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お姉様を追い出します!
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わたしはお姉様が大嫌い。
お姉様はなんでも持っているから。
美貌も地位も家柄も能力も。
そのうえ頼りになる友達も、心配してくれる叔父様も叔母様までいる。
ずるい。
わたしはお父様が浮気して出来た子。私生児。不義の娘。
だけどバカな愛人の子に生まれたくて生まれてきたわけじゃない。
娼館のすさみきった環境で、クズのように生きていたかったわけじゃない。
なのに、お姉様はわたしが望めすらしないものを最初からぜんぶもっていた。
生まれた時から、当然の顔して、ぜーんぶ。
ずるい。ずるい。
だから、わたしは決めた。
お姉様を、わたしと二度と会わないところへ送り出してやろうって。
評判の悪い侯爵様へ押しつけてやろうって。
噂の侯爵様は、人外級のろくでなしらしい。
曰く、5回離婚している。
曰く、顔に悪魔の形の大きな恐ろしい痣があって、二目と見られない顔だ。
曰く、だからいつも仮面をかぶっている。人を近づけない。
曰く、それでも家を守るために、結婚しては「君を愛せない」とかほざいて義務的にベッドイン。
曰く、冷え切った関係に耐えられず、女が抗議すると殴る蹴る、あげくに逃げられる。
曰く、それでも金持ちだから全部金で示談にして平然としている。
などなど。
わたしは、さっそくお母様に囁いた。
この子爵家に入り込んでから、贅沢三昧で、すっかり肥えたお母様のぷくぷくした耳に「お姉様にはこんなろくでなしこそお似合いよ」と囁いてやった。
そうしたらお母様ってば、邪悪に目を光らせて。すぐ飛びついてきた。
お姉様は、貧乏臭くてどんくさくて視界に入るだけで、イライラする存在だもの。当然よね。
お母様の言うことは何でも聞くバカなお父様も大乗り気。
あーあ乗っちゃった。
まぁ乗るだろうとは思っていたけど。
だって、娘をお嫁に送った家には、すごい支度金払ってもらえるんだもの。
それだけ嫁の来てがないってことね。
だけど、どんな大金よりもお姉様の方が価値があるのに。
話はトントン拍子に進み。
お姉様の知らないところで、全てが整った。
3人で豪華な夕食をいただいたあとで、離れのボロ小屋からお姉様を呼びつけて。
お母様が親切ごかしに、侯爵様と婚約が整ったわ、と告げた。
お姉様は、侯爵様の悪い噂を知っているのに、いつもの通り、オドオドと受け入れた。
だからわたしはお姉様が嫌いなの。
そういうところよ!
なんでもかんでもオドオドしながら受け入れるところよ!
逆らうべき相手にも逆らわず、相手をいい気にさせるところよ!
この(わたしも含めて)おバカ3人に言うべき事があるでしょう!
誰が自分の仕事を引き継ぐのかとか、この家の事業はどうするのかとか、もっと大きな声で言いなさいよ。
それ以前に、こんな婚約はイヤだっていいなさいよ!
まぁ、言ってもお母様は聞きはしないでしょうけど。
でも、言ってくれれば、お姉様にも人並みの好悪があるんだと、ちょっとは味方する気になったかもしれない。わたしもどこかでそれを期待していたのかもしれない。
全くバカなわたし。
バカなわたし、バカなお父様、バカなお母様。
そしてますますお姉様が嫌いになった。
やっぱりこの人とは一緒にいられないって。
ついでに、お姉様の婚約者やらも、わたしに押しつけられる事になったから、わたしの覚悟も固まった。
わたし、愚鈍で凡庸でちょっと化粧がうまいだけのアバズレかもだけど、あんな空っぽ自己中男と一緒になるなんてイヤだもの。
お姉様はなんでも持っているから。
美貌も地位も家柄も能力も。
そのうえ頼りになる友達も、心配してくれる叔父様も叔母様までいる。
ずるい。
わたしはお父様が浮気して出来た子。私生児。不義の娘。
だけどバカな愛人の子に生まれたくて生まれてきたわけじゃない。
娼館のすさみきった環境で、クズのように生きていたかったわけじゃない。
なのに、お姉様はわたしが望めすらしないものを最初からぜんぶもっていた。
生まれた時から、当然の顔して、ぜーんぶ。
ずるい。ずるい。
だから、わたしは決めた。
お姉様を、わたしと二度と会わないところへ送り出してやろうって。
評判の悪い侯爵様へ押しつけてやろうって。
噂の侯爵様は、人外級のろくでなしらしい。
曰く、5回離婚している。
曰く、顔に悪魔の形の大きな恐ろしい痣があって、二目と見られない顔だ。
曰く、だからいつも仮面をかぶっている。人を近づけない。
曰く、それでも家を守るために、結婚しては「君を愛せない」とかほざいて義務的にベッドイン。
曰く、冷え切った関係に耐えられず、女が抗議すると殴る蹴る、あげくに逃げられる。
曰く、それでも金持ちだから全部金で示談にして平然としている。
などなど。
わたしは、さっそくお母様に囁いた。
この子爵家に入り込んでから、贅沢三昧で、すっかり肥えたお母様のぷくぷくした耳に「お姉様にはこんなろくでなしこそお似合いよ」と囁いてやった。
そうしたらお母様ってば、邪悪に目を光らせて。すぐ飛びついてきた。
お姉様は、貧乏臭くてどんくさくて視界に入るだけで、イライラする存在だもの。当然よね。
お母様の言うことは何でも聞くバカなお父様も大乗り気。
あーあ乗っちゃった。
まぁ乗るだろうとは思っていたけど。
だって、娘をお嫁に送った家には、すごい支度金払ってもらえるんだもの。
それだけ嫁の来てがないってことね。
だけど、どんな大金よりもお姉様の方が価値があるのに。
話はトントン拍子に進み。
お姉様の知らないところで、全てが整った。
3人で豪華な夕食をいただいたあとで、離れのボロ小屋からお姉様を呼びつけて。
お母様が親切ごかしに、侯爵様と婚約が整ったわ、と告げた。
お姉様は、侯爵様の悪い噂を知っているのに、いつもの通り、オドオドと受け入れた。
だからわたしはお姉様が嫌いなの。
そういうところよ!
なんでもかんでもオドオドしながら受け入れるところよ!
逆らうべき相手にも逆らわず、相手をいい気にさせるところよ!
この(わたしも含めて)おバカ3人に言うべき事があるでしょう!
誰が自分の仕事を引き継ぐのかとか、この家の事業はどうするのかとか、もっと大きな声で言いなさいよ。
それ以前に、こんな婚約はイヤだっていいなさいよ!
まぁ、言ってもお母様は聞きはしないでしょうけど。
でも、言ってくれれば、お姉様にも人並みの好悪があるんだと、ちょっとは味方する気になったかもしれない。わたしもどこかでそれを期待していたのかもしれない。
全くバカなわたし。
バカなわたし、バカなお父様、バカなお母様。
そしてますますお姉様が嫌いになった。
やっぱりこの人とは一緒にいられないって。
ついでに、お姉様の婚約者やらも、わたしに押しつけられる事になったから、わたしの覚悟も固まった。
わたし、愚鈍で凡庸でちょっと化粧がうまいだけのアバズレかもだけど、あんな空っぽ自己中男と一緒になるなんてイヤだもの。
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