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後編

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 圭太の暮らす家があるのは、王都から離れた場所にある街だった。
 街の住人は全員圭太の顔馴染みのように接してきた。圭太はもうずっとこの街で生活している、という設定になっていたのだ。
 一人で暮らしている事に誰も疑問を抱かず、圭太の生い立ちを尋ねてくる者もいない。圭太の存在は当たり前のものとして受け入れてくれている。
 女神の計らいだろう。
 そのお陰で何ら不自由なく生活する事ができた。
 働かずに生きていけるお金もある。だから圭太は最初、本当に何もせず家の中でゴロゴロするだけの日々を過ごしていた。
 だがしかし、この世界にはゲームも漫画もない。テレビもない。暇を潰せるものが全然ない。
 家の中で何もせずに過ごすという事が苦痛でしかなくなっていった。
 ゲームや漫画があれば、いくらでも家に引き込もっていられる自信がある。
 けれど悲しい事に、この世界には無限に時間を潰せる娯楽がないのだ。
 やる事といえば家事をするくらいだ。それ以外の時間は何もする事がない。
 結局、圭太は働く事にした。
 街の中にある、宿屋兼酒場で雇ってもらえた。一階は酒場で、二階が宿屋になっている。昼はベッドメイク、夜は給仕の仕事。
 最初は慣れない事も多く大変だった。けれど特に大きな失敗もなく、大事件が起きる事もなく、平凡な日々が過ぎていった。
 異世界に来ても、圭太の人生は大きな山も谷もなく地味だった。
 勇者として過ごした一年間も、仲間に囲まれ華やかで輝いてはいたが、波乱に満ちていたわけではない。魔物との戦いはあれど仲間内での揉め事も起きず国を揺るがす事件に巻き込まれる事もなく、何か過酷な試練があったわけでもない。
 旅はめちゃくちゃ順調に進み、ラノベとかで読んだ異世界転移ものと比べればとても平和で、平坦なものだった。
 もちろん、何もないのが一番だ。事件なんて起きない方がいい。
 しかし、今思うと勇者になっても自分は自分なのだと実感する。主人公には向かないのだろう。
 でも、それでいい。勇者として過ごし、自分には平凡が合っているのだとわかった。平凡でいい。平凡がいい。
 そうして圭太は地味に、目立たず、何があるわけでもない日々を過ごした。
 ここで生活をはじめて一年が過ぎた頃。
 ベッドメイクの仕事を終えて酒場におりた圭太は、隅のテーブルで一人で酒を飲んでいる客を見てギョッとした。
 あれはスヴェンだ。騎士の格好ではなく私服で、顔もなんだか疲れていて見間違いかと思ったが、間違いない。あんな美形はそうそういない。
 どうして彼がここにいるのだろう。私服だから仕事ではないと思うが。しかし、ここは王都から随分離れている。休日に来るような観光地でもない。
 圭太は店主に近づき、そっと尋ねた。

「あの隅っこにいるお客様って、泊まりですか? 今日来たんですか?」
「ん? ああ、そうだよ。さっき来たんだ。どうかしたのかい?」
「い、いや……その……めちゃくちゃカッコいいのに一人だし、恋人と一緒なら旅行かなって思ったけど……服装も、仕事って感じじゃないし……何の用でこの街に来たのかなって……」

 明らかに挙動不審だったが、店主は特に気にする事なく疑問に答えてくれた。

「ああ、どうやら人を捜してるみたいだ」
「ひ、人を……?」

 何だか嫌な予感がして、頬がひきつる。

「金髪で碧眼の、「ケイタ」という名前の十代後半の少年を知らないかって訊かれたよ」
「ひっ……」

 予感は的中した。

「そういや、ケイと名前が似てるなぁ。ケイもまだ十代だったよな……。まあ、ケイとは髪と目の色が全然違うし、全くの別人だろうけど」
「あはは……そうですね。絶対別人だと思います……」

 冷や汗を流し、乾いた笑い声を漏らす。
 彼が捜しているのは確実に自分だ。
 自分は魔王を倒した直後に仲間の前から姿を消した。てっきり、元の世界に帰ったと判断してくれていると思ったのだが。
 勇者圭太は行方不明扱いになっているのだろうか。でもそうだとしたら、もっと大々的に捜索されていてもおかしくない。
 つまり、他の人は勇者は元の世界に帰ったと判断しているが、スヴェンだけはまだこの世界にいると考え個人的に捜しているのだろう。
 圭太が一言でも別れの言葉を告げていればそんな事にはならなかった。しかし圭太は魔王を倒したら即元の世界に帰還したいと女神に頼んでしまった。
 結局帰れなかったので、まだこの世界にいるというスヴェンの考えは正しいのだが。
 だが、彼が好きになった勇者圭太はもういない。ここにいるのは平凡な一平民のケイだ。
 捜したところで永遠に見つからない。それを彼に教える事もできない。
 圭太は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。彼が早く諦めてくれる事を願うしかない。
 気まずい思いを抱えながらも仕事をこなし、閉店時間になった。気づけばスヴェンはテーブルに突っ伏し眠っていた。随分と酒を飲んでいたので無理もない。

「ケイ、悪いがあのお客様を部屋まで連れていってもらえるかい?」
「えっ!?」
「五号室まで頼むよ。それが済んだら、もう帰って大丈夫だから」

 店主はそう言って自分の仕事に戻る。
 こちらが一方的に気まずいだけで、スヴェンは今の圭太を見ても一緒に旅をした勇者だと気づくはずがない。現に彼のテーブルに酒を運んだが、気づかれなかった。というか、彼は圭太の顔を見ていなかった。
 だから、ほんの少し関わり合いを持つくらいなら問題ない。

「お客様、起きてください」
「んん……?」

 圭太は声をかけ、彼を起こす。

「立てますか? 肩を貸しますので、部屋まで行きましょう」
「ん……ああ、すまない……」

 彼は圭太の肩に腕を回す。騎士のスヴェンは体もガッチリと鍛えられている。
 ふらつきそうになりながらも、圭太は彼を支え部屋まで連れていった。

「着きましたよ。ベッドまでお連れしますね」

 この状態では、ベッドに寝かせた方がいいだろう。そう判断し、圭太は部屋の中に入ってベッドに近づいた。

「ぅわっ、ぷ……っ」

 彼だけをベッドに横たわらせようとしたのだが、肩に回された腕の力が強くて圭太までベッドの上に倒れてしまう。

「す、すみません……!」

 慌てて起き上がろうとするが、回された腕にぐっと力を込められて身動きが取れない。

「あ、あのっ……!?」
「………………ケイタの匂いがする」
「へぁ……!?」

 思わぬ発言が飛び出し、変な声を漏らしてしまった。
 スヴェンは圭太の首筋に顔を埋め、すんすんと匂いを嗅ぐ。

「ちょ、や、やめっ……」

 スヴェンの行為はエスカレートし、すーはーすーはーと激しい息遣いで匂いを嗅がれる。

「間違いない……ケイタの匂いだ……」

 彼の言葉は確信に満ちていた。
 しかし、そんなわけがない。匂いでわかるわけがない。彼は酔っ払っているのだ。

「違います、俺はケイタじゃないです! 人違いですから、離してください……っ」

 じたばた暴れるが、スヴェンの腕の力は緩まない。相手は客だ。乱暴を働くわけにもいかず、彼の腕から抜け出せない。

「俺がケイタの匂いを間違うはずがない。毎日毎晩嗅ぎ続けたんだ」
「ええっ……!?」

 本当に匂いを嗅がれていたのだろうか。彼と一緒にいて、匂いを嗅がれているなんて感じた事はない。やはり酔っ払いの戯れ言なのか。

「こんなところにいたんだな、ケイタ……。会いたかった、ケイタ……」
「いやいやいや、違います、違います! よく見てください! 俺はケイタじゃありませんってば!」

 このままではまずいと思い、圭太は失礼を承知で彼の頬を両手で挟み顔を上げさせた。そうして自分の顔を彼にしっかりと見せつける。

「ほら、見てください! あなたの捜しているケイタとは似ても似つかないでしょう!?」
「…………確かに顔は違う。だが、匂いはケイタだ」
「か、勘違いですよ……!」
「違わない。ケイタの匂いだ」
「わっ……ちょっ、何を……!?」

 スヴェンは覆い被さり、圭太の服を捲り上げた。彼は露になった胸元を凝視する。

「間違いない……ケイタの乳首だ」
「はあ!?」
「最初はもっと小さかった。だが、俺が毎晩指で弄り舐めて吸って甘噛みを繰り返し、ここまで育てたんだ」
「はあああ!?」

 そんなの知らない。だが確かに、魔王討伐の旅をしている時、朝起きると乳首がじんじんと腫れぼったい感じがする事があった。それはまさかコイツのせいなのか?
 いやだがしかし、真面目で誠実なスヴェンがそんな事をするなんて……。
 疑念を抱きつつも酔っ払いの言葉をすんなりとは信じられず困惑する。
 動けずにいると、スヴェンにズボンとパンツをずり下ろされた。

「わあっ!? 何やって……っ」
「やっぱり……ぺニスもケイタのものだ……」
「ひぇ……」

 うっとりとした目で圭太の股間をガン見してくるスヴェンにドン引きする。
 もしかしてコイツ、とんでもなくヤバい奴だったのか? 一年間一緒に旅をしてきて全く気づかなかった。

「俺が毎晩しゃぶっていた頃と、色も形も大きさも変わらない……あの頃のままだ……。ああ、会いたかったよ、ケイタ……」
「どこに向かって言ってんだ!!」

 ぺニスから目を離さないスヴェンに、つい客という立場を忘れ突っ込んでしまう。

「ていうか、毎晩しゃ、しゃぶってた、とか……う、ウソだよな……?」
「ウソなものか。精液だって毎晩飲んでいた。ケイタの精液の味も今でもはっきり覚えている」
「ひぃ……」

 冗談であってほしい事を真顔で言われ青ざめる。
 思えば旅をしている間、圭太は一度も自慰をしていない。勇者になったから性欲とかもなくなっているのかと思っていたが、コイツに勝手に発散させられていただけなのか?

「っつーか、いつそんな事……」
「ケイタが寝ている時だ」

 悪びれもせずにスヴェンは言う。
 男二人、女三人のパーティーだ。宿に泊まる時は、いつもスヴェンと同じ部屋に二人で泊まっていた。

「お、おまっ……俺にそんな事してたのかよ!?」

 全く気づかなかった。気づいていたら同じ部屋に泊まっていなかったが。
 思わず自分が圭太だと肯定するような事を言ってしまう。それを聞いたスヴェンはとろりと表情を緩ませた。

「やっぱりケイタなんだな……」
「いや、違っ、違うから……!」
「否定するなら体を触って確かめる。ケイタの体の事なら隅々までわかってるからな」
「ひっ……」

 さわさわと体をまさぐられ、圭太は観念した。

「わ、わかった! わかったから……!」
「何が?」
「お、俺がケイタだって認めるから……!」
「やっぱりケイタだったんだな。ああ、ケイタ、会いたかった……!」
「うわぁっ、やめ、やめっ、ストップ!!」

 胸に頬擦りされて、慌てて彼を止める。

「待て待て待て……! 確かに俺はケイタだけど、スヴェンが捜してるケイタとは顔が全然違うだろっ」
「ああ。そのせいで、こうして近くで匂いを嗅ぐまで気づけなかった」
「こっちが俺の本当の顔なんだ! 勇者やってた時は、女神に美少年の顔に変えられてたんだよ」
「そうだったのか」
「ああ。俺はもう勇者じゃないから、元の顔に戻ったんだ」
「そうか」
「だ、だからその……スヴェンが好きだって言ってくれた俺はもういなくて……」
「何を言っている。俺の好きなケイタはここにいるだろう」
「いや、そうだけど……顔が全然違うだろ」
「だからなんだと言うんだ。ケイタはケイタだ。俺が好きになったケイタだ」
「んむっ……」

 避ける間もなく唇を重ねられた。濃い酒の匂いと味がする。

「ああ……ケイタの唇の感触は少し違う。でも、味は変わらない。ケイタの唇は、甘くて美味しい……」

 スヴェンの囁きに、ファーストキスも奪われていたのだと知る。

「んゃっ、ま、待てって……! 俺の顔をよく見ろよ……。こんな顔だったら、スヴェンは好きになってないだろ……っ」
「そんな事はない。俺は今のケイタを見ても変わらずお前が好きだ」

 きっぱりと断言されて、圭太は焦った。てっきり、真実を打ち明ければがっかりされたり、怒られたりすると思っていた。罵られる覚悟で話した。それなのに、あっさり受け入れられてしまうなんて。

「いやでも、スヴェンは今、めちゃくちゃ酔っ払ってるだろ! きっと冷静な判断ができてないんだ。だから、とりあえず今は寝た方がいい」

 どうにか彼の腕から抜け出そうともがくが、ガッチリ押さえられてかなわない。

「は、離せって、スヴェン……!」
「嫌だ。俺は決めてたんだ。お前を見つけたら、もう絶対離さないと」

 こちらをまっすぐに見下ろす彼の瞳は本気だった。彼の視線に囚われて、圭太は動けなくなる。

「また逃げられるくらいなら、もうお前の返事なんて待たない。無理やり繋ぎ止めて、俺のものにする。そう決めたんだよ」
「う……」

 気まずくなり、関係が変わってしまうのが嫌だと返事をせずうやむやにしようとした。でも、それは間違いだったのだ。ちゃんと断っておくべきだった。そうしたら、こんな事にはならなかったのに。
 近づいてくるスヴェンの顔を見ながら、圭太は深く後悔した。

「んんん……っ」

 貪るようなキスをされ、くぐもった声を漏らす。

「ん、むっ……んぁっ……んんっ」

 捩じ込まれた舌が、口腔内をぐちゅぐちゅと掻き回す。
 スヴェンの肩を押し返そうとするけれど、手首を掴まれシーツに縫い止められてしまう。力では圧倒的に負けていて、逃げる事などできない。
 舌先で上顎を擽るようになぞられる。ぞくぞくっと震えが走り、圭太は身を捩った。
 その反応に、スヴェンは唇を離して笑みを零す。

「ふ……感じるところは変わらないんだな」
「はぇ……?」
「寝ている時も、ここを舌で擦るとビクビク震えてぺニスを勃たせていた」

「ここ」と言いながら、スヴェンが口の中に指を突っ込んできて上顎を撫でられる。

「んゃぁ……っ」

 爪の先で上顎を優しく引っ掛かれ、圭太は顔を真っ赤にして涙を滲ませる。手首を自由にされても体に力が入らず抵抗もできない。
 口の中を指で愛撫され、だらだらと涎が垂れていく。そんなみっともない圭太の顔を、スヴェンは情欲を滲ませた瞳で凝視していた。

「ああ……寝ながら感じるお前も可愛かったが、やはり起きている時の方がいいな」

 甘く蕩けた口調で囁き、圭太の口から指を抜く。
 スヴェンは唾液で汚れた指に舌を這わせる。恥ずかしさと、彼のいやらしい舌遣いに頭がくらくらした。

「や、やめ……っ」
「顔が真っ赤だ……。恥ずかしくて泣きそうになってる、そんな表情ははじめて見るな。もっともっと色んな顔を見せてくれ」
「あぅんっ」

 濡れた指で乳首を撫でられ、ビクッと体が反応する。

「ふふ……ケイタはここを弄られるのが好きなんだ。知らなかったか?」
「し、知らない、そんなの……好きじゃな、あんっ」

 指の腹で回すように乳頭を擦られ、圭太の意思とは関係なく体が感じてしまう。

「やっ、やだ、なんでっ……んぁっ、やだ、やめっ……そこ、触んな、あっ、あぁっ」
「ずっと弄ってやれなかったが、体はちゃんと覚えているんだな。少し触っただけで、もうこんなに固くなって膨らんで……感じやすい体は、あの頃と何も変わらないな」

 嬉しそうに微笑みながら、スヴェンは両方の乳首を指で撫で転がす。

「あっ、んっ、やだぁっ、それ、やめぇっ、あっあっひああっ」

 指だけでなく爪でカリカリと刺激され、強い快感に背中が浮き上がる。愛撫をねだるようなその仕草にスヴェンは笑みを深めた。

「こうされるのが好きだったもんな、ケイタは……。寝ている時も甘い声を漏らして、とても可愛かった」
「やっ、あぁっ、んあぁっ」

 彼の言っていた事は本当だったのだと、改めて実感する。寝ている間にこうして体を弄られて、乳首で感じるようにされてしまったのだ。
 知らない内に開発されていた事実に圭太は泣きたくなった。兄のように慕っていた相手にこんな仕打ちを受けるなんて。

「スヴェン、の、あほぉっ、んっあっあっ」
「ああ、指で弄られるだけじゃ物足りないのか。そうだな。俺もケイタのここを味わいたい」
「違っ、ぅんんっ」

 胸に顔を近づけたスヴェンが、ツンと尖った乳首をねっとりと舐め上げる。

「ん……固くてコリコリになったケイタの乳首も、相変わらず美味しいな」
「ばかっ、あんっ、やだ、舐めるな、ぁあっあっ」

 舌先で乳首を捏ね回され、快感に身をくねらせる。

「気持ちいいんだな。そんなに可愛い声を上げて……。寝ている時はあまり声を聞けなかったから、嬉しいよ」
「あっあっ、ひっ、やあぁっ」

 はむりと口に含まれた乳首を、音を立ててしゃぶられる。ぢゅうっと吸い上げられると快感が駆け抜け、圭太ははしたない声を止められなくなる。

「ひぅっんっ、吸うの、やめっ、あっあっんんんっ」
「はあっ、美味い……ケイタの、乳首……っ」

 やめてくれと声をかけても、聞こえていないかのようにスヴェンは夢中で乳首に吸い付いている。ちゅぱちゅぱと卑猥な音が耳に届き、羞恥が募る。

「あっ、やぁっんんっ、スヴェン、も、やめぇっ、あっあっ、ひぅんっ」

 舌で弾かれ、強く吸い上げられ、感じたくないのに体はしっかりと快感を得てビクビクと跳ねる。

「やっ、やあぁっ、スヴェン、おねが、あぁっ、スヴェンんっ」

 自慰で得られる快楽とは全く違う。気持ちよすぎて恐怖さえ感じた圭太は必死に懇願し、スヴェンは漸く乳首を解放してくれた。
 散々弄られしゃぶられた乳首はべっとりと唾液に濡れ、じんじんと熱を持っている。

「悪かったな、ケイタ……」

 突然謝罪を口にするスヴェンに、何を今更……と文句を言ってやろうとするが、それよりも先に彼の言葉が続いた。

「乳首だけ弄られたら辛いよな。あまりにも久しぶりで、夢中になってしまった。大丈夫だ、こっちもすぐに弄ってやるからな」

 そう言って彼が手を伸ばしたのは圭太のぺニスだ。

「んひっ……!?」

 キスと乳首への愛撫ですっかり勃ち上がり先走りまで漏らしていたそれを握られ、圭太は鋭い悲鳴を漏らす。

「あっ、うそ、やめっ……んあっ、触るなぁっ」
「ごめんな。こっちを放っておかれて苦しかっただろう」
「ひっ、あっあっ、擦っちゃ、あっあぁんっ」

 圭太の気持ちとは裏腹に、ぺニスは刺激されると悦ぶようにたらたらと蜜を垂らした。

「ああ、どんどん溢れてくるな。もったいない」
「ひあぁ……っ」

 スヴェンは躊躇いもなく圭太のぺニスに舌を這わせた。蜜を漏らす鈴口をべろべろとねぶる。

「んあっ、あっ、ひぃんっ」

 敏感な先端を舐め回され、圭太は嬌声を上げ身悶えた。

「はあっ……久しぶりの、ケイタの味……」
「やっ、やめっ……舐めるなぁ、あっ、やだぁっ」
「恥ずかしがる必要はないぞ。ケイタのぺニスの味も匂いも形も大きさも、既に覚えるほど見て触って味わっているからな」
「んひっ、あぁっ、ばかっ、へんたいぃっ、あっ、ひああぁっ」

 ぺニスを口に咥えられる。熱くぬめった粘膜に包み込まれ、強烈な快感に襲われた。

「ひっ、あっ、やめろっ、あぁっ、そんな、しちゃっ、あっあっあっ」

 ぬぽぬぽと出し入れされ、圭太はみっともなく腰を揺する。気持ちよくて、へこへこと動いてしまう腰を止められない。
 スヴェンはぢゅるぢゅると吸い付き、更なる快楽を与えてくる。

「ひあっ、ああぁっ、待っ、あっ、吸っちゃ、あっあっ、らめっ、もう、でるぅっ、は、はなしっ、んぁっ、でる、でるからぁっ、はなせっ、あっひっ、スヴェンんっ、も、だめぇっ、あっ、いく、いくぅう~~~~っ」

 離してくれと訴えても聞き入れてもらえず、必死に耐えようとするけれど我慢も長くは続かない。
 背中を仰け反らせ、圭太はスヴェンの口内に射精した。

「あひぁああ……っ」

 射精中に激しく吸い上げられ、体液を搾り取られる。強烈な快感に目の前がチカチカした。
 吐き出された精液を、スヴェンは当たり前のように飲み下す。
 恥ずかしいし、そんなものを平気で飲むなんて信じられない、と思うけれど、彼の言葉が本当なら既に何度も飲まれているのだ。
 一滴残らず飲み干して、スヴェンは口を離した。

「ん……この味も変わらず美味いな。ケイタの味だ」

 頬を赤く染めて嬉しそうに言う。
 高潔な騎士だと思っていた男の口から飛び出る変態的な発言の数々に、もう怒ればいいのか嘆けばいいのかわからない。
 疲れたようにぐったりする圭太の下肢から、スヴェンはズボンと下着を取り払った。

「ちょ、なに、脱がせて……っ」

 慌てる圭太の脚がスヴェンの手で大きく開かれる。陰部を丸出しにされ、圭太は声を上げる。

「ひっ、ばかっ、やめろっ、何してんだよ……っ」

 スヴェンはやはり圭太の声が聞こえていないかのように無視して、露になったそこを蕩けた瞳で見つめる。

「ケイタのここも、変わらない……。俺の知ってるままだ。よかった」

 安心したように目を細め、スヴェンは自然な動作でそこへ顔を近づけた。
 まさか……と固まる圭太の後孔に、ぬるりとした感触が這う。
 舐められているのだと気付き、圭太は焦りと羞恥に襲われる。

「やっ、ばかっ、ばかっ、何してっ、やめろっ、ばかぁっ、やめろってぇっ、どこ舐めて……やっ、あっ、汚い、からぁっ、やだ、スヴェンんっ」

 必死に声を上げるけれど、それを聞き流しスヴェンはぴちゃぴちゃと後孔をねぶる。
 身を捩り抵抗を試みるが、両脚をしっかり押さえつけられ離してもらえない。

「恥ずかしがる必要はないと言ってるだろう。ケイタの体で知らないところなど俺にはない。ここも、何度も味わっているんだからな」

 胸を張って言ってくるスヴェンに怒りと羞恥と呆れがいっぺんに沸き上がり何も言えなくなる。そのどや顔を殴ってやりたい。

「ほら、ケイタのここは舐められる快感を覚えているぞ。ひくひくと口を開けて、可愛いな」

 どこに向かって可愛いなんて言っているのか。後孔に甘い視線を注ぐその両目を潰してやりたい。

「はあっ……もっと味わわせてくれ……」
「んやっ、やだぁっ、あっ、あっ」

 拒絶の言葉など意味をなさず、スヴェンは熱心にそこを舐め回す。ぬるぬるとした感触が何度も後孔をなぞり、そんなところを舐められて快感を得ている事に気づいて絶望した。人が寝ている間に、何て事をしてくれたのだろうコイツは。

「やぁっ、あっんんっ、も、そこ舐めるの、やめっ、あっひっ、んんんっ」
「ん……。中も舐めてほしいんだな」
「んひぃっ」

 ぬちゅうっと舌を挿入され、胎内を舐められる感覚にガクガクと体が震えた。

「ひっあっ、やらぁっ、んぁっ、なか、舐めちゃ、やっ、あっあっあっ」

 ぢゅぱっぢゅるっと音を立てて内側をねぶられる。羞恥と快感にくらくらした。

「あひっ、んんっ、あっ、やだぁっ、スヴェン、あっ、もう、やめ……っ」

 肉壁を舌で擦られ、ぞくぞくと背筋が痺れた。唾液を塗り込まれ、ぬかるんでいく隘路を舌がじゅぽじゅぽと行き来する。
 たっぷりと濡らされた後孔から舌が抜ける。漸く終わったのかと体から力を抜けば、今度は指を差し入れられた。

「ひあぁっ」

 舌とは明らかに違う感触。長くて硬い指が、探るように中で動く。

「ああ、すっかりきつくなってしまっているな。毎晩舌と指で解して、時間をかけて柔らかくしたというのに……」
「ひっあっ、やっあぁっ」
「でも、それは誰にもここを弄らせなかったという証明でもあるからな。嬉しいよ。こうしてケイタの中に触れたのは俺だけなんだな」
「んんっ、あっひぃっ、やっ、やだぁっ」
「大丈夫だ。ケイタの気持ちいいところはしっかり覚えている。お前の事は何一つ忘れていないからな」
「あっ、ひっ、指が、あっ、あああぁ……っ」
「ほら、ここだろう? ケイタの好きなところは」

 得意気に微笑みながら、内部の膨らみを指でコリコリと刺激する。
 そこを弄られると、強い快感が走り抜ける。

「やら、やらぁっ、そこ、いじるの、やめっ、んひっ、ひっあっあっあーっ」
「寝ている時も、ここを弄ると気持ちよさそうに声を上げてぺニスを勃たせていた」

 というか、こんな事までされて起きないとか、自分が心配になってくる。さすがに起きろよ、と自分に言ってやりたい。ここまでくると、スヴェンだけを責められないのではないか。気づけなかった自分に責任があるのではないかと思えてくる。
 思えば、魔王討伐の旅の最中、朝起きると尻の穴がむずむずする事があった。大した事ではないと気にしていなかった。そもそも恥ずかしくて誰にも言えなかった。
 ともあれ、今は自己嫌悪に陥っている余裕などない。

「んひぃっ、あっ、やだぁっ、そこ、もうやめっ、あっあっ、こわいぃっ、やっ、スヴェンんっ」

 思わず縋るように名前を呼べば、彼は嬉しそうに表情を綻ばせる。

「大丈夫。ケイタの記憶になくても、既に寝ている時に散々弄っているからな。はじめての事ではないから、怖がる事はない」

 そういう事じゃない。やめてくれって言ってるんだ。やめてくれと言ったところで、彼はやめるつもりはないのだろうけど。

「心配せず、ただ気持ちよくなっていればいい」
「んあぁっ、あっあっ、んぅううっ」

 指を増やされて、二本の指で重点的にそこを弄り回される。ぺニスは再び勃ち上がり、圭太が身をくねらせる動きに合わせてぷるぷると揺れていた。
 恥ずかしくて堪らないのに、どうしようもなく気持ちいい。
 後孔は悦ぶように指を締め付け、もっとと媚びている。

「やぁっ、スヴェン、んあっ、やっあっ、抜いて、あっひうぅっ」
「抜いて? だがケイタのここは嬉しそうに絡み付いてくるぞ?」
「違っ、ぅんんっ、うれしく、なっ、あっひっ」
「こんなにぺニスを勃たせているのに? ほら、もうぬるぬるになっている」
「ひあぁっ」

 ぬるーっとぺニスに舌を這わされ、圭太は首を仰け反らせる。

「うそ、やだぁっ、一緒に、しちゃ、ああぁっ」

 スヴェンはぺニスをねぶりながら後孔に入れた指をぐちゅぐちゅと動かす。両方を同時に刺激され、圭太は強すぎる快楽に翻弄される。

「ひっ、やっ、だめ、だめぇっ、いく、いっちゃう、からぁっ、あっあっ、んんぅっ」

 ぺニスをぢゅるぢゅると吸われ、胎内の敏感な箇所をこりゅこりゅと指で擦られ、あっという間に射精感が込み上げてくる。
 とろとろと滴る先走りを啜りながら、スヴェンは容赦なく刺激し続けた。

「ひぁっあっ、も、らめっ、いく、でるぅっ、んっあっあ~~~~っ」

 我慢など許されず、圭太は再びスヴェンの口の中で果てた。そして射精しても彼は後孔を弄るのをやめてくれない。喉を鳴らし精液を嚥下しながら、肉壁を指で押し潰す。

「んひっ、んやっ、あっあっ、待っ、あひぁああっ、も、やめぇっ、ひうっんっ、むりぃっ、あっあっスヴェンんっ」

 許容範囲を越える快楽を与えられ続け、圭太は涙を流し身悶えた。
 ぺニスから口を離し、スヴェンは圭太をうっとりと見つめる。やめてくれと哀願する圭太を凝視しながら、後孔をぐちょぐちょと掻き回す。
 逃げられず、何を言ってもやめてもらえる事もない。圭太はただひたすらに快感に溺れるだけだ。
 じゅぽじゅぽと抜き差しされる指は増えていき、気づけば四本の指を咥え込んでいた。スヴェンの太い指を四本も挿入され、痛みもなく、寧ろ暴力的な快感しか感じず、すっかり蕩けた後孔は嬉々として指にしゃぶりついていた。

「ひあぁ……っ」

 ずる……っと指が抜けていく。長い時間指を咥えていた後孔は、そこを埋めてくれるものを求めるようにパクパクと開閉する。
 もう自分の体ではないみたいだ……と、他人事のように思った。自分の知らぬ間に、自分の体を変えられてしまった気分だった。
 息を整えながらぼんやりとそんな事を考えていると、おもむろに両脚を抱えられた。
 衣服を脱ぎ捨て、全裸になったスヴェンが覆い被さってくる。
 ぐりっと後孔に硬いものが触れ、視線を向けて息を呑む。

「っひ……!?」

 長くて太い彼の陰茎が、今にも挿入されそうな状態でそこにある。恐ろしいのは、後孔がそれを迎え入れようとしている事だ。

「や、ぁ……っ」
「ケイタ……ずっとこの日を夢見てた……」

 熱い息を吐きながら、情欲に濡れた彼の瞳が圭太を見下ろす。

「す……スヴェン……」
「お前が俺の前から姿を消した時、気が狂いそうだった。周りの人間は、ケイタはもうこの世界にいない、元の世界に帰ったんだと、皆そう言った。でも、俺は信じなかった。どこにいるかもわからないお前を、どこかにいると信じて捜し続けた」

 うっそりと微笑む彼の双眸に狂気のようなものを感じ、圭太はゾッと身を震わせた。

「諦めなくてよかった。もう二度と離さない。絶対に。お前を俺のものにする」
「ひっ……ぁ、うそ……や……ああぁ……っ」

 太い亀頭がめり込んでくる。時間をかけて解された媚肉は、埋め込まれるそれを抵抗もなく受け入れてしまう。

「んひぃっ、あっ、はぃって、くるぅ……っ」

 強烈な圧迫感と共に大きな肉塊が胎内に入り込んでくる。

「やらっ、あっ、こわいぃっ、やっ、スヴェン……っ」
「怖がってくれて嬉しいよ。その方が、ケイタの記憶に刻み込まれるだろう?」
「ひぅううっ」

 腰を強く打ち込まれ、ずんっと肉棒が奥へ入ってくる。

「ひっ、ふ、ふとっ……おっきぃ、ひっあっ、やらっ、おく、も、いれないでぇ……っ」

 圭太の懇願を耳にしながら、スヴェンは奥へ奥へと剛直を進める。

「ああ、ケイタの、中……気持ちいいよ……。ずっとこうしたかった……」

 スヴェンは頬を紅潮させ、感嘆の溜め息を零した。色々手は出していたが、どうやら最後の一線だけは越えずにいたようだ。こうなってしまったら、圭太にとってはだからどうしたという感じだが。

「ケイタ、ケイタっ……好きだ、愛してる……っ」
「ひぐっ、んうぅっ、んんんっ」

 感極まった様子でキスをしてくるスヴェン。彼が上体を倒した事により、更に深く剛直に貫かれる。
 口内も舌でめちゃくちゃに犯され、胎内は奥深くまで彼の熱で満たされている。
 苦しくて、たまらなく気持ちいい。ゴリゴリと内壁を擦り上げられ、口の中を舌で掻き回される快感に圭太は絶頂を迎える。
 圭太が達してもスヴェンは止まらない。寧ろ胎内を犯す動きは激しくなっていく。結果、圭太は繰り返し絶頂へと追い上げられた。
 終わりのない快楽に翻弄され、圭太の思考は霞んでいく。

「くっひうぅっ、んっ、あっ、あ~~っ」

 体位を変えて、何度も何度も犯された。吐き出された彼の精液で胎内はいっぱいだ。出し入れされる陰茎の動きに合わせてぶちゅぶちゅと溢れてくる。
 一体どれだけの時間が経ったのかもわからない。

「んひぃっ、~~~~っ、あっ、あっ」

 対面座位の状態でずんっと腰を突き上げられ、圭太は達した。ぺニスからはとっくに精液が出なくなっていた。精を出し尽くしたぺニスを震わせながら、圭太は快感に身悶える。
 スヴェンだって何回も射精しているはずなのに、彼の陰茎が萎える様子はない。圭太の唇を貪りながら、ぐぽっぐぽっと絶えず最奥を抉る。

「んぁっ、~~~~っ、ひっ、むり、もぉむりっ、スヴェ、あひっんっ、しゅう゛ぇんんっ」
「はあっ……可愛い、好きだよ、ケイタ」
「おねが、あぁっ、もう、ゆるひ、ひぃいっ」
「愛してる、ケイタ。結婚しような。ずっと一緒にいよう。俺のお嫁さんになってくれるよな」
「あっ、はひっ、なる、んんっ、およめしゃ、なるからぁっ、しゅう゛ぇんとけっこん、するぅ……っ」

 だから、もう許してくれと訴えたい。しかしスヴェンは都合のいいところしか聞いてくれない。

「ああっ、嬉しい、ケイタ、これからはずぅっと一緒だっ、ケイタ、ケイタ……っ」
「はひぃんっ、らめっ、もぉっ、あっあっ、あ~~~~っ」

 スヴェンはビキビキと陰茎を滾らせ、一層激しく胎内を掻き回す。

「やっ、むりぃっ、たしゅけ、あっひぃ……っ」

 神でも仏でも女神でも誰でもいいから助けてくれと強く願ったが、その願いが叶えられる事はなかった。助けを求める圭太の声が、虚しく部屋に響いた。





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