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少年は恋をして幸せを手に入れる 3
しおりを挟む誕生日やクリスマスのイベントで伊織が頭を悩ませるのは、プレゼントのことだ。
伊織はバイトなどしていない。伊織の買い物は全て壮真から与えられたお金で済ませている。なので物をプレゼントするとなると、それは当然壮真のお金で買うことになるのだ。
壮真は気にしないだろうし、きっとなにを買ってプレゼントしても喜んでくれるだろう。プレゼントで大事なのは気持ちだ。
それはわかっているが、伊織は壮真のお金で壮真のプレゼントを買うのは躊躇われた。そもそもなにをあげればいいのか思いつかない。伊織もそうなのだが、壮真も無趣味なのだ。
それに欲しい物があれば壮真はすぐに自分で購入できる。アクセサリーなどは一切身に付けないし、腕時計は高すぎる。安物の腕時計を壮真に送りたくはないし、高級な腕時計も壮真のお金で買いたくない。ネクタイが無難かな、とも思うが、家にたくさんあるのを見るとわざわざ新しい物を購入する必要があるのかと悩んでしまう。伊織が選んだ、ということが重要であるのはわかっていても。
毎年色々考えるのだが、いまいちしっくりこない。
手作りの料理に手作りのケーキを用意するのでそれで充分だと壮真は言うが、イベントのときくらい、壮真になにか特別なものを用意したいのだ。
だから、壮真と体を重ねるようになってからは、悩みに悩んだ末、自分の体を使ってプレゼントすることにした。要はエロいことだ。
まず最初のクリスマスは、家に設置されているカメラに向かって自慰をした。
壮真と二人で暮らすこの家には、至るところにカメラが設置されている。防犯の意味もあるが、壮真は伊織の行動を把握しないと気が済まないらしい。だから常に盗聴器を持たされるし、こうして家の中での伊織の行動も全て見られている。
カメラのことを教えるとき、壮真が言ったのだ。カメラに向かってしてみろよ、的なことを。冗談半分で。
彼が本気で言ったわけではないことはわかっていたけど、でも、したら喜んでくれるかな、と思った。
だから、本当に恥ずかしかったけれど、寝室に設置されているカメラに向かって脚を広げ、壮真の名前を何度も呼びながら自慰をした。好きだと伝えながら痴態を晒した。
恥ずかしいのにひどく興奮してしまって、それでもすぐに終わってしまったらプレゼントにならないと、自分で自分を焦らして懸命に長引かせた。
その後の後始末の姿まで見られるのは非常に恥ずかしかった。
そして次は壮真の誕生日。そのときは卑猥な下着を身につけてお祝いした。食事をしてケーキを食べたあと、ベッドの上ではしたない下着姿を晒し、壮真にその身を差し出した。
「壮真さんの好きにして」と言って、彼に促されるままに恥ずかしいことを口にしていやらしく乱れ、結局下着はどろどろになってしまった。
その次のクリスマスは、浴室でローションプレイに挑戦した。ローションで全身をぬるぬるにして、壮真の体に擦り付けた。乳首とぺニスが壮真の硬い体に擦り上げられ、ローションのぬるぬると全身に伝わる壮真の体温に興奮し、気づけば伊織は夢中になって体を動かしていた。
壮真に気持ちよくなってもらおうと考えていたのに伊織の方が感じてしまい、先に射精してしまった。経験の浅い伊織にローションプレイは早かったと反省した。
そして、今悩んでいるのは次に来る壮真の誕生日だ。
自分でお金を稼げるのなら迷わず物をプレゼントするのだが、現在伊織はお金を稼ぐ手段がない。
壮真は伊織がバイトをするのをよくは思わないだろう。バイトがしたいと言えば反対はされないだろうが、壮真に嫌な思いをさせてまでバイトをしたいとは思わない。バイトをすれば送迎などの手間をかけることにもなる。バイトのせいで家事が疎かになるのも嫌だ。
大学を卒業したあとは、壮真の仕事を手伝わせてもらえることになっている。そうなれば、給料も発生する。
やはり物をプレゼントするのは、給料を貰えるようになってからにしようか。しかし毎回毎回エロいことばかりして、それはどうなのだろう。
壮真はいつも喜んでくれる。伊織のオナニー映像は今でもしっかり保管されているし、卑猥な下着も気に入ってくれたようで後日壮真が新たに卑猥な下着を用意してきたし、ローションプレイも興奮した様子でローションでぬるぬるの伊織の胸にぺニスを擦り付けてはじめて伊織の顔に向かって射精してくれたし、壮真を喜ばせることはできていると思うが、思いたいが、しかしどうなのだろう。
今までのことを思い出し、健全とはかけ離れたイベントの過ごし方に伊織はなんとも言えない気持ちになった。
今年はエロから離れよう。そう考えて色々調べ、手編みのセーターを贈ることにした。お金もそんなにかからないし、なにより健全だ。部屋着として使ってもらうなら手編みでもいいだろう。
しかし編み物などしたことのない伊織は、まず練習で自分用にマフラーを編んだ。それでコツを掴んでから、壮真のセーターに取りかかった。
壮真に着てもらうからには完璧なものに仕上げたい。壮真のためならば、伊織は努力を惜しまなかった。
大学の講義の合間や家事の合間にひたすら編み進め、早くから取りかかったお陰もあり、セーターは無事に編み上がった。
そして迎えた壮真の誕生日。
その日壮真は定時で家に帰ってきた。
用意していたご馳走とケーキを二人で食べる。ささやかだけれど、精一杯の気持ちを込めてお祝いした。
壮真は「ありがとう」と笑顔を浮かべる。
彼の笑顔を見られただけで伊織は満足だった。
壮真に喜んでもらえると、たまらなく嬉しい。祝ったことを喜んでもらえることが嬉しいのだ。
だから伊織は、自分の誕生日よりも壮真の誕生日の方が楽しみだった。もちろん、自分の誕生日を彼に祝ってもらうのも好きだけれど。
食事を終えて、ソファに並んで座ってゆっくりとした時間を過ごす。
伊織はプレゼントを持ってきて、壮真に渡した。
「壮真さん、誕生日おめでとう」
もう何度も言った言葉をまた口にする。
壮真は礼を言ってプレゼントを受け取った。
袋から取り出したセーターを見て、壮真は微笑んだ。愛おしむようにセーターを撫でる。
それから、伊織の体を抱き締めた。
「ありがとな、伊織」
「うん」
「祝ってもらえるのも、プレゼントも、ほんとに嬉しい」
「うん」
「でも俺は、こうしてお前が傍にいてくれることが、なによりも嬉しいんだ。ただ、傍にいてくれるだけで、それだけでも充分に幸せだ」
「…………」
「ありがとな、俺と出会ってくれて。傍にいてくれて、ありがとう」
壮真の真摯な言葉に、ぎゅうっと胸が詰まる。
「そん、なの……僕の方が、ずっと、思ってるもん……。壮真さんに会えてよかったって……。こんな風に、壮真さんと一緒にいられて嬉しいって。壮真さんが大好きで、毎日幸せで……」
目尻に浮かぶ涙を、壮真の指が拭う。そのまま頬を優しく撫でられた。
壮真の手に掌を重ね、頬擦りする。
微笑む伊織に、そっと唇が重ねられた。
ベッドの上、伊織は壮真の下腹に顔を埋め、彼の欲望に舌を這わせていた。根本から先端まで丁寧に舐め上げ、時折音を立てて吸い付く。
壮真の漏らす息遣いが荒くなり、伊織は悦びにぞくぞくと震えた。もっともっと感じてほしくて、愛撫に熱が籠る。
手で扱きながら雁の部分を舌でなぞり、亀頭を口に咥えて吸い上げた。
くしゃりと頭を撫でられ、視線を上げるとこちらをじっと見下ろす壮真と目が合った。欲を孕んだ彼の瞳に性感を煽られる。
「もういいぞ、伊織」
そう言われて、伊織は名残惜しげに陰茎から口を離した。
唾液に濡れたそれに思わずすりすりと頬擦りしながら、避妊具を手に取った。袋から取り出し、ゴムを被せていく。もう何度もしているので、スムーズに装着することができた。
伊織はベッドの上に仰向けに寝転び、自分の両脚を抱える。ぐいっと脚を体に引き寄せ、陰部を壮真の目に晒した。
壮真の指が、アナルを撫でる。ひくひくと物欲しげに口を開けるそこへ、ゆっくりと差し込まれた。事前に準備しておいたので、中は既にローションで濡れている。
「あっ、あっ、壮真さぁんっ」
「待ちきれないって感じだな。指一本できゅうきゅう締め付けてくる」
くちくちと指を動かしながら、壮真は楽しそうに笑う。
「だってぇっ、あっあんっ、壮真さんの、ほし、んんっ、あっ、早くぅっ」
「まだだ。もっと奥まで慣らしてからな」
伊織では届かない更に奥まで指を挿入され、念入りに解される。
肉筒は物足りないと訴えるように蠢き指に絡み付いた。
充分過ぎるほど丁寧に中を掻き回されてから、漸く指が抜かれる。
「壮真さぁん……っ」
我慢できないと名前を呼んでねだれば、すぐに待ち望んだ快感が与えられた。
ゆっくりと埋め込まれていく壮真の熱に、身も心も満たされていく。
「あっ、あっ、壮真さ……っ」
両手を伸ばすと、壮真の腕がしっかりと抱き締めてくれた。温かい彼の腕に包まれると、伊織は自身がとろとろに蕩けていくような感覚になる。
「好き、好き、壮真さん、好きぃっ」
「俺も好きだ、伊織……」
熱い吐息と共に囁きが耳に吹き込まれ、伊織の胸が痛いくらいにきゅんと締め付けられる。同時に、彼を受け入れている肉筒がぎゅうっと絡み付くように蠢いた。
「はっ……気持ちいいか、伊織? すげーな、動いてもないのにうねって、ぎちぎちに締め付けてくる……」
「あっ、気持ちいいのっ、壮真さんとぎゅってしてるだけで嬉しくて、気持ちよくなって、あっ、あぁっ」
「じゃあ今日はずっとこのままでいるか?」
「や、動いてくれなきゃやだぁっ、でも、ずっとぎゅってしててほしい……」
「ははっ、お前の我が儘は可愛いな」
壮真は柔らかく目を細め、ゆっくりと腰を動かした。
ローションに濡れた腸壁を擦りながら、陰茎が出し入れされる。
「んあぁっ、あっ、あんんっ」
感じやすい伊織は、中に与えられる刺激に、すぐに絶頂へと導かれる。ぺニスは触れられぬまま蜜を零し、既に限界まで張り詰めていた。
「あっあっ、きもちいっ、もういく、いっちゃうぅっ」
「我慢しないでイっちまえ」
「あああぁっ」
敏感な箇所を強く抉られ、伊織はたまらず射精した。
荒い息を吐く伊織の頭を、壮真が優しく撫でてくれる。伊織の息が整うのを待ち、その間壮真は動かない。
彼の気遣いは嬉しいけれど、いつも伊織の快感を優先されるのは不満でもある。埋められない年齢差がそうさせるのだろう。だから伊織は誘惑する。なにも考えず、壮真に自分を求めてほしくて。
伊織ははしたなく腰を揺すり、直腸で壮真の陰茎を扱いた。
壮真が息を詰める。
「あぁっ、あんっ、壮真さんも、気持ちよくなってぇっ、僕の体、壮真さんの好きにしてっ、僕の中、奥まで、壮真さんでいっぱいにして……っ」
「……ったく、年々煽るのが上手くなっていくな」
「お願い壮真さん、あんっ、いっぱいしてぇっ」
「後悔するなよ……っ」
僅かに余裕をなくした壮真が、繋がったまま伊織の体をぐるりと引っくり返す。内壁を擦られ、伊織は嬌声を上げた。
後悔なんてしない。もっともっと、壊れるくらいに抱いてほしい。
「壮真さぁんっ、好き、好き……っ」
甘えた声を上げる伊織の腰を背後からがっちりと掴み、壮真は律動をはじめた。ずるりと引き抜いては、また突き入れる。じゅぶじゅぶとローションを泡立てながら、絡み付く肉筒を激しく穿つ。
「あぁっあっ、壮真さ、気持ちいいっ」
「はっ……俺も、すげーいい……っ」
「ひあっ、んんっ、うれし、もっとしてぇっ」
「ほんと、お前は、エロくて可愛いなっ」
「あんんっ」
ずんっと奥を突かれ、快感に目の前がチカチカする。
「あぁっ、そ、まさっ、あっ、いくっ、またいく、いっちゃうよぉっ、あっあっああぁっ」
「んっ、俺も……っく……」
「ひあっ、あ、っ~~~~!」
伊織のぺニスから精が噴き出す。
壮真も低く呻いて射精した。
「はあ、んんっ、壮真さぁん……」
後ろを振り返れば、優しく抱き締められた。そのまま、ちゅっと口付けられる。
「ん、もっと、きすしたい……」
ねだれば、壮真は甘く微笑んだ。
自身を引き抜き、向かい合う体勢になると深く唇を重ねる。
角度を変えてキスを繰り返す内に、二人の欲望は再び熱を持ちはじめた。
唇が離れ、伊織は下肢へ手を伸ばす。壮真の性器からゴムを外し、新しいものに取り替えた。そのまま、愛おしむように彼の陰茎を撫でる。
また唇が重なり、舌を絡ませ合いながら体を繋げた。
こうして壮真と抱き合うたびに、彼と一つになれたらいいのに、と伊織は思う。溶け合って一つになって、離れられなくなりたい。
でもそうなると、もう壮真にご飯を作れなくなってしまう。抱き締めてもらえないし、キスもできなくなってしまう。
だからやはり、今のままが一番幸せなのだ。
何度もそれを実感する。
伊織は微笑み、手を伸ばしてぎゅっと幸せを抱き締めた。
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読んでくださってありがとうございます。
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