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しおりを挟むそれから数日後。マリナはユリウスと共にとあるお茶会に参加していた。
このお茶会、ゲームではとても重要なイベントが発生するのだが、ユリウスルートに入っていないのならば恐らくなにも起こらずに終わるだろう。
そうは思うのだが、もしもということもある。そのもしもに備え、マリナは警戒していた。
このお茶会会場で、ユリウスは毒蛇に咬まれそうになる。ゲームではシルヴィエが彼を庇い、蛇に咬まれて毒に侵されることになるのだ。
見る限り、シルヴィエはお茶会に参加していない。毒蛇イベントが発生する可能性は限りなく低いが、絶対とは言い切れない。
マリナは警戒を怠らなかった。
「お義兄さま、絶対私と一緒にいてくださいね。なにがあろうと私の傍から離れないと約束してください」
ユリウスはシルヴィエとこのお茶会会場の庭園を見て回り、庭園の隅に位置する場所で毒蛇が現れる。このメイン広場から移動しなければ、毒蛇に襲われることはないはずだ。そう考えて、マリナはユリウスの腕にぎゅっとしがみついた。
「もちろん、ずっとマリナの傍にいるよ」
にこにこと嬉しそうな笑顔を浮かべるユリウス。
シスコンでよかった。
一緒に紅茶を飲みながら、テーブルに並べられた様々なお茶菓子を摘まむ。
「お義兄さま、このクッキーとっても美味しいですっ」
用意されたお菓子はどれも一級品だ。マリナは自然と笑顔になり、もぐもぐクッキーを食べる。
ユリウスもクッキーを一枚摘まんで口に運んだ。
「ね、美味しいでしょう?」
「うん。でも、僕はマリナの作ってくれたクッキーの方が好きだな」
まっすぐに見つめられ、きっぱりと言われて、マリナははにかむ。
「そ、そうですか……?」
「うん。すごく美味しかったから、また食べたい」
「では、また作りますね」
お世辞だとしても嬉しくて、マリナは頬を染めて微笑んだ。
お茶を楽しみつつ、マリナはしっかりと周囲を警戒し続けていた。
しかしキョロキョロし過ぎて、ユリウスに不審がられてしまう。
「マリナ、さっきからどうしたの?」
「えっ、な、なにがですかっ?」
「もしかして、ラドヴァンが現れるのを待ってるの?」
「え……?」
「僕の傍にいればラドヴァンに会えると思ったの? だから離れないでって言ったの?」
「そ、そんな! 違います!」
挙動不審のせいでとんでもない誤解を受けている。
マリナは首を振って否定するが、ユリウスは疑わしそうな視線を向けてくる。
「ラドヴァンじゃないの? じゃあ別の男が目的? 誰を待ってるの?」
男好きみたいに思われている。誤解は解きたいが、本当のことは言えない。毒蛇が現れるかもしれないから、なんてそれこそ下手な言い訳にしか聞こえないだろう。
浮気を疑われ追い詰められるような気分を味わいながら、おろおろと視線をさ迷わせていると、ユリウスの後ろ、彼の足元に鎌首を擡げる蛇の姿が目を入った。蛇は今まさに、ユリウスに咬みつこうとしている。
「危ない……!」
マリナは咄嗟に蛇とユリウスの間に飛び込んだ。
ふくらはぎを咬まれる。強烈な痛みに、悲鳴も上げられなかった。
「マリナ!?」
「お、お義兄さま……」
ガクッと傾く体を、ユリウスに支えられる。
事件に気づいた周囲が騒然となった。
周りの喧騒と名前を呼ぶユリウスの声を聞きながら、彼の腕の中でマリナは意識を失った。
蛇の毒に侵されたマリナは、高熱にうなされることとなった。
そんなマリナを、ユリウスが付きっきりで看病してくれた。マリナが熱に浮かされながら目を覚ますと、傍には必ずユリウスの姿があった。
「ん……お義兄さま……?」
「マリナ、目が覚めたの? 水を飲むかい?」
ゲームの中では、シルヴィエがこうして甲斐甲斐しく看病されていたことをぼんやりと思い出す。でも、自分はマリナで、シルヴィエではなくて、だからユリウスの一番にはなれなくて、いずれマリナはユリウスと離れ離れになってしまう。
熱で朦朧として思考が定まらない。
マリナはぽろぽろと涙を流してユリウスの手に縋った。こうしていなければ、すぐにでもユリウスが離れていってしまうのではないかと不安だった。
「や……お義兄さま、どこにも行かないで、傍にいて」
「もちろんだよ、マリナ。僕はどこにも行かない。ずっとマリナの傍にいるよ」
ユリウスはしっかりとマリナの手を握り返してくれる。
けれどそんなのは嘘だ。ずっと傍にいてくれるなんてあり得ない。ユリウスはマリナではない女性を愛し、マリナではなくその人の傍にいるのだ。
そう考えると悲しくて、涙が止まらなくなる。
「泣かないで、マリナ。僕がいるよ。ずっと傍にいるから」
ユリウスに宥められ、マリナはまた深い眠りに落ちていく。
目を覚ましてはユリウスに縋り、彼の声を聞きながら眠りに就く。それを何度も繰り返した。
寝込んでいたときのことを、マリナはあまり覚えていなかった。ただ、ユリウスが傍にいてくれたことだけは覚えている。
そして、熱が下がった今も、ユリウスは殆どの時間をマリナと過ごしていた。
「お義兄さま、もう熱も下がりましたし、私は大丈夫ですから……」
やんわりと退出を促すが、ユリウスはマリナの傍を離れようとしなかった。
「ダメだよ、油断したら。毒は抜けたけど、まだ万全ではないんだから」
そう言って、甲斐甲斐しくマリナの世話を焼く。
極め付きは、お風呂だ。
「医者から許可が出たからね。僕が入れてあげるよ」
そう言って抱き上げられ、マリナは慌てふためく。
「ままま待ってください! 私一人で大丈夫です! 自分でできます!」
「ダメだよ、もし万が一、お風呂の中で倒れたりしたらどうするの。頭を打ったりしたら大変だよ」
「でででででは、ドアの前で待っていてください!」
「ドアの前にいても、いざというとき助けられないじゃないか。マリナはずっと寝たきりで、まだ自分でうまく歩くこともできないんだよ? そんなマリナを一人でお風呂に入れるなんてできないよ」
マリナが必死に止めている間にも、ユリウスはすたすたと浴室へ向かう。
彼の言う通り思うように体に力が入らず、満足な抵抗もできない。あっさりと衣服を脱がされ、全裸にされた。
「やっ、お、お義兄さまっ……!」
顔を真っ赤にして恥じらうマリナとは反対に、ユリウスは平然としている。
「こ、こんな……恥ずかしい、です……っ」
「恥ずかしがる必要はないよ。マリナが熱で寝込んでいるとき、僕が着替えさせてたんだから」
「ええっ!?」
「汗をたくさんかいていたから、体も隅々まで拭いたよ」
「…………っ!!」
知らなかった事実を教えられ、マリナは言葉を失った。つまり、もうとっくにユリウスに裸を見られてしまっているということなのか。
しかし、だからといって羞恥心が消えるわけではない。今さら恥ずかしがる必要はないなんて、開き直れるわけがない。
しかしこちらの気持ちなど無視して、ユリウスは服を着たままマリナを抱え、浴室に入る。
「お義兄さま、私、本当に……」
頼むから一人にしてくれと願いを込めて、羞恥に潤んだ瞳で見つめれば、ユリウスは朗らかに微笑んだ。
「じゃあ洗おうか」
願いは通じず、ユリウスはいそいそと石鹸を泡立てる。そしてあろうことか手で洗いはじめた。
「お、義兄、さまぁっ……」
マリナは恥ずかしくて泣きそうだった。いっそ泣き喚けばやめてくれたのかもしれない。
けれどマリナは泣き喚くことも止めることもできず、羞恥に耐えながら洗われることしかできなかった。
ユリウスは丁寧に優しくマリナの肌に手を滑らせる。心地よささえ感じる手つきだったが、脚の間にまで触れられ、さすがに焦った。
「お、お義兄さまっ、だ、だめっ、そんなところ……っ」
「どうしたの? ここもちゃんと洗わないと」
「ひゃぁんっ」
するりと太股を撫で上げられ、ぞくぞくするような感覚にマリナは体を震わせた。
変な声を上げてしまい、慌てて口を噤む。
「ふっ……うぅっ……」
「そんなに強く唇を噛んじゃダメだよ。ほら、口を開けて」
泡のついていない手で顎を掴まれ、唇に指を差し込まれる。
「んゃあっ、お義兄さまぁっ」
「そう。ちゃんと声を出して。恥ずかしがらなくても、可愛いから大丈夫だよ」
「ふあぁっ……」
ユリウスの長い指に舌を擽られ、ぞくんと背中が仰け反った。
脚から力が抜け、その隙にユリウスの手が内側へと移動する。
「やっ、あっ、お義兄さま……っ」
くちゅくちゅとマリナの口内を指で掻き混ぜながら、もう片方の手で秘所に触れる。
「ほら、ちゃんと脚を開いて」
「やあぁっ」
泡がつくのも構わずに、ユリウスは自分の膝を使ってマリナの脚を広げた。露になったそこを、ユリウスの指が繊細な手つきで洗う。
洗われているだけなのに、はしたなく体が反応してしまうのを止められなかった。花弁からとろりと蜜が溢れてしまう。ぬるっと指が滑る感覚に、ユリウスも気づいたようだ。
「ああ、濡れてきちゃったね」
「ご、ごめんなさい、お義兄さまっ……」
マリナはぎゅっと目を瞑り、身を縮めた。
恥ずかしい。ユリウスに淫乱な女だと思われてしまうのではないかと思うと怖かった。軽蔑されて、嫌われてしまうのではないかと。
「泣かないで、マリナ。大丈夫だよ」
目尻に浮かぶ涙に、ちゅっと吸い付かれた。
驚いて目を開けると、ユリウスが慈しむようにマリナを見つめている。その瞳には呆れも侮蔑も浮かんではいない。
ユリウスはマリナの口から指を抜き、言った。
「このままじゃ辛いだろうから、僕が楽にしてあげるからね」
「え……?」
どういうことかと尋ねる前に、ユリウスの指が花芽に触れた。
「ひぁんっ」
「ここをいっぱい弄って、気持ちよくしてあげるよ」
「あっあっあっあんっ、だめっ、お義兄さまぁっ、そこ、だめぇっ」
強烈な快感がそこから生まれ、怯えたマリナは泡だらけの体でユリウスにしがみついてしまう。ユリウスはそれを咎めることなく、マリナの背中を優しく撫でて宥めながら、しかし愛撫の手は止めない。
固く張り詰めた肉粒を、くにゅくにゅと擦り回される。
気が遠くなりそうなほどの快感に襲われ、マリナの嬌声が浴室に響き続けた。
「ひぁっあっやっやあぁんっ、お義兄さまぁっ」
「可愛いよ、マリナ。気持ちいい? ここからどんどん蜜が溢れてくるね。ほら、僕の指がマリナの漏らした蜜でぬるぬるになってるよ」
ぬちゅぬちゅと響く水音は、泡ではなくマリナのそこから溢れる蜜の音だ。
それに気づいて、マリナは羞恥に涙を流す。
恥ずかしくてたまらないのに、気持ちよくてはしたない声を止めることもできない。
粘液を纏った指で花芽をぬるぬると弄られ、強い快感が爪先から込み上げてくる。
「んぁっあっひぅんっ、お義兄さま、あっ、なんか、くる、きちゃうぅっ」
「いいよ、そのままイッてごらん。僕に触られて気持ちよくなってイくところ、僕に見せて」
もう、なにを言われているのかもよくわからなかった。ただ、追い立てられるように絶頂へと上り詰めていった。
「あっ、あ~~~~~~っ」
脳天を突き抜けるような快感に、全身が痙攣する。
がくりと体から力が抜け、ユリウスの腕がしっかりと支えてくれた。
はじめて味わう快楽に放心状態だった。呆けるマリナの全身をユリウスが隅々まで洗い、すっかり綺麗になってから浴室を出た。ユリウスにタオルで体を拭かれ、夜着まで着せてもらう。その頃には、もうどうにでもしてくれという境地に到達していた。
抱っこで運ばれ、ベッドにそっと下ろされる。
「僕もお風呂に入って着替えてくるから、待っててね。眠かったら寝てていいからね」
「えっ、お義兄さまはまだお休みにならないのですか?」
部屋に戻るのなら、もうそのまま自分の部屋で休んでくれて構わないのだが。
そう思って尋ねると、ユリウスはさらりと言った。
「寝るよ。マリナの隣で」
「ええっ!?」
「マリナが心配なんだ。だから傍にいさせて」
切なげな瞳でそんな風に言われたら、断れなかった。
「わ、わかりました……」
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
ちゅっとマリナの額に唇を落とし、ユリウスは部屋を出ていった。
承諾してしまったが、本当ならば、拒まなくてはいけなかったのだ。けれど、拒めばユリウスを悲しませてしまうと思うと駄目だなんて言えなかった。
今日一日だけなら許されるだろうと、マリナはそう思うことにした。
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読んでくださってありがとうございます。
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