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しおりを挟む食事を終え、二人は店を出た。
「ごちそーさん」
「いいえ。こちらこそ、助けていただいてありがとうございました」
「じゃあな」
瑞樹はあっさりと背を向け、店の前で榊と別れた。
夕日に照らされた街中を、一人で歩く。
(変な神父だったな……)
今まで神父と関わったことなどなかったが、神父とはもっと説教くさくて偉ぶっているようなものだと思っていた。だが、榊は瑞樹のイメージする神父とは全く違っていた。
妙に鋭いかと思えばとぼけた言動をしたり、にこにこと笑いながらなにを考えているのかわからない、掴み所のない人物だった。
なにを考えているのかわからないけれど、彼の笑顔は酷く優しくて、見ていて嫌な感じではなかった。
もう二度と、会うこともないだろうが。
街の奥へと足を進めながら、瑞樹はハッとしてポケットの中に手を入れる。
「やべっ……」
ポケットの中には、榊から預かっていた十字架が入ったままだった。食べるのに夢中で、すっかり忘れていた。
瑞樹は慌てて引き返すが、既に榊の姿はどこにも見当たらない。暫く周辺を歩き回ってみたが、見つけることはできなかった。
(きっと、盗んだと思われてんだろうな……)
そんなつもりはなかったのだが、結果的にそうなってしまった。確かに瑞樹は盗賊だが、盗むつもりのなかった物を盗んだと思われるのは癪だった。
「くそ……」
瑞樹は小さく舌打ちする。
面倒だが、明日もう一度榊を捜すことにしよう。本当は夜のうちに街を出たかったのだが、仕方がない。
「こんなことなら、やっぱり預かるんじゃなかった」
苦々しく呟きながら、瑞樹は再び歩きだした。
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