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しおりを挟む人生は旅と同じだ。
そう言ったのは何処かの哲学者だったか、何処かの作家だったか。聞いた話だからよく覚えていない。しかしそれを得意げに言ってきた人間の顔は良く覚えている。何も知らないようでいて、自分よりも遥かにずる賢い男だった。その男は、人生は愛だ、とも言った。額を撫でる手は優しく、その声は正しく愛を囁くようなものであったから、そうだね、なんて真に受けてしまったのが運の尽き。
ジジ、と音を立てた蛍光灯の下で、なんで、と言った自分の声は震えていた。皮脂の臭いがする汚らしい男達が取り囲んでいるその向こう側で、その男は今までのどの笑みとも違う、吐き気を催すような下品な笑みを浮かべていた。
「ノエル、人生は結局の所、金なんだ。お前はさぁ顔の良さが取り柄だろう? 俺を愛しているのなら、解って欲しい」
解って欲しい、なんていう顔ではなかった。
嗚呼バカな仔羊だ、と言わんばかりのその笑みを、きっと一生忘れることはない。
今でもそれを事あるごとに思い出す。そのクソッタレの男にいつか相見えてあの日の自分と同じように地べたに這いつくばらせる日を、ずっと夢みている。
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