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土下座するボクら。

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「殿下のことはお許しください! 先程も申し上げましたように、王妃の座ほしさにわたしが殿下をそそのかしました! 
 純粋な殿下を、こっ、この恥知らずな体をつかい、娼婦のような淫らなふるまいでたらしこんだのです! ですから罰は救いようのない姦婦であるわたしだけにっ!」
「え?」

 テレーズがマリアンヌの足元に土下座してる!?

「だ、だめだ! ボクが君を愛したからだ! 君はそれに応えてくれただけだ!
 それに娼婦のようなふるまいなんかしなかったじゃないか!
 そのドレスだって、ボクが贈ったから仕方なく着てくれただけで、君は進んでおっぱいを見せつけてるわけでもないし!
 今、思い返せば、君は何度もボクから遠ざかろうとした、それをボクが。
 いや、違う。ボクが王太子だから逆らえなかっただけなんだよね!
 ボクが権力をふりまわして無理矢理君を! だからテレーズは助けて欲しい!」

 ボクも這いつくばるように土下座!
 練習してなかったから王者の土下座にはならない!
 だが、テレーズのためにボクが出来ることはこれくらいしかないのだ!

「ちがいます! 私はふしだらにも殿下を誘惑し理性を狂わせたのです!
 わ、わたしは、わざと殿下の前でスカートを破ってふとももを見せつけたりして!」
「それは君が嫌がらせをされてスカートを破られたからじゃないか!
 あのときだって、君は恥ずかしさに真っ赤になってて、そりゃ見たけど、目に焼き付くほど見たけど、でも――」
「そっそれはし、芝居だったんです! わたしは元々、いやしい孤児上がり。
 生き残るために、殿方を誘惑する、みっ淫らで口にするのもおぞましい方法をいっぱい知ってるんです! 身も心も売って人を欺して生きてきたんです!
 わ、わたしは、殿下も、今の両親も、孤児院の院長様も乙女のフリをして欺して――」
「芝居ならそんなにどもったりしないよ! ボクなんか庇わなくていいん――」

 いきなり、パン、と大きな拍手の音が響いた。

「殿下! 殿下! 殿下! テレーズ嬢!」

 パン、パン、パン、と手を打ち鳴らしながら、マリアンヌが声を張り上げた。
 そして一転して子供をあやすような口調で、

「話は最後まで聞いて下さい。予定は未定です。未来はまだ決まってはおりません」
「「なぜ!?」」

 マリアンヌの能面のような顔に、珍しく感情が見えた。

「私はローゼンクランツ殿下が嫌いです」

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