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30 ピンクブロンドは蛇の巣へ乗り込む
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わきめもふらずに歩きながら、アタシは思った。
アタシはバカかと。
多分、自分が思っているよりバカなのだ。
3つの罠をかいくぐり、4つめの罠もアタシが知らないところで壊れてた。
アタシは『ピンクブロンドの呪い』を生き残った。
なのに自分からアタシを狙う蛇の巣へ足を踏み入れようとしている。
『高等特別裁定所』の件を知ったアンナのパパは、貴族に残されていた抜け道に驚き、かつ激怒してくれた。
『法の上では、貴族も庶民も平等!』で燃えている人だものね。
二度とこんな事がないようにと、お仲間の先生達と『高等特別裁定所』潰しに動き始めてくれた。
同時に、アタシの件をもう一度調べ直してくれて、他に抜け道がないか確認してくれた。
そして、高貴な方々の仰るところの優雅な手段でアタシを破滅させるのは、ほぼ不可能だと結論づけてくれた。
アタシの身は、生まれてこの方こんなに安全だった事はない、という程度には安全なのだ。
それでも、マカロンお嬢様とは、一生関わらないのが安全。
そんなことは判っている。
今のこの瞬間だって、アタシの冷静な部分が『バカはやめろ』と喚いてる。
アンナには古着屋に高等部の制服を探しに行くって嘘をついた。
モンブラン侯爵家に行くなんて言ったら、心配されるに決まっているもの。
アタシじゃなくたって危ない行為だって判ることだから。
だけど足は止まらない。
どうしても言ってやりたいのよ。
アタシは、どんな目にあっても、そんなに簡単には死なないんだからって!
あんな贈り物なんていらない!
アンタからなんてなんにもいらない! ただ放っておいてほしいって!
それに、何が破滅なんだか、ふざけるんじゃないわよ。
こちとらから見れば、何も失っていないじゃない!
破滅したとか、終わったとか悲劇のヒロインみたいぶるお嬢様に、なーにが破滅だって!
破滅ってのはね。
『あーはめついですわ、かなしいですわぁ。おほほ』みたいなもんじゃないのよ!
ドロドロで、惨めで、取り返しがつかないもんのことなのよ!
確かに、グリーグ学園にも、モンブラン侯爵家の破滅と凋落っぷりは伝わって来た。
事情通ぶった下級貴族令息のクラスメート達が、いちいちアタシの方をチラチラ見ながら、評論家面でピーチクパーチク言ってた。
ピンクブロンドを処理するのに失敗してモンブラン侯爵家の権威は失墜。
貴族同士の取引が幾つも解除されたらしいとか、条件を上げられて解約されざるをえなかったとか。
侯爵家を訪ねてくる貴族達は激減し、パーティにも招待されなくなった。
モンブラン侯爵家はもう終わりだって。
みんな、そういうものなのか、高位貴族ってサバイバルだね。大変だねって。
判ったような顔で納得してるフリしてる。
でも、アタシに言わせればバッカバカしい。
だって何も失ってないじゃん!
確かに政治とかそういうのでは不利になったのかもしれない。
お貴族様の中では、居心地が悪くなったかもしれない。
だけど、凄いお屋敷に住んでて、領地も資産もたっぷりあるでしょ!
それを元手にすればなんだって出来るじゃない!
少なくとも新しい明日へやり直しだってできるじゃない!
選択肢はいくらでもあるでしょ!
選択肢自体がなかったアタシから見りゃ、ちょー贅沢よ!
ふっざけんなぁっ! 考えるとやっぱり腹立ってくる!
破滅したんでしょ? だったらこのプレゼント返すから使ったら?
アタシが絶望したら使えっていうんだから! 自分で使ったら?
どうせ自分が使うなんて考えてないから、恩着せがましく使えとかほざけるのよ!
それにしても、まだ肌寒いのに汗かいちゃうくらい歩いてるのにまだ距離がある。
無駄に大きな区画ばっかり。
庭にはえてる木々が、森みたいに茂ってるわ。
お貴族様だって、生きてくのに必要な空間なんて平民と変わらないでしょうに。
そういえば馬車に乗らないでここへ来るのって初めて。
馬車で移動する前提で出来てんのね。
歩きなさいよ! 歩かないからアタシに一発殴られたくらいでダウンしちゃうのよ!
道の石畳は手入れが行き届いててキレイ。
学園の周りなんか、石畳が波打っちゃっても半年は直らない。大違いだ。
雨が降ればぐちゃぐちゃ、日照りだと土埃まみれの娼館街や貧民窟とは別世界。
こんな中、着古した制服着て、汗まみれで歩いているアタシは、とっても場違い。
さぞ、ちっぽけで、みすぼらしく見えるんでしょうね。
そりゃ、片付けたくもなるでしょうよ。
でも!
それでも!
ひとこと言って突き返してやんなきゃ気が済まないのよ!
門前払いされたって入り込んでやる。
居候していた時、いつでも逃げ出せるように、お屋敷をしらべまくったのよね。
それで見つけたのよ。
塀の表面があちこち剥げてて、足がかりになる場所を。
そこから木を伝えば庭に降りられるの。
こんな勘違いでありがた迷惑な贈り物は、絶対に叩き返してやるんだ!
アタシはバカかと。
多分、自分が思っているよりバカなのだ。
3つの罠をかいくぐり、4つめの罠もアタシが知らないところで壊れてた。
アタシは『ピンクブロンドの呪い』を生き残った。
なのに自分からアタシを狙う蛇の巣へ足を踏み入れようとしている。
『高等特別裁定所』の件を知ったアンナのパパは、貴族に残されていた抜け道に驚き、かつ激怒してくれた。
『法の上では、貴族も庶民も平等!』で燃えている人だものね。
二度とこんな事がないようにと、お仲間の先生達と『高等特別裁定所』潰しに動き始めてくれた。
同時に、アタシの件をもう一度調べ直してくれて、他に抜け道がないか確認してくれた。
そして、高貴な方々の仰るところの優雅な手段でアタシを破滅させるのは、ほぼ不可能だと結論づけてくれた。
アタシの身は、生まれてこの方こんなに安全だった事はない、という程度には安全なのだ。
それでも、マカロンお嬢様とは、一生関わらないのが安全。
そんなことは判っている。
今のこの瞬間だって、アタシの冷静な部分が『バカはやめろ』と喚いてる。
アンナには古着屋に高等部の制服を探しに行くって嘘をついた。
モンブラン侯爵家に行くなんて言ったら、心配されるに決まっているもの。
アタシじゃなくたって危ない行為だって判ることだから。
だけど足は止まらない。
どうしても言ってやりたいのよ。
アタシは、どんな目にあっても、そんなに簡単には死なないんだからって!
あんな贈り物なんていらない!
アンタからなんてなんにもいらない! ただ放っておいてほしいって!
それに、何が破滅なんだか、ふざけるんじゃないわよ。
こちとらから見れば、何も失っていないじゃない!
破滅したとか、終わったとか悲劇のヒロインみたいぶるお嬢様に、なーにが破滅だって!
破滅ってのはね。
『あーはめついですわ、かなしいですわぁ。おほほ』みたいなもんじゃないのよ!
ドロドロで、惨めで、取り返しがつかないもんのことなのよ!
確かに、グリーグ学園にも、モンブラン侯爵家の破滅と凋落っぷりは伝わって来た。
事情通ぶった下級貴族令息のクラスメート達が、いちいちアタシの方をチラチラ見ながら、評論家面でピーチクパーチク言ってた。
ピンクブロンドを処理するのに失敗してモンブラン侯爵家の権威は失墜。
貴族同士の取引が幾つも解除されたらしいとか、条件を上げられて解約されざるをえなかったとか。
侯爵家を訪ねてくる貴族達は激減し、パーティにも招待されなくなった。
モンブラン侯爵家はもう終わりだって。
みんな、そういうものなのか、高位貴族ってサバイバルだね。大変だねって。
判ったような顔で納得してるフリしてる。
でも、アタシに言わせればバッカバカしい。
だって何も失ってないじゃん!
確かに政治とかそういうのでは不利になったのかもしれない。
お貴族様の中では、居心地が悪くなったかもしれない。
だけど、凄いお屋敷に住んでて、領地も資産もたっぷりあるでしょ!
それを元手にすればなんだって出来るじゃない!
少なくとも新しい明日へやり直しだってできるじゃない!
選択肢はいくらでもあるでしょ!
選択肢自体がなかったアタシから見りゃ、ちょー贅沢よ!
ふっざけんなぁっ! 考えるとやっぱり腹立ってくる!
破滅したんでしょ? だったらこのプレゼント返すから使ったら?
アタシが絶望したら使えっていうんだから! 自分で使ったら?
どうせ自分が使うなんて考えてないから、恩着せがましく使えとかほざけるのよ!
それにしても、まだ肌寒いのに汗かいちゃうくらい歩いてるのにまだ距離がある。
無駄に大きな区画ばっかり。
庭にはえてる木々が、森みたいに茂ってるわ。
お貴族様だって、生きてくのに必要な空間なんて平民と変わらないでしょうに。
そういえば馬車に乗らないでここへ来るのって初めて。
馬車で移動する前提で出来てんのね。
歩きなさいよ! 歩かないからアタシに一発殴られたくらいでダウンしちゃうのよ!
道の石畳は手入れが行き届いててキレイ。
学園の周りなんか、石畳が波打っちゃっても半年は直らない。大違いだ。
雨が降ればぐちゃぐちゃ、日照りだと土埃まみれの娼館街や貧民窟とは別世界。
こんな中、着古した制服着て、汗まみれで歩いているアタシは、とっても場違い。
さぞ、ちっぽけで、みすぼらしく見えるんでしょうね。
そりゃ、片付けたくもなるでしょうよ。
でも!
それでも!
ひとこと言って突き返してやんなきゃ気が済まないのよ!
門前払いされたって入り込んでやる。
居候していた時、いつでも逃げ出せるように、お屋敷をしらべまくったのよね。
それで見つけたのよ。
塀の表面があちこち剥げてて、足がかりになる場所を。
そこから木を伝えば庭に降りられるの。
こんな勘違いでありがた迷惑な贈り物は、絶対に叩き返してやるんだ!
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