上 下
49 / 60

00 ヒロインはピンクブロンドを反芻する。(義姉視点)

しおりを挟む
 今日はなんて素晴らしい日であったことでしょう。

 ベッドの中で思い出してしまって、なかなか眠れませんのよ。

 もう二度と会えないと覚悟していたフランボワーズが、この屋敷へ来てくれたのですもの。
 しかも、このわたくしの犯罪的な心得違いを叱るためだけに!

 自分を陥れようと画策し罠をはりめぐらしていた相手の屋敷に乗り込んでくるなんて。
 なんて情が篤くてやさしい子なんでしょう!

 もう二度と、会えないようになりたくなんてありませんでしたわ。

 わたくし、あんなに必死になったのは初めてでしたわ。

 あの子を少しでも引き留めたくて、言葉をもっと交わしてい一心で。
 あの子をいかに素敵で素晴らしいと思っているかを誠心誠意力説し。
 危険はないと判ってもらうために、自分の全てをさらけだす覚悟を決め。
 入浴係の奉公人以外の人前で、はじめて生まれたままの姿をさらしたましたわ。

 恥ずかしさに頭がどうかなってしまいそうでしたが、わたくしが恥ずかしがっては、やさしいあの子は一緒にお風呂に入るのを止めてしまうかもしれませんから、必死に隠していましたのよ。

 大変喜ばしいことに、わたくしの誠意が通じたのでしょう。
 あの子も、わたくしの前で、愛らしく恥じらいながらも生まれたままの姿を見せてくれましたわ。

 ああ、なんて綺麗だったんでしょう!

 あんなに綺麗な子を、わたくし今まで見たことがありませんでしたわ。

 濡れていても判る程、キラキラしててフワフワしてるピンクブロンドの髪。
 遺志が強そうな大きい瞳、引き結ばれていても可憐な唇。華奢なほそい首。
 それなのに、乳房は既にわたくしより大きくて、でもほとんど垂れていなくてツンと上向き。
 きゅっと引き締まった腰。
 やはり美しいピンクブロンドに覆われた脚の付け根。
 やわらかいのに張りのある太もも……
 細部まで繊細でかわいらしい造り。

 愛すべき人柄は判っておりましたが、その上であんなにかわいらしいなんて!
 なんて尊いんでしょう!
 思わず体の隅々まで愛おしんでしまいましたわ。

 わたくしのあふれ出す愛が通じたのか、あの子も身を任せてくれましたわ。
 信頼している相手にしか触れさせてはいけない場所まで無防備にさらけ出し、ゆだねてまでくれましたのよ!

 そのときの、瞳をうるませて愛らしい声をあげる姿が! また、また! もうもうもうですわ!

 いじらしくて、情が篤くて、賢くて、綺麗だなんて、反則ですわ!
 素晴らしい反則ですわ!

 まさに、わたくしが遙か昔に夢見た通りの理想の妹でしたわ。

 あんな素敵さの塊の女の子を見て恍惚としない人がいるでしょうか。いるはずがありませんわ。

 モンブラン侯爵家のためとかそういうのは、どうでもいいですわ。
 愛しい妹として、ただそれだけで、常に側にいてもらいたい。
 一緒に食事をして、一緒に勉強して、一緒にお風呂に入って、一緒に眠りの国へ行きたいですわ!

 あの3年間の間に、わたくしが一度でもあの子を知ろうとすれば、それが叶ったかもしれないというのに……。

 ああ、なんて愚かなわたくし!

 グリーグ学園にも、うちから通ってもらえてたかもしれないというのに……。

 残酷な夕方がやってきて、フランボワーズが帰ってしまいましたわ。
 でも、それを引き留めることはわたくしには出来ませんの。

 だって、それはわたくしの罪。

 3年間も時間があったのに、わたくしはあの子を一度たりとも見ませんでした。

 あの子を『呪われたピンクブロンド』としてしか見ていなかった3年間!

 なんという無駄な時間であったことでしょう……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜

水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」  わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。  ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。  なんということでしょう。  このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。  せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。 ◇8000字程度の短編です ◇小説家になろうでも公開予定です

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...