牛耳っていたつもりだったであろう3年間。裏で全ての実務を回していたのはわたくしです。親戚の中には、それを理解する事の出来るだけの知恵をもった者達もおりました。
 わたくしは、3年間の間に彼らを見極め、有能で仕事を任せるに足る幾人かには、関わっている事業で責任ある地位を与え、味方に引き込んでおいたのです。

 つまり彼らがここに押しかけてきた時、勝負は既についていたのですわ。

 わたくしはその場で、当主の地位を我が物にしようと狙う中核の数人が、事業に失敗し借財を重ね、不正に手を染めていたことを暴きました。当然、わたくしが差配している事業に属している者は責任をとって降格させ、中には別室に待機していただいていた司直の手にそのまま引き渡した者もおりました。
 そんな人間らにモンブラン侯爵家を任せるわけには参りませんよね。

 残った者達は烏合の衆。
 徒党どもが次々と処分されたのを見て震え上がり、自分らは事態をよく知らず引きずられただけだと自己弁護をはじめました。わたくしは寛大に許してやりましたが、次の機会はないと釘をさしておきました。
 尤も、次の機会すら与えるつもりはありませんけどね。徐々に彼らをポストから追い払っていくのは決定事項ですもの。

 これにて、あの子が来た時に触りになるようなものの排除は完了。

 幸いなことに、それらの処置は無駄になりませんでしたわ。

 愛しい我が妹フラン……フランボワーズは、この屋敷へ来てくれたのです!
 しかも、わたくしの心得違いを叱ってくれるという、素晴らしい理由で。

 わたくしは昔から、わたくしを臆せず叱ってくれるような、妹が欲しかったのですもの!

 ああ、なんて素晴らしいんでしょう。

 わたくしには、かわいくて愛らしくて勇敢で情に篤くて賢くて美人な最高の妹がいるんですのよ!



    ※     ※     ※    ※


 これにて終わりです。

 最後まで読んでくださってありがとうございました。

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