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嘘をついて離れようとしたら逆に離れられなくなった話
しおりを挟む沙登は悩んでいた。
幼馴染みの亮介の事で。
彼とは家が近所で歳も同じだ。幼稚園の頃から高校生になった今でも一緒の学校に通い続けている。
そんな彼から、沙登は離れたいのだ。
亮介の事が嫌いなわけではない。寧ろ友達として彼の事はとても好きだ。
でも、だからこそ亮介には沙登から離れてほしい。
その方が彼の為だから。
亮介は何かと沙登の世話を焼きたがる。すぐに沙登の荷物を持とうとするし、外を歩く時は亮介は必ず車道側を歩く。朝は沙登の家まで起こしにくるし、着替えまで手伝おうとしてくる。沙登の寝癖も直すし、沙登が頼めばご飯も食べさせてくれるだろう。学校の登下校も毎日一緒。誕生日やクリスマス等のイベントも一緒に過ごす。
とにかく沙登のする事に何でも手を出してくるのだ。面倒見がよすぎるというか、過保護というか。
こうなったのには沙登に原因があるのだろう。
亮介は幼い頃からしっかり者の頼れる存在だった。同い年だけれど、沙登は彼を兄のように見ていた。頼りになるお兄ちゃん的存在で、困った事があれば真っ先に亮介を頼った。自分にできない事があれば彼に代わってもらい、何かあればすぐに亮介に助けを求めた。
それこそ、幼稚園の頃は着替えも何もかも彼に任せてしまっていたのだ。
そんな事を繰り返す内に、沙登の面倒を見るのが亮介にとって当たり前の事となっていた。
幼稚園の頃は別によかった。だが成長するにつれ、周りの視線が変わっていったのだ。
亮介はイケメンだった。小学校高学年へと上がる頃には、「学校で一番カッコいい男子」や「付き合いたい男子ナンバーワン」に選ばれ、女子からモテモテになっていた。
そんな女子達からすると、沙登は完全にお邪魔虫だったのだ。沙登も亮介のようにイケメンで綺麗な顔をしていれば周りの反応も違ったかもしれないが、残念ながら沙登は平凡の中の平凡だった。
何でもかんでも亮介にやらせて、自分では何もしない、何様のつもりだ、亮介の優しさにつけ込む最低なヤツ、亮介は優しいから沙登から離れられないのだ、消えろ、どっか行け、亮介から離れろ、等々。女子達の陰口はどんどん増え、過激になっていった。
幼稚園の頃は亮介に頼りきりでも許された。けれど成長していく内に、亮介に甘えてばかりなのはよくないのだと気づいた。
だが、気づいた時には手遅れだった。
沙登の面倒を見なくてはならないという事が亮介に刷り込まれてしまっていたのだ。
自分でできるから大丈夫だと伝えても、沙登が心配なのだと言ってくる。
亮介の重荷になりたくないのだと訴えてみたが、沙登を重荷だなんて思ったことはない。自分が好きでやっているのだと言ってくる。
どうにか亮介と距離を置こうとすれば、「もしかして俺、迷惑なのか……? 沙登は俺と一緒にいるの、嫌なのか……?」と酷く傷ついた表情を見せてくる。そんな風に思った事はないので、沙登は必死に否定した。
亮介を悲しませたくはない。
でも、やはり今の関係を続けるわけにはいかない。
亮介は運動神経もよく、色んな部活から勧誘を受けているのに、沙登と一緒に帰れなくなるからという理由で帰宅部なのだ。女子にモテモテなのに、告白されても沙登と一緒にいる方が楽しいから、と全て断っている。
これは絶対によくない。亮介はもっと周りに目を向けるべきだ。沙登にばかり構っていてはもったいない。彼は青春を謳歌すべきだ。部活で仲間達と絆を深め、素敵な彼女を作ってデートをし、キラキラした思い出を沢山作るべきだ。
陰キャの沙登には無理だが、亮介にはそれができる。沙登のせいで、一度しかない彼の青春時代を寂しいものにさせたくない。
だから、沙登はどうにか亮介離れしたいのだ。彼の為にも。
しかし上手くいかず、沙登はほとほと困り果てていた。
いっそ「亮介の事が嫌いだから離れたい」と言えばそれで二人の関係は変わるのだろう。だが沙登は亮介と友達のままでいたい。べったりな今の状況から、友達として適切な距離感へと変化させたいのだ。無闇に亮介を傷つけるような事は言いたくないし、言えない。
何かいい方法がないかと、沙登はずっと頭を悩ませていた。
そんなある日の放課後。
沙登は用事があるという亮介を校内で待っていた。彼は必ず沙登と一緒に帰ろうとする。沙登に用事がある時も、先に帰らず何時間でも待っている。
無理に一緒に帰らなくても……と控え目に訴えてみても、「無理なんかしてない」と一蹴されてしまう。「沙登は俺と帰るの嫌だったりするのか……?」と悲しい目で見つめられると沙登も強く拒否できなくなる。決して彼と一緒に帰りたくないわけではないのだ。
そんなわけで、沙登は亮介の用事が終わるのをおとなしく待っていた。
沙登が立っている廊下に一人の男子生徒が歩いてきた。その後ろから、追いかけるようにもう一人男子がやってくる。
「松本~!」
「うわっ!? 抱きついてくんな……!」
「え~、いーじゃん」
「暑苦しいんだよ、離れろって」
「やだー! 松本のこと好きだから離れたくなーい」
「キモいんだよ! いいから離れろっ」
「酷いなー。俺はこんなに好きなのに」
「キモいっつの! 誤解されるからマジやめろ」
そんな風にじゃれ合う二人を見るともなしに見ていた沙登は、はっとひらめいた。
亮介に気持ち悪いと思われればいいのではないか、と。そうすれば、亮介は沙登に構わなくなるのではないか。
できれば友達のままでいたい。亮介に嫌われるのは辛い。けれど、そんな事を言っていたらいつまで経っても状況は変わらない。
だったらいっそ、彼に嫌われてしまった方がいいのかもしれない。
亮介に、自分は男が好きだと告げるのだ。亮介が同性愛に偏見を持っているのかどうかはわからないが、それくらいで沙登を嫌いになる可能性は低い。
だから、亮介を好きだと嘘をつくのだ。実はずっと亮介の事が好きで、友達ではなく恋愛対象として見ていたのだと。友達として傍にいるのが辛い、もう友達として亮介の傍にいられない、的な事を言えば、さすがに亮介も沙登から距離を置くはずだ。
嘘をつくのは気が引けるけれど、もう他に方法が思い付かない。
沙登は覚悟を決めた。
「沙登、悪い、お待たせっ」
その時、ちょうど亮介が戻ってきた。走って沙登の所へやってくる。
「一人で大丈夫だったか? 何もなかったか?」
ほんの少しの時間離れていただけで、彼はこうして沙登を心配してくる。
多分、彼の中で沙登は幼い頃のままなのだろう。「ボタンしてー」「クツのヒモしばってー」「ピーマン食べてー」と散々亮介に甘えていた沙登。亮介がいなければ何もできないような子供だった。何をするにも亮介と一緒だった。亮介にとって沙登はあの頃のまま、自分が面倒を見なければならない存在として認識されているのだろう。
「大丈夫、何もなかったよ」
「そっか、良かった」
ニコッと屈託のない笑顔を浮かべる亮介。もう彼とは友達ではいられなくなるのだろうと思うと胸が痛んだ。
「じゃあ帰るか」
「あっ、亮介……」
「ん? どうした?」
「僕、亮介に話があるんだ……。大事な、話……」
こちらの真剣な空気を察し、亮介はすぐに頷いてくれた。
「わかった。じゃあ、うちに来いよ。今日は親もいないから」
「うん、ありがとう」
沙登はバクバクする心臓を宥めながら亮介と帰路に就く。
嘘をつくのは得意ではない。きちんと目的を果たせるかどうか、不安を抱えながら彼の部屋に入った。
「で、話ってなんだ?」
ベッドを背凭れにして、亮介と並んで座る。彼に促され、沙登は緊張しながらも口を開いた。
緊張しているのはバレているだろうが、内容が内容なのだから、緊張しているのはおかしくはないだろう。嘘をついているから緊張しているとは思われないはずだ。
「実は、僕……亮介に隠してた事があって……」
「沙登が俺に? んー、まあ、隠し事の一つや二つ、誰にでもあるだろ」
亮介はこちらの緊張を解すように軽い口調で言ってくる。この優しい笑顔が自分の発言でどうなってしまうのか、沙登にはわからない。
「そう、かもしれないけど……。でも、亮介にこのまま隠し続けるのが、辛くて……」
「なんだ、どうしたんだよ。何でも言ってみろよ。俺はお前の味方だから、そんな不安そうな顔すんなって」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。こうして気軽に触れてくれるのも、これが最後かもしれない。
「ぼ、僕、僕ね……女の子じゃなくて、男が、好きなんだ……っ」
上擦る声で告白した。
亮介は僅かに目を見開いている。驚きはしているが、嫌悪感は感じられない。
「そうなのか……?」
「う、うん……。その、あのね……僕、ずっと……亮介のことが、好きだったの……」
「え……?」
「だ、だ、だからね、亮介と、友達のままでいるのが辛くて……。これ以上、亮介と、と、友達では、いられなくて……」
「沙登っ」
「ひゃっ……!?」
いきなりガバリと抱き締められ、沙登は小さな悲鳴を上げる。
何故抱き締められているのかわからず困惑した。
「えっと、亮介……?」
「嬉しいよ、沙登」
「へ……?」
「お前も、俺と同じ気持ちだったんだな」
「………………は?」
何を言われたのか理解できず、頭が真っ白になる。
ポカンとする沙登の耳元で、亮介の熱のこもった声が響く。
「俺も、ずっとお前が好きだったんだ、沙登」
「は……え……?」
「嬉しいよ……。俺達、両思いだったなんて……」
感嘆の吐息を漏らす亮介に、沙登は理解が追い付かずただ呆然としていた。
「沙登? どうした?」
言葉をなくしてしまった沙登の顔を、亮介が覗き込んでくる。
「あ……えっと……?」
「ん? どうしたんだよ」
こちらを見つめる亮介の視線が、甘く蕩けているように感じるのは気のせいだろうか。
亮介に見つめられながら、必死に彼に言われた事を頭の中で整理する。
「亮介が……僕のこと、好き……?」
「ああ、そうだ」
「その……う、ウソじゃなくて……?」
「当たり前だろ。こんなウソつかない」
「そ、そうだよね、ごめん……」
好きだと、言われたのだ。沙登がついた嘘と同じ意味で、好きだと。
亮介は沙登の嘘に気づいていない。沙登が好きだから、沙登の嘘の告白に、両思いだったのだと喜んでいる。
ここにきて、自分はついてはいけない嘘をついてしまったのだと自覚する。
だって、知らなかったのだ。亮介が、自分の事を好きだなんて。恋愛対象として見られていたなんて、全く気づいていなかった。
だが、知らなかったでは済まされない。
今更、嘘だったなんて言えない。
「沙登?」
「えっ……?」
「なんだよ、ぼーっとして」
「あ、う……な、なんか、信じられなくて……。夢、見てるみたいな……」
「ははっ、確かに。俺も、夢みたいだ」
とろりと瞳を細めて、亮介は沙登の頬を撫でた。
心底嬉しそうな彼の顔を見れば、本当の事など口が裂けても言えなかった。罪悪感に胸がジクジクと痛む。
「嬉しいよ……。これからは、恋人として沙登の傍にいられるんだな」
「こ、恋人……!?」
「そうだろ?」
当たり前の事のように言われて沙登は動揺するけれど、両思いの二人が恋人になるのは自然な流れだ。
本当の事は言えないけれど、嘘をついて恋人になるなんて──。
絶対に駄目だとわかっているけれど、沙登はどうしても嘘だったと言えない。
亮介がこんなにも喜んでいるのだ。嘘だと知れば、彼がどれだけ傷つく事になるか。自分の愚かな言動で、亮介を悲しませるなんて嫌だ。悪いのは沙登なのに、どうして亮介に辛い思いをさせなくてはならないのだ。
沙登は嘘をつき通すしかなかった。それが、嘘をついてしまった沙登の責任だ。
「そ、そうだね……。僕達、恋人になるんだね」
「ははっ。なんか照れ臭いな」
はにかむ亮介。彼の表情にも声にも喜色が浮かんでいる。
彼は本当に沙登と恋人になれた事を喜んでいるのだ。それだけ好意を持たれていたというのに、沙登は言われなければ彼の気持ちに全く気づかなかった。その事にも胸が痛んだ。
ずっと一緒にいたのに、彼がどんな気持ちで自分の傍にいたのか何も知らなかった。
物思いに耽る沙登の頬を亮介の大きな掌が包んだ。顔を上向けられ、すると至近距離に亮介の顔があった。
こんな間近で見てもイケメンだ。見慣れている沙登でも感心してしまうほど顔が整っている。
ぼうっとしていると顔が近づいてきて、沙登は反射的にそれを止めた。
「わっ、ちょ、待って……!?」
止められた亮介は、傷ついたように眉を下げた。
「嫌、だったか……?」
「へ? あ、いや……」
そういえばもう彼とは恋人同士になったのだった。ビックリして止めてしまったけど、恋人になったのならキスをするのはおかしな事ではない。
けれど、沙登にとって亮介は恋人ではなく友達なわけで。
彼とのキスをすんなりと受け入れるのは難しく。
しかし、嫌だなんて言えば亮介を傷つけてしまうだろう。
おろおろと視線をさ迷わせながら言い訳をする。
「嫌、とかじゃなくて……。いきなりで、ビックリ、して……」
「じゃあ、してもいいか?」
「えっと……その……」
「俺は沙登とキスしたい」
「っ…………」
ストレートな言葉に、沙登の顔は真っ赤に染まる。
亮介は真剣な双眸でこちらを見つめていた。
沙登が告白して恋人になったのに、あんまり強く拒んだら嘘がバレてしまうかもしれない。
「ぁの……う、うん……」
「沙登?」
「し、し、しよう、か……」
迷いと恥ずかしさからか細い声しか出なかった。それでも亮介は嬉しそうに破顔した。
改めて顔を上に向けられる。
羞恥に亮介の顔を見ていられず、沙登はぎゅっと目を瞑った。
少しの間を置いて、唇に柔らかな感触が触れた。
「っ……」
亮介の唇が自分の唇に触れてるのだと思うと恥ずかしくて堪らない。嫌悪感はなかったが、とにかく恥ずかしかった。
慣れない感覚に戸惑う沙登の唇が食まれる。ビクッと肩を竦めるだけで抵抗はしなかった。これは恋人同士のキスなのだから、と自分に言い聞かせる。
角度を変えて唇が重なり、ちゅっちゅっと音を立てて唇を啄まれ、キスをしながら優しく頬を撫でられ、指先で耳を擦られ、ぞくぞくとした感覚が生まれはじめる。
「んっ……ふ……っ」
「はっ……沙登の唇、柔らかくて気持ちいいな」
「っ……ぁんんっ」
恥ずかしい事を言われて、何か言い返そうと口を開けば、声を出す前に舌を挿入された。ぬるりとした感触が口の中に入ってきて、驚きに固まる。
「んっ……!? ぁ、んっんっ……」
口腔内を亮介の舌が動き回る。沙登はどうすればいいのかわからず、されるがまま受け入れてしまう。
口の中を舐められているのだと意識すれば、どっと羞恥が押し寄せてくる。けれどやめてほしいと訴える事はできず、ただ恥ずかしさに耐えるように亮介の衣服を強く掴んだ。
舌が舌に絡み付き、舌で上顎を擦られる。くちゅくちゅと濡れた音が聞こえて、一層羞恥が増した。
ぷるぷる震える沙登の体を抱き締めながら、亮介は深く長く口内を味わい続ける。
唾液が混ざり合い、溢れたそれが口の端から流れていく。濃厚な口づけに思考は霞み、沙登は滴る唾液を気にする余裕もなくなっていた。
引き出された舌を吸い上げられれば、ぞくんっと背筋に震えが走る。
いつしか亮介のキスは沙登に蕩けるような快感をもたらしていた。下腹部がじんじんと痺れるように熱を持つ。
離れていく唇を、名残惜しいとさえ感じていた。
「はっ……はあっ……んっ……」
「大丈夫か、沙登?」
「う、ん……だいじょ……あっ!?」
シャツの裾から亮介の手が入り込み、沙登の肌を直接撫でた。
「やっ……ま、待って、亮介……っ」
キスで官能を高められ、少し触れられただけで過剰に反応してしまう。それが怖くて慌てて亮介を止めれば、彼は切なげに目を伏せた。
「嫌、か……? 俺は、もっとお前に触りたい……。ずっと沙登と恋人になれることを望んでた……その望みが叶ったんだ。もっと恋人らしいことをして、沙登と恋人になれたんだって実感させてほしい……」
「亮介……」
「頼む、沙登……」
亮介は沙登に甘いけれど、沙登も沙登で亮介にはとことん甘かった。彼からのお願いは断れない。滅多にないからこそ、余計に。彼が望むなら叶えてあげたいと思ってしまうのだ。
「も、もちろん、いいよ……。だって僕達、こ、恋人に、なったんだから……」
「ありがとな、沙登。嬉しいよ」
触れてくる手も、沙登を見つめる視線もとても優しい。
そう。亮介はいつも沙登に優しい。
だから、大丈夫だ。彼が沙登に酷い事などするわけがないのだから。
心から亮介を信頼していた沙登は、彼に身を任せるように体から力を抜いた。
「んひっ、っ、あっあっあっあ~~~~っ」
「またイッたのか、沙登。もうイきっぱなしだな」
目も眩むような快感に、沙登は亮介に何を言われたのかも理解できずただ全身を痙攣させる。
あのあとベッドに押し倒されて、キスや愛撫をされて戸惑っているうちにいつの間にか全裸にされていた。体の至るところを舐めてしゃぶられ甘噛みされ、与えられる快楽ははじめて感じるもので、止める余裕もなくただ身悶える事しかできなかった。
正直、この時点で沙登の許容範囲をとっくに越えていた。てっきりキスをしたり抱き締めたり、イチャイチャするだけだろうと沙登は思っていたのだ。
それなのに予想を遥かに上回る淫靡で過激な事をされて、精神的にも肉体的にも既にいっぱいいっぱいだった。
へろへろ状態の沙登の前で亮介はローションを取り出した。それを大量にアナルに塗りたくられても、沙登は体に力が入らず抵抗できなかった。
やがて指を差し込まれ、最初は違和感しかなかったのに時間をかけ執拗に中を指で擦られて、気づけば沙登は何度も達していた。三本の指で腸壁をぐちゅぐちゅに掻き回されると堪らなく気持ちよくて、いってもいっても終わらない。ぺニスからはもう何も出ないのに、体は絶頂を繰り返すのだ。
強すぎる快感に沙登はいつしか涙を流し、もう無理だと亮介に懇願した。
微笑む亮介は漸く後孔から指を抜いてくれた。
やっと解放された。これで終わったのだと安堵していると、己の陰茎を取り出す亮介の姿が目に入った。彼の大きなそれは固く反り返りビクビクと脈打っていた。
呆然とする沙登に見せつけるように、亮介は自身の性器にコンドームを装着した。
待って、と沙登が制止の言葉を発する前に、準備万端のそれがすっかり柔らかく綻んだアナルにめり込んだ。
止める間もなく太く硬い肉棒が挿入され、直腸を擦り上げられれば沙登は再び強烈な快楽に襲われる事となった。
それからどれだけ時間が過ぎたのか、沙登にはもうわからない。亮介が何度コンドームを付け替えたのかも。
体を折り曲げるように両脚を持ち上げられ、真上からごちゅごちゅと最奥を穿たれ、沙登は掠れた悲鳴を上げながらまた達した。
「っは……イくの何回目だろうな、沙登。そんなに感じてくれて嬉しいよ……」
「んっ……はっ、あっ、~~~~っ、くひっ」
「気持ちいいなぁ、沙登?」
「いっ……きもち、いっ、ひっあっあぁっ」
「ははっ……可愛いなぁ、沙登。好きだよ」
「す、き……すき、りょうくん、すき……っ」
恋人同士になったのだから、「好き」だと言われたら「好き」だと返さなくてはいけないという意識から、沙登はその言葉を口にしていた。
いつの間にか幼い頃の呼び方になっていたが、そんな事には気づけないまま、与えられる快感を享受する。
「はーっ……ほんっと、可愛いよ、沙登……」
沙登を見下ろす亮介の瞳はギラギラしていて、いつもの優しい彼の視線とは違う。爽やかな屈託のない笑顔ではなく、唇の端を吊り上げ意地の悪い笑みを浮かべている。
こんな亮介をはじめて見た。亮介なのに、亮介ではないみたいだ。
いつもの亮介に戻ってほしくて、沙登は何度も「りょうくん」と呼んだ。
「ひあっあっ、りょ、くんっ、んあぁっ、あーっ、ひっ、りょぉ、くぅっ、んんっんひっ、ぁああっあっ、りょ、く、ひっ、~~っ、あっあっ」
「沙登っ、沙登……っ」
胎内の深いところを何度も何度も突き上げられ、やがて亮介が動きを止めた。ゴム越しに、中で射精されているのを感じる。ゴムに包まれているというのに、吐き出した精液を押し込めるようにぐりぐりと亀頭を動かされ、その刺激に沙登はまた達した。
ゆっくりと陰茎を引き抜かれる。ずりずりと腸壁を擦られて、敏感になった体はその感覚にも感じてしまう。
くったりとベッドに身を預け、乱れた呼吸を整える。
「沙登……」
「んっ……」
口移しで水を流し込まれ、沙登は喉を鳴らしてそれを飲む。何度か繰り返すうちに、水を飲ませる行為ではなく舌を絡め合わせるキスへと変化していった。
唇を貪りながら、亮介の手が沙登の胸に触れる。 散々弄られしゃぶられ赤く染まった乳首を指で撫でられ、ビクッと肩が跳ねた。
「んゃっ、あっ、りょ、くん……っ?」
「ここ、少し撫でるだけで感じるようになっちゃったな」
「んっあっあっ、だ、めっ、そこ、触っちゃ、あんっ」
嬉しそうに微笑んで、亮介はくりくりと乳首を指の腹で転がす。
もうくたくたなのに、体は飽きもせずに快感を拾ってしまう。びくびくと腰が浮き、もう何も入っていない後孔がきゅんきゅんと疼きだした。
沙登の反応を楽しむように、亮介は乳頭を爪の先でカリカリと優しく引っ掻く。
「んひぃっ、あっらめっ、それ、だめぇっ」
「なんで? これ、気持ちいいんだろ?」
「んくぁっんっ、きもちぃの、もぉらめっ、らめなのっ、あっあっんんぅっ、もう、きもちいの、しないでぇっ」
いやいやとかぶりを振ると、ピタリと指の動きが止まった。
視線を亮介へと向ければ、彼はしゅん……と肩を落としている。
「沙登……俺に触られるのもう嫌になっちゃったか……?」
「えっ、ち、違っ……」
「俺は沙登と恋人になれて、沙登に触れて嬉しくて……もっと沙登がほしいって思うけど……沙登は違うんだな……」
「そ、そんなこと、ないよ……っ。僕も、嬉しい、し……」
「ホントか……?」
「もちろんっ」
「じゃあ、もう一回いいよな?」
「っえ……!?」
「ダメ、か……?」
上目遣いにねだられ、沙登は反射的に承諾していた。
「ダメじゃないよ! いいよ、りょうくん!」
「…………ありがとう、沙登」
本当に嬉しそうな亮介の笑顔を見れば、体力的に限界だとしても、彼の好きなようにしてほしいと思ってしまうのだ。沙登はとにかく亮介には甘かった。
亮介が、それを知っていて発言しているのだという事に気づかずに。
「好きだよ」
「ん……ぼ、僕も……好き……」
目を閉じてキスを受け入れる。
この後「もう一回」を数度繰り返される事になるのだが、やはり沙登はそれを拒めなかった。
「っ、──~~~~っ、っん……」
もう何度目かもわからない絶頂を迎えた沙登は、そのままガクリとベッドに突っ伏した。
「ん? 沙登、気絶したのか?」
返事はない。意識を失ってしまったようだ。
無理もないだろう。何時間も、手加減なく犯し続けたのだ。
アナルから陰茎を抜き、うつ伏せの沙登をひっくり返す。
疲れ果てているだろうから、当分目は覚まさないだろう。
沙登の火照った頬を撫でながら、亮介は笑みを浮かべた。
「お前が悪いんだぞ、沙登。嘘なんかついて、俺から離れようとするから」
幼い頃から何年も一緒にいるのだ。わかりやすい沙登の考えなど亮介にはお見通しだ。彼が亮介から離れるために好きだと嘘をついたのだとわかっている。わかっていて、それを利用したのだ。
「バカだなぁ、沙登。バカで可愛いよ。俺が沙登から離れるわけないだろ。俺がお前を離すわけないんだよ」
亮介はずっと沙登の事が好きだったのだ。出会った頃はいつも亮介の後をついて回って、何をするにも常に一緒にいた。
「りょうくん、りょうくん」と困った事があればすぐに亮介を頼り、嬉しい事があればすぐに亮介に報告してくる。「りょうくんと一緒じゃなきゃやだ」と亮介の服の裾をずっと掴んでいた。
亮介にとって沙登は守ってあげたいと思う存在で、自分だけを頼りにしてくる沙登が可愛くて仕方がなかった。
昔は本当に純粋に沙登を可愛がっていたのだが、それがいつから恋心へと変化したのかは亮介にもわからない。
気づけば、沙登を思う気持ちは執着や独占欲にまみれていた。
沙登を自分だけのものにしたい。自分だけを見てほしい。沙登に汚い欲望を抱き、どうやって沙登を自分のものにしようかと、そんな事ばかり考えていた。
こちらがどんな気持ちで傍にいるのかも気づかずに、沙登はずっと幼馴染みの友達として亮介に接してきた。
それをもどかしく思いつつ、けれど何もわかっていない鈍感な沙登だからこそ今まで傍にいられた。
嘘をつかれた事は怒っていないが、亮介から離れようとするのは許せない。
「まあ、結果的にこうして沙登が手に入ったんだからいいか」
亮介はぐっすり眠る沙登を見下ろしほくそ笑む。
沙登の考えている事は手に取るようにわかる。恋人になってしまえば、こちらからフらない限り沙登は亮介から離れようとはしないだろう。
「可愛くて可哀想な沙登。お前はずーっと俺から離れられないんだよ」
何度もキスをしたせいでほんのりと赤く腫れている沙登の唇に唇を重ねる。
「愛してるよ、沙登。これからもずっとずっとずーっと、一緒にいような」
何も知らぬまま眠り続ける哀れな恋人に、亮介は密やかに愛を囁いた。
───────────────
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