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7 貴女はドブネズミで汚水溜だそうですわよ。
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「な、なっっ、光輝くあの方の足元にも及ばないゴミみたいなブサメンのくせに、わ、私になにほざいてんのよっっ」
まぁ! すごいお顔ですわ。
せっかくのおかわいらしい造りの顔が台無しですわ。
でも、彼女の存在の全否定ですものね。
こんな風に言われたことがなかったんでしょうね。
にしても、背後の黒幕はあの方ですか。
まちがいなく殿下の弟君ですわね。
光輝くあのお方、というのは、あの見てくれ男にのぼせあがった令嬢達の口癖ですもの。
この乳にうまいことをささやいて、殿下を誘惑させたのでしょう。
「そろそろボクの我慢も限界で吐きそうになるのを我慢してるんだ。
でもそれは、彼女が素晴らしすぎるからで、一般的に言って君はまぁそこそこなのかもしれないけどね」
その通りなんでしょうね。
実際、殿下の将来の側近候補の方々はみんなこの女にメロメロみたいですし。
彼らもお気の毒に、この女が退場したら即続けて退場していただくことになりますわね。
だって、殿下の周りにあんな阿婆擦れ――おほん、いけませんわはしたないですわ。
あんな玉の輿目当ての女を近づけたんですもの。当然ですわね。
これでもう側近が変わるのは五度目ですわ。
でも、愚鈍な殿下に愚鈍な側近だと先が思いやられますし。
かといって、利発で将来有望な方々は、殿下を間違いなく軽蔑するので駄目ですし。
それに殿下の弟君もそろそろ目障りですわ。
王妃様の実家ごと潰してさしあげねばならないようですわね。
やっぱり殿下には、わたくしがついていないと駄目ですわね!
べっ、別に、ついていたいからではなくて、王国の安定のために仕方がないからですわ!
「それでもボクから見ると、君はおぞましくしか見えないんだ。
彼女が人間なら、君は下水を徘徊するドブネズミなみだ。
彼女が山奥できらめくきれいな湖なら、君は地下の汚物溜だね。
これ以上耐えられないんだよ。ごめんね。さっさとあっちへ行ってくれないかな」
殿下があんな風に女の子を手で払うなんて!
余程気分が悪くなっているんですわ。
もう! 影に隠れているお付きや侍従どもは何してるんですか!
早くあの女を引き離さないと殿下が! ああ、あんな青ざめたお顔に!
「わ、わたしがそんなのだって言うんですか! なんですかなんなんですか!」
「いくらボクがダメな無能王太子でも、王太子の気分を悪くさせて嘔吐させたら、君は処罰されちゃうと思うんだ。
だからそろそろ引き下がってもらえないかな? そろそろ吐き気が我慢できなくなってきてるんだ。う、うぷ」
いけませんわ!
殿下が胸を苦しげにおさえてうずくまってしまいましたわ!
わたくしは隠れていた場所から飛び出すと、侯爵令嬢らしくしずしずと東屋へ入り。
びっくりしている乳女を礼儀正しくかつ断固として押しのけて、うずくまる殿下の隣に座りました。
「殿下! しっかりしてくださいまし!」
ああもう! こんなに青ざめるまで我慢して……。
まぁ! 気まで喪ってますわ! 大変!
わたくしはうずくまる殿下の頭を抱きしめると、そのまま膝に頭を乗せましたの。
「な、なに突然でてくるのよ! しかもなに当然のように膝枕とかしてるのよ!」
あら? まだいらしたんですの?
判っていらっしゃらないようですわね。
もし殿下が我慢なさらず嘔吐なさっていたら、貴女は王太子を害したということで処罰が下るとこでしたのに。
「こんなのおかしいわよ! あんなに日頃悪口ばっかり言ってるのに!
見せつけるように膝枕とかまでして! 相思相愛のふたりみたいじゃない!
どうしてこんな王太子である以外なんの取り柄もないカスに! そんなに王妃になりたいの!?
なによ私の半分の胸がないくせに! あんたの貧しい胸なんかあの方は褒めないわよ!
――きゃぁぁ、なにするのよ離してぇ!」
乱入してきたお付きの方々が、女を羽交い締めにすると、ずるずると引きずり出していきますわ。
お付きの方々もこれ以上この女を放っておけませんものね。
いくら王家とわたくしの実家の意志があるにしても、王太子とその婚約者を侮辱するのを知っていて放置し続けていたら、何らかの処罰をされるかもしれませんものね。
すでに遅いですけど。
一度口から出た言葉は戻せませんもの。
王家が穏便に済まそうとしても、このわたくしが許しませんわ。
筆頭侯爵家が嘗められるわけには参りませんもの。
貴方がたも乳女も殿下の弟君も王妃様もまとめて一切合切大掃除ですわ!
乳女は王族しかも王太子を侮辱、筆頭侯爵家の令嬢で王太子の婚約者であるわたくしを侮辱。
このふたつの罪で、徒刑囚のほうがマシと評判の修道院送りですわね。
お付きの方々は、それを止めようとしなかった罪で謹慎、廃嫡。
殿下の弟君は、乳女をそそのかし王太子の位を簒奪しようとした咎で、離宮に幽閉というところかしら。
今までは、面倒なので見逃していましたけど、これで三度目ですものね。
もちろん、前の2回の証拠は、既にばっちり握ってますのよ。
王妃様は、弟君をそそのかしていたので、罪を逃れませんわ。
病を得て、辺境で療養といったところですわね。
これでさっぱりしますわ。
断じて、胸を馬鹿にされた恨みではありませんわよ!
まぁ! すごいお顔ですわ。
せっかくのおかわいらしい造りの顔が台無しですわ。
でも、彼女の存在の全否定ですものね。
こんな風に言われたことがなかったんでしょうね。
にしても、背後の黒幕はあの方ですか。
まちがいなく殿下の弟君ですわね。
光輝くあのお方、というのは、あの見てくれ男にのぼせあがった令嬢達の口癖ですもの。
この乳にうまいことをささやいて、殿下を誘惑させたのでしょう。
「そろそろボクの我慢も限界で吐きそうになるのを我慢してるんだ。
でもそれは、彼女が素晴らしすぎるからで、一般的に言って君はまぁそこそこなのかもしれないけどね」
その通りなんでしょうね。
実際、殿下の将来の側近候補の方々はみんなこの女にメロメロみたいですし。
彼らもお気の毒に、この女が退場したら即続けて退場していただくことになりますわね。
だって、殿下の周りにあんな阿婆擦れ――おほん、いけませんわはしたないですわ。
あんな玉の輿目当ての女を近づけたんですもの。当然ですわね。
これでもう側近が変わるのは五度目ですわ。
でも、愚鈍な殿下に愚鈍な側近だと先が思いやられますし。
かといって、利発で将来有望な方々は、殿下を間違いなく軽蔑するので駄目ですし。
それに殿下の弟君もそろそろ目障りですわ。
王妃様の実家ごと潰してさしあげねばならないようですわね。
やっぱり殿下には、わたくしがついていないと駄目ですわね!
べっ、別に、ついていたいからではなくて、王国の安定のために仕方がないからですわ!
「それでもボクから見ると、君はおぞましくしか見えないんだ。
彼女が人間なら、君は下水を徘徊するドブネズミなみだ。
彼女が山奥できらめくきれいな湖なら、君は地下の汚物溜だね。
これ以上耐えられないんだよ。ごめんね。さっさとあっちへ行ってくれないかな」
殿下があんな風に女の子を手で払うなんて!
余程気分が悪くなっているんですわ。
もう! 影に隠れているお付きや侍従どもは何してるんですか!
早くあの女を引き離さないと殿下が! ああ、あんな青ざめたお顔に!
「わ、わたしがそんなのだって言うんですか! なんですかなんなんですか!」
「いくらボクがダメな無能王太子でも、王太子の気分を悪くさせて嘔吐させたら、君は処罰されちゃうと思うんだ。
だからそろそろ引き下がってもらえないかな? そろそろ吐き気が我慢できなくなってきてるんだ。う、うぷ」
いけませんわ!
殿下が胸を苦しげにおさえてうずくまってしまいましたわ!
わたくしは隠れていた場所から飛び出すと、侯爵令嬢らしくしずしずと東屋へ入り。
びっくりしている乳女を礼儀正しくかつ断固として押しのけて、うずくまる殿下の隣に座りました。
「殿下! しっかりしてくださいまし!」
ああもう! こんなに青ざめるまで我慢して……。
まぁ! 気まで喪ってますわ! 大変!
わたくしはうずくまる殿下の頭を抱きしめると、そのまま膝に頭を乗せましたの。
「な、なに突然でてくるのよ! しかもなに当然のように膝枕とかしてるのよ!」
あら? まだいらしたんですの?
判っていらっしゃらないようですわね。
もし殿下が我慢なさらず嘔吐なさっていたら、貴女は王太子を害したということで処罰が下るとこでしたのに。
「こんなのおかしいわよ! あんなに日頃悪口ばっかり言ってるのに!
見せつけるように膝枕とかまでして! 相思相愛のふたりみたいじゃない!
どうしてこんな王太子である以外なんの取り柄もないカスに! そんなに王妃になりたいの!?
なによ私の半分の胸がないくせに! あんたの貧しい胸なんかあの方は褒めないわよ!
――きゃぁぁ、なにするのよ離してぇ!」
乱入してきたお付きの方々が、女を羽交い締めにすると、ずるずると引きずり出していきますわ。
お付きの方々もこれ以上この女を放っておけませんものね。
いくら王家とわたくしの実家の意志があるにしても、王太子とその婚約者を侮辱するのを知っていて放置し続けていたら、何らかの処罰をされるかもしれませんものね。
すでに遅いですけど。
一度口から出た言葉は戻せませんもの。
王家が穏便に済まそうとしても、このわたくしが許しませんわ。
筆頭侯爵家が嘗められるわけには参りませんもの。
貴方がたも乳女も殿下の弟君も王妃様もまとめて一切合切大掃除ですわ!
乳女は王族しかも王太子を侮辱、筆頭侯爵家の令嬢で王太子の婚約者であるわたくしを侮辱。
このふたつの罪で、徒刑囚のほうがマシと評判の修道院送りですわね。
お付きの方々は、それを止めようとしなかった罪で謹慎、廃嫡。
殿下の弟君は、乳女をそそのかし王太子の位を簒奪しようとした咎で、離宮に幽閉というところかしら。
今までは、面倒なので見逃していましたけど、これで三度目ですものね。
もちろん、前の2回の証拠は、既にばっちり握ってますのよ。
王妃様は、弟君をそそのかしていたので、罪を逃れませんわ。
病を得て、辺境で療養といったところですわね。
これでさっぱりしますわ。
断じて、胸を馬鹿にされた恨みではありませんわよ!
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