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環の場合
その後
しおりを挟むそうして環は村上の彼女になった。村上に頼み込まれ、サッカー部のマネージャーもつづけることになった。
環が顧問に退部届けを渡したことを、知っているのは村上だけだった。あの日、環に退部届けを押し付けられた顧問は、放課後、部活がはじまる前に偶々鉢合わせた村上にそのことを告げたのだ。急なことだったので、なにか特別な理由があるかもしれない、なにか知らないか、と。それを聞いた村上は、自分が辞めないように説得するので、このことはまだ誰にも言わないでほしいと顧問に頼んだらしい。そしてその日は部活を休み、環のもとへ現れたのだ。
マネージャーをつづけるにあたり、環は条件を出した。
不用意に近づかないこと。
触らないこと。
必要最小限の会話しかしないこと。
できるだけ環を見ないこと。
部活中だけでなく、たとえ二人きりでも校内にいる間は上記の項目を遵守すること。
環も同じように、村上には近づかない。触らない。不必要な会話はしない。村上を見ない。
そうしなければ、人前でも部活中でもところ構わず発情してしまう恐れがあるのだ。あの日はその場の流れで学校で性交渉に及んでしまったが、それがどれだけ危険な行為だったか、時間を置いて冷静になった環は深く反省した。もう二度と同じ過ちを犯してはならない。
恋人に対して、あまりにも酷い対応だとは思う。
環がこんな体質でなければ、昼休みに一緒にお弁当を食べたり、校内でも仲睦まじく残りの高校生活を送ることができたのだ。環のせいで、まともに外でデートすることもできない。手を繋いで歩くことすら難しい。とにかく普通の恋人らしいことがほとんどできない。
マネージャーをつづける条件をつらつらと並べながら、これは嫌気が差しても仕方がないレベルだな、と環は思った。
環は村上が自分の体質を受け入れてくれたように感じていたが、やっぱり無理です、と言われても彼を責めることなどできない。正直、恋人になって一日ももたずに振られることを覚悟した。
しかし、村上は文句も言わず頷いてくれた。そしてきちんと、環が出した条件を全て守ってくれた。
ごめんと謝る環に、気にしないでくださいと笑ってくれた。外でデートできなくても、家の中ではできるでしょう、と言ってくれた。恋人らしい時間を過ごせるのは、互いの家の部屋の中だけだ。村上は、それだけで満足だと落ち込む環を慰めてくれた。
村上の優しさに触れ、改めて彼が好きだと実感した。
村上と恋人になり、約三ヶ月が過ぎた。
部活が終わり、部員達がゾロゾロと帰っていく。それを見送り、環は部室に入った。最後に部室内を軽く清掃するのがマネージャーの仕事だ。当番制で、今日は環の担当だった。
清掃と言っても本当に簡単なものだ。手慣れている環は十分もかからず終わらせることができる。
早速取りかかろうとして、イスの上に置きっぱなしのTシャツがあることに気づいた。
前にもこんなことがあったのを、環はもちろん覚えている。というか忘れたくても忘れられない。
いやいやそんなまさかと思いつつ、手に取ってみるとやはりというか、村上のTシャツだった。また持って帰るのを忘れたようだ。
環の手は、しっかりと村上のTシャツを握っている。
少し前まで、彼はこれを着て部活に参加していた。つまり、村上の匂いがたっぷりと染み込んでいる。
いやいやいやいやいや、だからどうした。だったらなんだというのだ。村上の匂いは好きだけれど、彼と環は恋人同士だ。匂いを嗅ぎたければ、本人の匂いを嗅げばいいではないか。別に、わざわざ間接的にTシャツの匂いを嗅ぐ必要などない。
必要など、ないのだ。ないのに、環の手は頑なにTシャツを離そうとしない。
駄目だと懸命に自分に言い聞かせる。あのときだって、少しだけと思いながら結構な時間匂いを堪能しつづけ、結局発情して理性を飛ばしてしまった。過ちを繰り返してはいけない。
環が理性を総動員して震える手をどうにかTシャツから離そうとしたとき、部室のドアが開いた。
「うわあっ!!」
環は思わず悲鳴を上げて、持っていたものをイスの上に投げ捨てた。
心臓がばくばくと激しく脈打っている。
痛む胸を押さえながら振り向くと、村上がびっくりした顔で立っていた。環が大声を上げたせいで驚かせてしまったようだ。
「む、村上……」
「すみません、ノックすればよかったですね」
「ううん。こっちこそ大袈裟に驚いちゃってごめんね」
恐らくノックをしていても結果は同じだっただろう。なんたって後ろめたいことをしていたのだから。いや、していなかったけれど。するのを必死に堪えていただけだ。
「先輩、まだ帰らないんですか?」
「う、うん、掃除終わってなくて……」
「手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫!! すぐ終わるから!!」
ぶんぶんと首を横に振ると、村上はそうですか……とあっさり引いた。今は二人きりだか、ここは学校だ。だから、環の意思を尊重してくれているのだろう。
村上は自分のロッカーを開け、あれ? と首を傾げる。
「どうしたの?」
「Tシャツを取りに戻ってきたんですけど、ロッカーの中になくて……」
「あ、村上のTシャツなら、ここに……」
投げ捨ててしまったTシャツを再び手に取り、村上に差し出す。
そのTシャツを見て、村上は無言になった。
今、彼がなにを考えているのか、聞かなくともわかった。二人が付き合うきっかけとなった、環の変態行為のことを思い出しているのだ。
そのことに気づいた瞬間、なにも言われてないのに環は捲し立てるように言い訳していた。
「ち、違うからね!? なにもしてないからね!? 誰のTシャツかなって、確認の為に手に取ったけどそれだけだからね!?
村上のTシャツに顔を埋めて匂いを嗅いだり、頬擦りしたり、抱き締めたりなんて、そんなことしたくてもしないからね!?」
「…………」
「…………」
二人の間に沈黙が流れた。
しまった、と環は顔面蒼白になる。
焦るあまり、言わなくていいことまで言ってしまった。
「先輩、そんなことしたかったんですか?」
まずい、村上が引いている。
環はだらだらと冷や汗をかいた。
彼が引くのも当然だろう。自分の彼女が変態行為に強い願望を抱いているのだ。
既に前科があることはバレているが、さすがに二度目となればドン引きものだろう。
「ち、違っ、あの、いや……」
「別に、環先輩にならいいですよ。そのTシャツ、持って帰ります?」
「あ、う、や、え……」
真っ赤になって口をパクパクする環を見て、村上は悪戯っぽく笑う。
「できればそういうことは、Tシャツじゃなくて俺に直接してほしいですけどね」
「ぅえ……!?」
動揺し、変な声が出てしまう。
この空気はまずい。ここできちんと理性を働かせなくては、変な雰囲気になってしまう。
環はプイッと顔を背けた。
「が、学校で変なこと言わないで!」
「すみません」
環の意図を察し、村上は苦笑して素直に謝った。
「ほら、Tシャツ、さっさと受け取ってよ」
「はい」
村上が手を伸ばそうとしたとき、部室のドアがノックされた。
「!!」
疚しいことなどなにもないのに、環と村上は二人揃って肩を竦ませた。
なぜかわからないが、二人でいるところを見られてはいけない気がした。咄嗟に、隠れなければ、とパニックになる。
同じように焦った村上が、開け放たれたままの自分のロッカーに気づく。環を中に入るよう促した。
環は素早くその中に体を滑り込ませた。
ロッカーのドアが閉められるのと同時に、部室のドアが開けられた。
ロッカーのドアを閉じたあとで、村上はあれ? と思った。
なぜ、環の存在を隠す必要があるのだろう、と。
彼女はサッカー部のマネージャーで、部外者ではない。仕事があって部室の中に残っていたのだ。ちゃんとした理由があってここにいるのに、隠れる必要などないではないか。
そう気づいたときにはもう手遅れだった。部室のドアは開けられ、サッカー部の部員が中に入ってくる。今更、環をロッカーの中から出すわけにはいかない。ロッカーの中に環が入っていることがバレれば、それこそなにをしてたのかと怪しまれてしまう。
「あれ、村上、まだ残ってたのか?」
「先輩、お疲れ様です」
現れたのはサッカー部の先輩で、村上は内心の動揺をひた隠して笑顔を浮かべる。
「実は、Tシャツを忘れちゃって。気づいて取りに戻ってきたんです」
「はは、俺も。使ったタオル忘れたんだよ」
「そうだったんですか!」
ロッカーの中をごそごそと漁っている様子を横目で見ながら、早く帰ってくれ、と村上は祈った。
ロッカーを開けるわけにはいかず、かといってただ突っ立っていることもできず、村上は鞄の中を整理する振りをして時間を潰す。
「電気ついてたから、てっきりマネージャーがいるのかと思った。もう帰ったのか?」
「そうですかね?」
環の話題に内心ひやひやしながら、なんと答えればいいのかわからず曖昧な言葉を返す。
そのとき、村上のロッカーの中からくぐもった声が聞こえてきた。
「んん……ぁ、はぁ……」
小さいが、それは確かな喘ぎ声だった。
村上の心臓がばくばくと早鐘を打つ。
先輩は離れた場所にいるので彼に声が届くことはないだろうが、万が一ということもある。もし聞かれれば間違いなく大問題に発展してしまう。それに、単純に環のこんな可愛い声を誰にも聞かせたくないという思いもある。
わざとらしいが、他に誤魔化しかたが思いつかず、村上は咳き込む振りをした。
「どうした、村上。もしかして風邪か?」
「い、いえ……ちょっと喉が乾燥してて……げほっ、ごほっ」
いいから早く帰ってくれ、と思いながら村上は咳を繰り返す。
「風邪かもしれないし、今日は早目に寝ろよ。少しでも体調が悪くなったら、無理しないでちゃんと言うんだぞ」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、俺は先に帰るな。お前もさっさと帰れよ」
「はい、お疲れ様です!!」
部室を出ていく先輩を、頭を下げて見送った。
本気で心配してくれていたようで申し訳ない気持ちになるが、今はそれどころではない。
すぐにでも環をロッカーから出したかったが、先輩が戻ってこないとも限らない。念のため充分に時間を置いてから、ロッカーを開けた。
その中の光景を見て、村上は息を呑んだ。
「むらかみぃ……」
環は村上のTシャツの匂いを嗅ぎながら、もう片方の手で自分の陰部をくちゅくちゅと弄っていた。強烈な色気を放ちながら、
陶然とした表情で村上を見つめている。
自分の匂いを嗅ぎながら自慰に耽っている恋人の姿に、村上はごくりと喉を鳴らした。
頬を火照らせ、潤んだ瞳でねだるような視線を向けられれば、どうしようもなく煽られる。下半身はすぐに熱を持ち、痛いほどに張り詰めた。
荒い息を吐きながら、村上は環に声をかける。
「先輩、とりあえず、そこから出て……」
「ん……」
環は素直に従う。
その間も、じっと村上を見つめたまま陰部を弄る手を止めない。
いやらしくて可愛くて、今すぐめちゃくちゃに犯したくなる。
その欲求を、村上は懸命に堪えた。
「先輩……環先輩……」
「はっ……ん……村上……」
「先輩、俺、先輩との約束、破りたくないんです……ここ、学校だから……環先輩、家に帰るまで我慢できますか……?」
「っふ……」
環は蕩けた表情を浮かべながら、それでもなけなしの理性で考えている。
泣きそうに顔を歪め、ふるふると首を横に振った。
「我慢、できない……ごめんなさい……」
「謝らないで。大丈夫ですから」
村上はその場を離れ、部室のドアの鍵を閉めた。鍵を使えば外から開けられるが、中から閉めておけばいきなり入ってくることはないだろう。
環のもとへ戻ると、彼女はもう少しも我慢できないようだった。
こちらに背を向け、ロッカーに身を預ける体勢になる。その状態で腰を突き出し、スカートを捲った。自らの手でショーツをずらし、自慰で濡れそぼった蜜壺を露にする。
「お願い、村上、もう我慢できないの……入れて……中、擦ってほしいの……」
「環先輩っ……」
発情した環は、素直に村上を求める。酷く淫らで、けれど純粋に村上だけを欲するその姿が愛しくて堪らない。
勃起した陰茎を取り出し、蜜が滴る秘所に宛がった。そのまま入り口に擦り付けると、環が切なげに腰をくねらせた。
「あんっ……焦らしちゃ、やぁ……なか、中に、ほしいの……」
肉棒を待ちわびて、花弁が蠢く。亀頭に吸い付くようなその動きに、村上も我慢できなくなった。
「先輩、入れますよ……っ」
「うん、うん、入れて、奥まで、いっぱい、ひッ、あ、んんぅ……!!」
手に持ったままのTシャツを口に咥えることで、環は悲鳴を飲み込んだ。
突き入れた肉杭に、柔らかな襞がきゅうっと絡みつく。眩暈を感じるほどの快楽に、村上は下腹に力を込めて射精感を堪えた。
「先輩、もういっちゃったんですか? まだ、奥まで入ってないのに……はぁっ、そんなに締め付けられたら、動けないですよ……」
「やぁんっ、おく、奥にほしいのっ」
「……っだから、締め付けちゃダメですって。このままじゃ、先輩の大好きな奥をグリグリしてあげられませんよ……」
「やだぁ……っ」
子供のように、環はイヤイヤとかぶりを振る。
立ったままの交接に、うまく体の力が抜けないようだ。
村上は彼女の体に腕を回し、陰茎を飲み込んでいる花弁の上にある粒を指で擦った。
「ひぃんッ」
一撫でしただけで、環はまた絶頂を迎える。
痙攣する体を抱え、村上は貫くように己の欲望を最奥まで打ち込んだ。
「んんーっ!!」
ごちゅっと子宮口を突き上げた瞬間、彼女は再び体を震わせながら達した。
肉棒を包み込む襞が蠕動する。強烈な快感に、気を抜けばすぐにでも射精してしまいそうだ。
村上は動きを止め、環の体を抱き締める。
「先輩……環、環……大丈夫ですか? 辛くない?」
「ん、……ぃ、じょうぶ……動いて、村上……」
「環……「村上」じゃなくて、名前で呼んで」
「っ……」
火照った環の顔が、羞恥で更に赤く染まる。
もっと恥ずかしい言葉を口にしているのに、名前を呼ぶだけで恥じらう姿がなんとも可愛い。
「名前、呼んでくれないと、このままですよ」
「や、やぁ……っ」
「俺の名前呼んで、どうしてほしいのか言って」
「ふぁ……んぅ……」
環は悩ましげに眉を寄せ、Tシャツを噛み締めた。
彼女の反応が可愛くて、つい意地悪をしてしまう。焦らしながらも、村上もそれほど余裕はない。
けれども発情した環が、村上の要求を断らないことはわかっていた。恥ずかしい要求にも、彼女は従順に応えてくれる。
村上の期待通り、環はおずおずと口を開いた。
「直也……」
村上のことが好きだからこそ、こうして受け入れてくれるのだと思うと、堪らなく彼女が愛しく思えた。
「直也……直也の、おちんちんで、中、いっぱい擦ってっ……」
「うん、いっぱい、擦ってあげる……っ、気持ちいい、環?」
「んあぁっ、いい、きもちいいっ、おく、奥もぐりぐりしてっ、ひぅっ……あぁっ」
「環、環、すごい、俺も気持ちいい……っ」
「なおや、なおやぁ……!」
後ろから回した手で、制服の中をまさぐる。ブラジャーをずらし、律動に合わせて揺れる乳房を揉んだ。指で乳首を摘みながら、もう片方の手はクリトリスを刺激する。
腰の動きは止めず、環の感じる箇所を可愛がれば、強すぎる快楽に彼女は身悶えた。
「なおや、好き、好き、ああっ、好きぃ……っ」
「俺も、好きです、環、可愛い……はぁっ、環……」
「だめ、そんなにいっぱいされたら、またいっちゃう、あんっ、だめ、我慢できないの、いく、あぁっ」
「いいですよ、いって……俺も、もう……っ」
「出して、直也の精液、奥にほしいのっ、いっぱいちょうだい……あっ」
「環、環っ」
「あっ、いく、いく、んんーっ!!」
「はっ……くうぅ……っ」
環は何度目かの絶頂を迎える。
精を搾り取るような膣襞の動きに促され、村上も欲を吐き出した。最後の一滴まで飲み込もうと蠢動する膣穴の奥に、全ての精を流し込む。
「ふあぁ……直也の、いっぱい……気持ちいい……っ」
腹の奥で精液を受け止め、環はうっとりと顔を綻ばせる。
結婚するまで妊娠はしない。そういう体質なのだと彼女は言った。でも、絶対とは言い切れない。
村上はもちろん責任を取るつもりでいるが、お互いにまだ学生なのだ。村上は結婚できる年齢でもない。責任を取ると言っても、未成年の村上には難しいのが現実だ。
だから環にも自分の気持ちをきちんと伝え、二度目の性交の際には避妊具を装着した。
しかし、精液を注がれないと子宮が疼いたまま、発情した状態がずっとつづいてしまうらしい。辛いのだと泣いて縋る環を拒むことはできない。
避妊具をつけたのはその一度きりで、以降は必ず中で射精している。
全てを出しきり、村上はゆっくりとぺニスを引き抜いた。同時に、中で吐き出したものが零れてしまう。白濁とした粘液が太股を伝う様は、ひどく淫靡だった。
「あっ、なおやぁ……」
蕩けきった顔をこちらに向け、環は媚びるように甘い声を上げる。
彼女の表情が、声が、物足りないと訴えていた。
求められる喜びに、村上は唇に笑みを乗せる。
「直也、お願い……」
「うん?」
「足りないの……お願い、もっとして……」
「はあっ……可愛い、環」
「んんっ、ん……んぁ……」
環の体をこちらに向け、深く唇を重ねた。
彼女はうっとりと目を閉じて、すぐにキスに応えてくれる。薄く唇を開き、舌を差し出してくる。村上はその舌にちゅうちゅうと吸い付き、柔らかく歯を立てた。環の口から、くぐもった声が漏れる。
「ふぅっ……んん……っ」
唾液が溢れるほどに舌を絡め合う。味わうように、角度を変えて何度も唇を合わせた。
伸ばした舌で彼女の口内を舐め回す。上顎を擦り、舌を撫で、ビクビクと震える環の体を抱き締めながら、口の中を蹂躙し尽くした。
唇を離す頃には、互いに息が上がっていた。荒い呼吸を繰り返しながら、欲情した瞳で見つめ合う。
「直也……」
「おいで」
村上は床に座り、その上に彼女を導いた。
環はショーツを脱ぎ、村上の体を跨ぐように床に膝をつく。
そうすると、自然と彼女の性器が村上のそれの真上にくる。環の蜜口から、混じり合った愛液と精液が漏れた。二人の体液が、既に勃起している陰茎に滴り落ちる。
その淫猥な光景に、村上は興奮した。それは環も同じようで、恐らく無意識に、村上の肉棒に手を伸ばす。互いの体液にまみれたそれを、にちゅにちゅと片手で扱く。
「はっ、ん……環……っ」
環の手で欲望を擦られる快感に、村上の口から感じ入った声が上がる。
それが更に彼女の性感を煽ったようで、環は自分の性器を村上の肉棒に押し付けた。腰を振り、ひくつく花弁に夢中になって陰茎を擦り付ける様子は、とても淫らだ。
性器への刺激と環の媚態は、これ以上ないほどに村上を欲情させた。散々煽られた陰茎は、限界まで張り詰めている。
環もまた、同じように限界を迎えていた。
「直也、入れていい……? 欲しくて、もう、我慢できないの……」
「いいですよ、俺も早く、環の中に入りたい……っ」
「あっ、んく……は、はいって……っ」
環が腰を落とし、とろとろに蕩けた膣内へ陰茎を迎え入れる。
体液でぬるぬるだった互いの性器が擦り合う感覚は強烈で、村上は乱暴に貫いてしまいたい衝動を堪えた。環の腰を支え、陰茎が肉襞に飲み込まれていくのをじっと待った。
「んはっ……あっ、ぜんぶ、はいった……?」
確認するように、環は結合部分に触れる。全てを受け入れられていることを触って確かめ、陶然と微笑んだ。
「直也の、ぜんぶ、入ってる……」
「はい、全部、環の中に入ってます」
「動いていい……? 直也のおちんちんで、奥、ぐりぐりしてもいい……?」
「いいですよ、好きなだけ、ぐりぐりしてください……っ」
「うんっ……んあっ、あっ、あぁっ」
環は腰を動かし、亀頭で子宮口を刺激する。
蠢く膣壁が、陰茎に纏わりつく。村上は息を詰め、蕩けた顔で快感を貪る彼女の姿を見つめた。
「ひぁっ、あぁっ、気持ちいい……っ」
「くっ……可愛い、環……もっといっぱい、気持ちよくなってください」
「直也、直也は? 気持ちいい? あんっ、あたしの中、気持ちいい……?」
「もちろん……。ほら、きゅうきゅう俺のちんぽに吸い付いて、はあっ……すっごく気持ちいいですよ……っ」
息を荒げながら答えると、喜ぶように膣内が締まる。
もっと気持ちよくなってほしいと言わんばかりに、環は腰の動きを激しくした。
制服は捲り上げられていて、晒された乳房が眼前で揺れている。その誘惑に抗うことはできず、村上はぷっくりと尖った乳首に唇を寄せた。
「ひんっ」
強く突起を吸い上げれば、肉棒を飲み込む膣穴がぎゅっと締まった。乳首への刺激は、そのまま膣穴の動きに直結する。
きついくらいの締め付けを堪能しながら、乳首を吸い、歯に挟んでコリコリと甘噛みする。
「きゃうっ……はんっ、ん、んんーっ」
環はずっと手にしたままのTシャツを、再び口に含んで嬌声を抑えた。
胸を突き出すように背を反らせ、環は涙を流しながら快楽に溺れている。
「環っ……俺も動いていい? 環の中、いっぱい擦りたい……っ」
「んんっ……ふ……うぅ……っ」
環は期待に潤んだ瞳で村上を見つめ、こくこくと頷いた。
「激しくしても、いい? 加減できないかも……」
環は片手を村上の首に回し、しがみついてきた。
それを了承と受け取り、村上は彼女の体を支え、思い切り腰を突き上げた。
「ンンンーっ……!!」
環は目を見開き、口を塞いだまま悲鳴を上げた。
膣襞がうねり、更に激しく陰茎に絡み付いてくる。
それをもっと味わいたくて、村上は何度も肉襞を擦り上げる。
「ふぅっ、んん……んんぁっ」
縋りつく彼女の体を抱き締めながら、律動を繰り返す。
容赦のない突き上げにも環はきちんと快楽を得ているようで、滴る愛液がぐちゅぐちゅと卑猥な音を響かせていた。
村上の腰を挟み込む環の太股が痙攣している。
「んーっ、んんっ、ふうぅっ」
「くっ、あ……もう、いきそうですか?」
「んんっ」
「いいですよ、いって……っ。はっ、俺も、もう……っ」
「んふっ……ふ……んんぁ……!!」
「うぁっ、出る、環の中に……っ」
体を震わせ、二人は同時に果てた。
叩きつけるように吐き出される精液を、収縮する膣穴が搾り取る。促されるまま、村上は精を出し切った。
「んはっ……はあ……なおや、好き……」
抱き締めた村上の頭に頬擦りしながら、環は言った。
舌足らずな彼女の告白に頬が緩む。
「俺も好きです」と応え、愛しくて堪らない彼女の体をぎゅっと抱き締めた。
「ごめんなさい……」
それから暫く経って、正気に戻った環は顔を真っ赤にして謝罪を繰り返す。部室の隅で膝を抱え、ぶるぶると体を震わせながら。
村上のロッカーの中に使っていない予備のタオルがあったので、それで体の汚れは拭き取っている。彼女が余韻でぼんやりしている間に、部室の掃除も終わらせた。
「あれも駄目これも駄目って、あたしが村上にいっぱい我慢させてるのに……結局、あたしが全然我慢できないなんて……」
環は酷く落ち込んでいる。
彼女は自分の体質のことで、村上にとても申し訳いと感じているようだ。
確かに、手を繋いでデートだとか、そういう行為ができないのは残念ではある。けれど、互いの家に行き、部屋の中で二人きりになればいくらでもイチャイチャできるのだ。村上はそれで充分だった。
彼女の体質に、村上は不満を抱いたことなどない。それをきちんと本人には伝えているが、それでも環は心苦しく思っているのだろう。
少しでも彼女の不安を取り除きたくて、村上は優しく声をかける。
「そんなに謝らないでください」
「だって……」
「そもそも、俺が先輩をロッカーの中に入れたのが悪かったんです。別に隠れる必要なんてなかったのに」
「あたしも焦ってたし、思わず隠れちゃったんだよね……」
「じゃあ今回のことは、お互い様です」
そこで村上はやや強引に話題を変える。
「そろそろ、帰りましょう。もう遅いですし、家まで送らせてください」
「え、でも……」
「ちゃんと距離を置いて歩きます。暗いから心配なんです。お願いですから、送らせてください」
「あたしのせいで遅くなったのに……」
環は渋るが、外は真っ暗だ。これだけは譲れない。
「駄目って言われても、先輩の家までついていきますからね」
「……わかった。ありがとう」
「ところで先輩、そのTシャツ、本当に持って帰りますか?」
「え……」
「欲しいなら、もちろんあげますけど」
環の手には、未だにTシャツが握られている。行為の最中も終わってからも、決して手を離そうとしなかった。
環は真っ赤になって否定する。
「ちちち違うし! これは持って帰って洗濯して返すから!」
「いいですよ。もともと洗濯するつもりでしたし、わざわざ先輩にしてもらわなくても」
「ででででも、あたしのヨダレでべとべとだし……ずっと握ってたせいでぐしゃぐしゃだし。ちゃんと洗濯して、アイロンかけて返すから」
「返さなくてもいいですよ。そのまま、先輩のものにしちゃっても」
「いいよ、ちゃんと返す。いらないし」
「え、いらないんですか」
きっぱりと拒否され、少なからずショックを受ける。
あんなに夢中になって匂いを嗅いでいたから、あげたら喜ばれると思っていたのだ。
「だって、ずっとあたしが持ってたから、もうあんまり村上の匂いしないし……」
環は顔を赤くしながら、ボソボソと可愛いことを言う。
抱き締めてキスしたくなるが、グッと我慢した。
「と、とにかく、このTシャツはあたしが持って帰って洗濯するから!」
「わかりました。お願いします」
そうしないと気が済まない様子の環に、村上は頷いた。
次に環の家でデートするときは、今我慢した分も、たくさん抱き締めてキスをしよう。
そう心に決めて、村上は環と共に部室を出た。
その日が今から楽しみで仕方がなかった。
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読んでくださってありがとうございます。
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