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25 ピンクブロンドは未来に夢をふくらませる。

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 それからの半月。
 アタシの生活は平穏に過ぎていった。

 ううん。ちがう。

 確かに平穏だったけど、初めてのことばかりの日々だった。

 外出許可を初めてとって、アンナと初めてお出かけした。

 初めて演劇を見た。
 登場人物のドタバタに、アタシは何にも考えずに笑っていた。

 初めて喫茶店に入った。
 メニューがたくさんあって、すごく迷ってしまった。
 迷えるってことが幸せだった。

 初めてお買い物をした。
 今までだって買い物をしたことはあったけど、それは必要だから調達するってだけだった。
 アンナとふたりで色々お喋りしながらの買い物は楽しかった。

 寮の部屋に帰ってから、買ったアクセサリーをアンナと交換した。

 アタシは、小さな白い花のついた髪留めをアンナに贈った。
 アンナの赤毛に似合っていると思ったからだ。

 アンナは、アタシが贈った髪留めをさっそくつけると、薔薇の花みたいな綺麗なリボンがついた髪飾りをアタシに贈ってくれた。

 高そうだなと思って断ろうと思ったけど……

「いつかフランちゃんが髪を染めないでもいいと思ったらつけてね」

 と言われて、胸が一杯になってしまった。
 大切にしようと思った。

 何も言えなくなったアタシに アンナは笑って。

「またふたりで遊びに行こうね!」

 アタシ達は指切りした。


 期末試験が近づいて来たから、勉強だっておろそかには出来ない。
 いつもならひとりで黙々と勉強するだけだったけど、アンナと友人達の勉強会に混ぜてもらった。

 ここ1年、アンナを介して少しずつだけど付き合いが深まって話すこともある子達だったから、思ったよりも打ち解けられた。みんなグリーグ高等学園に進学が決まっている。

 高等部へ進学したら、アンナ以外の子達とも友達になれるかもしれない……。

 アタシは生まれて初めて、毎日を楽しんでいた。

 明日が来るのが待ち遠しかった。

 明日。

 アタシには明日があるんだ。

 まだ心のどこかで信じきれないけど、明日があるんだ。

 期待しちゃいけない、期待しちゃいけない、って自分に言い聞かせたけど、
 
 アタシは未来の希望に胸を膨らませてしまっていた。

 だから……油断していたのかもしれない。


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