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02 もうひとりの主役は『バカ婚約者』 (俯瞰視点)

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 卑しいピンクブロンドの義妹メスの欲望は、美しく不幸な義姉ヒロインから全てを奪い取るまでとまらない、

 最後の標的は、マカロン嬢の婚約者。
 オペラ侯爵家の令息、ザッハトルテ・オペラだ!


 彼こそが二人目の主役バカ


 ザッハトルテは、顔はそこそこ整っているが頭はからっぽ。
 こういう珍事の登場人物には、お誂え向きのキャラクターだ。
 淑女の中の淑女と呼ばれるマカロン嬢とは全くつりあっていない無能。


 何でも出来るマカロン嬢をうとんじ。
 彼女からの真っ当な忠告を、すべて小うるさい説教と見なすバカさ加減。
 婚約したその瞬間から仲は急速冷凍。
 絶対零度まで冷え切った頃合いで、ピンクブロンドの娘にあっさりと目を奪われ。
 娼館上がりのテクニックにすっかりのぼせあがり、吹き込まれたウソを頭から信じた。

 今や、ザッハトルテの脳内お花畑では、自分こそが騎士の中の騎士。
 義姉である高慢なモンブラン嬢に虐げられるピンクブロンドの乙女バイタを助ける正義の男なのだ。


 今月今夜この場所で、貞淑なマカロン嬢との正しい婚約を破棄して。
 淫らで卑しいピンクブロンドと婚約ハメツ宣言をするつもりなのだ。


 バカが現れた! 正義の男が現れた!


 高貴な方々は、さりげなくバカに注目する。
 片眼鏡モノクルの紳士はよく見えるように微調整し、淑女達は広げた扇子の影から盗み見る。
 これからどんな珍事が見られるかという期待を上品さの仮面に押し隠す。

 そんな周囲の視線に気づかぬまま、正義にのぼせあがったザッハトルテは、ピンクブロンドに急接近。
 透ける肢体や胸の谷間を見て、ゴクリとつばを飲み込む。
 相手が高貴な令嬢なら、それだけでも咎められる行為だが、元娼婦のピンクブロンドには正しい態度だ。


「フランボワーズ! 今夜の君はなんて綺麗なんだ! 女神かと思ったよ!
 ああ、あのいけすかないマカロンに無理矢理させられている姿とは見違えるよ!」


 そうなのだ。

 ピンクブロンドは、正義の男バカの前では、ことさら地味で冴えない服を着ているらしいのだ。

 なんという狡猾さ!

 その知能を、高貴な生まれの方々の礼儀作法を身につける事に使っていれば、三流令嬢に化ける事くらい出来たかもしれないが、それが出来ないからこそ呪われたピンクブロンドなのだ。。

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